楳図かずおインタビュー  恐怖漫画家・楳図かずお デジタルお化け屋敷をプロデュース! | Talked.jp

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漫画家から映画監督へ。楳図かずおの半自伝的!?映画「マザー」

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福田:では、そろそろ映画『マザー』について話しましょう。僕、先生の漫画作品ではやっぱり『*14歳』が一番大好きなのですけど、あれ以来、休筆されているのですよね?
(*1990年「ビッグコミック・スピリッツ」小学館)

楳図:そうですね。

福田:よく聞かれる質問だと思うのですが、先生、なぜ次の漫画を描いてくださらないのですか? 今回は映画ですよね。何で漫画じゃないのですか?

楳図:そうですね、そこまで極端に「なぜ漫画ではないのですか」の答えがあるわけではないのですけれど……。皆さん、『マザー』は『14歳』以来のオリジナル作品、と受け取られますよね。『14歳』が終わったとき、“漫画の世界”は“漫画の世界”なりにいろいろ状況が変わってきているのを感じて、僕としては、ちょっと「一区切り」という意識はありました。そのうち映画の話がきたので、自然と流れでこういうことになりました。それだけのことなのです。

福田:今回、映画を撮られて、いろいろご苦労あったと思うのですけども、この映画を作られて、先生の中の創作態度として、変わった点というか、面白かった点というのはどういうところだったのでしょうか。

楳図:映画って、いろんな条件が絡んでくるので、それを総合的にまとめあげないとひとつの作品にならない。そこは大変でしたね。

福田:共同制作ですね、カメラマンの方とか、いろんな方との。

楳図:共同制作もそうですし、あとは費用に合わせて内容をどうするか。内容自体、周りの条件に合わせたものを作らないといけない。それは漫画と全然違うところだったのですけども、逆にそういうところが面白いな、とも思いましたね。あと、漫画では描けない表現方法ってありますよね。例えば今回だと、振動起こしたりとか、男声になったりとか。

福田:恐いですよね。

楳図:そうですね。男声などは漫画では描きようがないので。映像ならではのね。そういうところすごく面白いですよね。

福田:ストーリーも、次どうなるか全く先が読めないですよね。

楳図:そうなのです。もう先が読めなくて、最後どうなるのだろう?っていう、そういうところで引っ張っていくっていう、それはお話に入り込んでもらうためのコツみたいなものがあると思うのです。その点は漫画描いている時からずっと同じだと思うのですけども。

福田:凡庸な質問なのですが、今まで先生の漫画作品でも、カリカチュアされた楳図先生自身が出ていらっしゃいましたけども、今回はかなり角度が違いますね。

楳図:そうですね。

福田:「半自伝的な」って宣伝されてますけども、ご自身をベースにして作られたのは、何か意味があるのでしょうか。

楳図:自分自身でしかできないものは、やっぱり自分自身のことをやることに尽きると思うので。自分自身は現実なので、そこにはリアリティがきっとあると思うのですね。でも、リアリティを展開していくと、どんどん話が大袈裟になっていって。恐ろしくなっていくっていうのは非現実的なので、うまく現実と非現実を結びつけた話にできると、これって新しいスタイルになるのかなと思いました。

福田:そうですよね。それはやっぱり驚きでしたよね。半自伝的と言っておきながら、◎☆%*□!$ですもんね。
(映画の内容は見てのお楽しみです!)

楳図:なので、そういう新しい捉え方のスタイルというか、やっぱり物を作るときは、どっか「前例に沿って」というところから抜け出さないと面白くないし、観客も受け入れてくれないと思うのです。だから、今回、「これは前例がなくて新しい」と思ってもらうために、自伝的なものをどこまで嘘に仕上げていって、どこまで本当にするか、そこに力を注ぎました。

福田:もう驚きました。

楳図:ありがとうございます。

福田:先ほど、映画作る難しさは、いろんな人とかコストの問題が大きいとおっしゃっていましたが、一方で、構想は長かったのかもしれませんが、脚本を書き上げたのはものすごく短かったとお聞きしました。撮られたのも結構短い期間だったじゃないですか。そうすると漫画よりもはるかに効率的に表現としては作られたと言ってもいいのでしょうか。

楳図:だと思います。あれ、漫画で描くとやっぱり1年くらいかかると思うのですけど。映画の場合、皆さんの力をお借りして、表現力を足してもらって、それで出来上がる部分があるので、今回、僕は本筋みたいなところをしっかり作っておけば、その他の背景的な事とかはそれぞれ専門の方がやってくださったので、すごく短く仕上がったと思うのです。

福田:公開が楽しみですね!もっと上手に宣伝したいのですが、何か今回は聞いちゃいけない部分が多い映画じゃないですか。

楳図:聞いちゃいけないことだらけね。しかも説明は一切してないので……。撮影しているときも、大体、普通の物語って何か起きるときに、その前ぶれみたいのがあるでしょう。例えば自殺する人がいとしたら、この頃ちょっと沈んでいて、とか。

福田:何か起きるぞ、起きるぞみたいな。

楳図:それはやめてください、と言いました。撮っているときもチラッと聞かれたことがあるのだけども、一切、前ふれはやりません、と。

福田:「来るぞ、来るぞ」みたいな煽りがない。

楳図:それやるとホラーになりません。やっぱりホラーって、やにわに起きちゃうから恐いので。