『「アウトオブ外の世界」にアクセスする』(対談 山口 揚平 氏 × 福田 淳 氏) | Talked.jp

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対談  山口 揚平 × 福田淳

オペレーションからイノベーションへ

山口:なんかダイバーシティー(多様性)って、男女どうこうの話じゃないと思っているんです・・。というのも、今回、ヘルシンキのアールト大学っていう世界最高のデザインスクールに行ったんですよ。1カ月いたんですけども、何が違うかって、向こうの人はみんな視点とか示唆とかスペシャリティーがないんですよね。日本人の東大の男の子のほうが圧倒的に物事知っているんですよ。農学も情報理工も・・・。

福田:深掘りしている。

山口:深すぎるんですよね。結局、今重要なことってガラガラポンというか、全く違うものを有機的に結び付ける力なんです。つまり、オペレーションの時代からイノベーションの時代に変わったんですよね。そうすると、自分、食わず嫌いが一番良くないと思っていて、一番悔しいのが、アーティストがスペシャライズしていることなんです。あるいは、東大の理系の子がスペシャライズしているとか、そういうことが一番、根が深い問題だと思う。それを全く違う角度から有機化することができない、アナロジー(類比)が効かないっていうことですね。

福田:そのヘルシンキの人たちは、知見は東大生の専門の何かのことよりも深くないけど、ある程度ジェネラリストで、そしてダイバーシティーと言いますか、そういう交流も得意だったんですか?

山口:そうですね。多分、直感的には3倍から5倍ぐらい、視点が広い、日本人の。

福田:なんででしょう。

山口:大陸だっていうこともあると思いますけど、やっぱり、教育でしょうね。

福田:単純な計り方として、友達数の平均とかですかね。付き合っている幅が広いとか、どういうことなんでしょうね。

山口:そうですね。まずアウトプット主義ですから、しゃべってなんぼですよね。それをもう子どものころからやっていて、その表現力が半端ないですよね。プレゼンも、僕とかパワーポイントで作るじゃないですか。も、向こうではもう誰も全然使わないですね。

福田:言葉でね。TEDでもそうですよね、写真見せるだけとかね。

山口:いや、もう3時間のワークショップで、レゴブロックをちょこちょこ動かしながら、ムービー作ったりとか、ウェブサイトでポップアップさせたりとか、フィクションで内容をプレゼンテーションするとか、それだけですよ。8割がたは、どう表現に当てるか・・。

福田:それが、何ていうんですかね、非常に直感的に行われるっていうのはすごいですね。

山口:誰でも絵を描ける、アイコンで表現できるのです。そういう授業をやっている・・・。

福田:本来、日本人が得意だって言われている分野じゃないんですかね。

山口:必修になっているんですよ。だから、絵で表現しなきゃいけないんですね。

福田:面白いですね、その授業。

山口:実は、みんなの前提って違うじゃないですか。だから、定義とかがあいまいなまま、サスティナビリティー(持続可能性)とか言葉とかは深掘りされないんですよ。だけど、表現が絵ですから、絵って誰がどこに何描いても許されるじゃないですか。それに比べると、日本人の議論って、カクカクしている。直線じゃなくて、普通の角線になっている。

福田:そうですね。でもおっしゃるとおり、もう教育だけですね。いろんな人がいいっていう前提で先生教えないから、さっきのオペレーションかイノベーションっていうことでいったら、日本はオペレーション主義のままなんでしょうね。それが効率良くて、組織的にたまたま得意でできて、伸びる原動力が20世紀後半に発揮できちゃったせいで、今はその後遺症に苦しむ10年なのかもしれません。

山口:そうです。

福田:だから、イノベイティブな人って変わり者じゃないですか。

山口:今はそうですね。

福田:大体10人居たら、2人ぐらい変わり者がいるはずなんです。なんかネズミの実験で、台所の真ん中にチーズ置くと、ネズミの集団は壁にひげが触らないから不安で誰も取りにいけないんですよ。でも、「俺、別にひげ当たんなくても平気だから」って例外行動を取るネズミが一匹いると、真ん中まで行ってチーズ食べちゃう。それを見て、他のネズミも「あ、オッケーなんだ」とチーズに群がるんですね。
でも、例外行動を認めるような教育って、僕なんかのときは全くされてないですもんね。