この10年が面白い! Z世代が日本を変える日(前編)
編集:井尾淳子
構成:田口みきこ
撮影:越間 有紀子
日程:2021年4月19日
コミンズ・リオ (写真/左)
1988年生まれ。アート・メディア・エンタテインメントの力を使い、社会課題解決に取り組む株式会社SEAMES代表。米オレゴン州ポートランド出身。学生時代には大学生専門レコーディングスタジオ「ERL スタジオ」を立ち上げ運営。大学卒業後、民放キー局での勤務を経て、2015年には世界の12の都市に一ヶ月ずつ滞在し、日常生活を比較するプロジェクト「World in Twelve」を実行。「面白いかどうか」を人生の軸にして活動している。
https://www.seame-s.com
福田 淳(写真/右)
1965年大阪生まれ。日本大学芸術学部卒業。 ソニー・デジタルエンタテインメント創業者。横浜美術大学 客員教授、金沢工業大学 客員教授。ブランディング業務以外にも、女優”のん”などのタレントエージェント、北京を拠点としたキャスティング業務をはじめ、国際イベントの誘致、企業向け「AIサロン」を主宰、ロサンゼルスでのアートギャラリー運営、沖縄でのリゾート開発、ハイテク農業など、活動は多岐にわたっている。タレントと日本の芸能界にはなかった「米国型エージェント契約」を導入したことでも話題を呼んだ。
モザンビーク支援のNPO法人「アシャンテママ 」共同代表理事、NPO「タイガーマスク基金」の発起人をはじめ、 文化庁、経済産業省、総務省、内閣府などの委員を歴任。
2022年4月30日『スイスイ生きるコロナ時代』(坂井直樹氏と共著/高陵社書店)を上梓。著書に『パラダイムシフトできてる? ~ポストコロナ時代へ』(スピーディBOOKS)『SNSで儲けようと思ってないですよね~世の中を動かすSNSのバズり方』(小学館)がある。
公式ウェブサイト http://AtsushiFukuda.com
日本にある「相対的貧困」
福田:本日のゲストは、いろいろなプロジェクトを手掛けておられる、コミンズ・リオさんです。よろしくお願いいたします。
コミンズ:今日はありがとうございます。よろしくお願いいたします。
福田:「Z世代(現在12-25歳)に向けたクリエイティブプロデューサー」と紹介をすると、読者の方にはさらにわかりやすいかもしれません。 僕の会社には、ありがたいことに1日にたくさんの企画書が送られてきます。採用させていただくものは正直少ないのです。そんな中にリオさんの会社からもオファーをいただいたのですが、会社概要がソーシャルグッドなのに、企画書がテレビのバラエティ内容で、そのギャップに驚きました…、正直でごめんなさい(笑)。
コミンズ:いえいえ(笑)。
福田:でも、この差はなんだろう?と気になってしまったのが興味をもったはじまりなんです。だから実際にお会いしたくなってお話ししたら「どうやって地球を平和にしたらいいと思う?」と質問した時に、ババッーと明快な返答がたくさん出てきて。それ以来、もう大好きになっちゃった!……というのが、今回改めてお話を伺いたいと思ったきっかけです。
コミンズ:ありがとうございます。
福田:今日は、その時の話を再現したいなと思っています。
コミンズ:はい。まずは日本の抱える問題についてだったと思います。僕の友人で、子どもの貧困を支援するNPO法人「Learning for All」(*1)の代表理事をやっている李炯植という男がいるのですが、ここ数年ほどLFAのメディアプロジェクトを弊社でやっていたこともあり、そこを通して学んだシングルマザーと貧困の話をしましたね。実は日本の子どもって、7人に1人が今、貧困なんですよ。 貧困の定義は何かというと、親1人子1人の場合だと「1カ月14万円以下で生活している人」。そしてシングルマザーの貧困率に至っては、OECD(*2)加盟38カ国のなかで最低です。例えば、デンマークでは20人に1人なのに対して、日本は2人に1人なんですよ!
福田:月の収入が14万円以下の人が、2人に1人?
コミンズ:はい。もちろん中には大企業で働いていて、たまたま離婚してシングルマザーになったという、安定した手取りの人もいらっしゃいます。でも、貧困に該当する多くの女性は、10代で妊娠して、もともとが貧困のサイクルに入っていたシングルマザーがほとんどなんです。彼女たちの多くは水商売をしながら子育てをしているから、子どもの面倒も満足にみることができなくて、半分ネグレクト気味になることも。そしてその子どもは、貧困のせいで靴がボロボロとか、風呂にも入れてもらえないから、「臭い」とか「汚い」とか言われ学校でいじめられる。すると学校に行きたくなくなるから不登校になり、勉強に追いつけなくなる。勉強ができないから、進学できず、そこから仕事にも就けず、親と同じ水商売の道に…。これがざっくりですが、いわゆる「負のサイクルから抜け出せない」状態なんです。 貧困には実は「絶対的貧困」と「相対的貧困」の二つがあって、前者がいわゆる後進国のように、2キロ歩いてやっと水が汲める、みたいな状態です。で、後者の相対的貧困が、日本などの先進国におけるもので、一般的な暮らしのセーフティネットから抜け落ちてしまった状態ですね。
福田:なるほど。その相対的貧困が、7人に1人ということになるわけですね。
(*1)…子どもの貧困を解決することをミッションに掲げるNPO法人。
https://learningforall.or.jp/about/
(*2)…Organisation for Economic Co-operation and Development の略称で、日本語では「経済協力開発機構」。欧州諸国、米国、日本などを含む34カ国の先進諸国によって構成されている。