『巨人の星』『ゲゲゲの鬼太郎』を生み出した伝説の編集者、内田 勝からラストメッセージ

Talked.jpby Sony Digital Entertainment

『巨人の星』『ゲゲゲの鬼太郎』を生み出した伝説の編集者、内田 勝からラストメッセージ

内田 勝

内田 勝

『巨人の星』『ゲゲゲの鬼太郎』を生み出した伝説の編集者、内田 勝からラストメッセージ

内田 勝(うちだ まさる、1935年4月22日~2008年5月30日)

1965年『週刊少年マガジン』(講談社)の第3代編集長に最年少30歳で就任。 『あしたのジョー』『天才バカボン』『タイガーマスク』など、日本を代表する漫画作品を次々と世に送り出す。

1998年 アニメ専門衛星チャンネル『アニマックス』の立ち上げに参加し、顧問を務めた。

2007年 ㈱ソニー・デジタルエンタテインメントの顧問に就任。

今日は忙しいところ集まっていただいてありがとうございます。

福田さん(ソニー・デジタルエンタテインメント代表取締役社長)が、ソニー・ピクチャーズエンタテインメントで携帯電話のビジネスの研究を始めたくらいから、いつか機会があったら、今日これから僕がする話をしたいと思っていました。ある程度、実際の体験をした上で話をした方が、より切実感があるのではないかということで、タイミングを見計らっていたんです。 ただ、これはまたタイミングを失してしまうと、「何を今さら」という感じになってしまうので、今がちょうどいいタイミングかと思った次第です。

若者はどこにいるのか

最初にお話するのは、去年、福田さんに見せてもらったのですが、『ニューメディア』という雑誌に掲載された、「若者はどこにいるのかを考える」という座談会です。

出席者は上智大学文学部教授、学習院大学非常勤講師、コラムニストの堀井憲一郎――週刊文春に連載コラムを書いていますが――、それに福田さんを含めて4人が、「若者はどこにいるのか」ということで、色々しゃべっています。 ですが、それぞれ「自分は学者である」、「自分は評論家である」という気負いから、素人がしゃべるようなことでは格好がつかないと思っているのかどうか知りませんが、訳の判らないことをみんな言うわけです。 読者として座談会を読んでみると、若者はどこにいるのか、随分遠くをぐるぐる回り道している印象です。

イライラしながら読んでいきますと、4番目に福田さんが発言して、「若者はどこにいるか、それは携帯電話の前にいます」と言うわけで、それで「やった」という感じがしました。 他の人たちはどんな反応だったのか、キョトンとしていたのか、福田さんが、別に若者の専門家ではないから、素人が判り切ったことをしゃべっているなというような感じでスバリ明快に、「今の若者は携帯電話の前にいる」と提起しました。これを受けまして、では携帯電話の前にいる若者とは一体何なのかということを、今日のテーマに話そうかと思っています。

男の子と女の子の出生比率

最初に、最も基礎的なデータですが、1947年から2002年までの新生児の統計があります。

もちろん今は少子化問題といって、新生児、生まれてくる赤ん坊の数がどんどん減ってきているというのはさんざんマスコミでも紹介されていることなのですが、これを見て、「おやっ」と思うのは、つまり1940年代、50年代といった子供の数が多かった時代も、1990年代以降の子供の数がどんどん少なくなってきている現在でも、男の子と女の子の生まれる割合、出生比率というのは、男の子が大体51・4~51.5%、女の子が48.6~48.7%で、これは全く変わらないわけです。
これに僕が気付いたのは『週刊少年マガジン』の編集長の頃ですので、もう今から40年くらい前です。

成人の日に新聞を見ていたましたら、その年に成人になった人たちの人口と内訳が出ていたんですが、男性何人、女性何人となっていました。 男の子の方が3万人くらい多いわけです。 そして、翌年の成人の日に思い出して、その年に成人に達した男女の人口比を意識的に見たところ、男の子がやっぱり4万人くらい多く生まれているんです。2年連続だったので、一体これは何なのだろうと思って調べてみると、要するに、出生率の多い少ないに関わらず、生まれる男女の割合は変わらないのです。

これは一体誰が決めているのか、滝山 正夫さん(アニマックスブロードキャストジャパン代表取締役社長)に、「誰が決めたんですか?」と聞いたら、「これはもう神様の意志としか思えませんね」と言われました。多分、滝山さんは無神論者じゃないかと思うんですが、無神論者の滝山さんが、神様を引っ張りださないと説明がつかないようです。

これは、僕に言わせると自然の摂理、進化論的にフィックスされた自然の摂理です。 ですからこれは日本人だけじゃなくて、外国人もそうだと思います。 アフリカの人も、ヨーロッパのフランス人とかイギリス人とかも、みんなそう。 中国のような一人っ子政策のところは論外ですが。