『「アウトオブ外の世界」にアクセスする』(対談 山口 揚平 氏 × 福田 淳 氏)

山口 揚平 氏

思想家・事業家。ブルーマーリンパートナーズ代表取締役/シェアーズ創業者。
1975年生まれ、早稲田大学政治経済学部卒。東京大学大学院。金融とデザインを融合させた新しい信用創造のしくみを構築中。

福田 淳 氏

実業家。ソニー・デジタル エンタテインメント 社長。
1965年生まれ、日本大学芸術学部卒。ソニー・ピクチャーズ エンタテインメントでアニメチャンネル「アニマックス」など多数のニューメディア立ち上げに関わる。

構成:福田千津子 撮影:越間有紀子

2014年10月2日(木)

アートで稼げる仕組みを作りたい

福田:ご著書「なぜゴッホは貧乏で、ピカソは金持ちだったのか?」、面白く拝読しました。

山口:ありがとうございます。これまで約10年間、僕はM&Aや企業分析などを専門としてやってきましたが、実は芸大に行きたかったんですよね。結局、資本主義のど真ん中に行ってしまったのですが。

福田:なるほど。この夏、僕が主催した土屋秋恆の個展にお越しいただけたのも、その辺りに理由があるのかな。山口さんの履歴を見ると出席いただける感じがしなかったのに、フラっとあの銀座の世界一小さい画廊にいらしてくださって、なんで来てくれたのかなって、ずっと疑問に思っていたんです(笑)

山口:自分自身、ずっと絵を描いていたって原体験があって・・。最近少しずつ、そっちの世界に戻ってきているという実感はありますね。生活費はこれまでのような仕事で稼げますが、それはどんどん減らしていく方向にしていますね。ちょっと恥ずかしいのですが、本当はアーティストになりたかったのです。でも、プロデューサーにしかなれないじゃないですか、今からだと。

福田:いやいや、なれますよ。

山口:一番興味あるのは、アーティストのプロフィット(もうけ・利潤)モデル化です。アートってすごい主観の価値というか、要は言語化できないものだと思うんです。企業やお金は言語化できるけれど、アートは言語化できない。それこそが豊かさの本質だと思っていて、数字の世界とはすごく隔絶した感がある。もちろん、数字の世界は数字の世界で楽しいのですが、今はもうそっちではないと思っていて、アーティストの支援に力を入れています。

福田:そうなんですね。

山口:具体的には、「アート」という言語化できない価値をアーティストがどうやって言語化(数字・お金化)するのか、つまり、アートをどうやってプロダクトに変えて、アーティストが自分たちの食いぶちを稼げるようになれるのか、そういったことの支援をしています。
外堀を作るといえばいいのかな。真ん中はアートなので、手を出せないのですよ、絶対に。でも、僕はビジネスパーソンなので、周りにどんな土手を作ればマネタイズする(収益を上げる)か、という仕組みはいくらでも作れる。逆に、水と油というか、アーティストはこの分野には手を染めない方がいいと思っているんです。こういうこと日本人はもっとやった方がいいと思うんですよね。
あと、2020年に向けての日本のブランディングですね。東京はやっぱり、アジアのお墨付き市場になっていくべきだと思っています。ミシュランの星の数も世界で一番多いですし。ビジネスパーソン的にいえば、アートに注目していて、そのアーティストのプロフィットモデルを作っていくというのを2020年にかけてやってこうと思っています。

福田:単純にいいとは思うんですけど、すごい難しい話ですね。