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マライヤ・キャリーへの戦術

伝説のプロモーターが読み解く「エンタメの未来2031」(後編)   Talked.jp

福田:そのときのソニー・ピクチャーズのトップは誰だったんですか?

北谷:『007』のプロデューサーのジョン・キャリーです。ソニーミュージックのほうは、トミー・モットラーです。

福田:有名な方ですね。マライヤ・キャリーの旦那さんだったことでも知られる。

北谷:そうです。じつは彼は、私がマディソン・アベニューにあるソニービルの最上階の角部屋を取っちゃったので、ものすごく警戒していたんです。ソニーの社内エレベーターにセキュリティカメラを作って、私がいた34階のエレベーターホールにも入れて…。私を訪ねるソニーミュージックの役員は、全部報告されるようになっていたことが後に分かりました。なので私と親しくなった人はみんなトミー・モットラーに呼ばれて、「お前、日本から来たあいつと何をしてるんだ」ってしょっちゅう。

福田:それもまた、映画みたいですね(笑)

北谷:実際の話です。しょうがないので、これはトミー・モットラーの心をつかむしかない、と。何をしたらいいかなといろいろ考えて、で、「やはりマライヤだな」と。

福田:すごい話が出ましたよ!

北谷:マライヤにビジネスチャンスをプレゼントすることで、トミーの警戒は解けると思ったんです。それで、いろいろと考えました。マライヤはファッションデザインをやると聞いていたので、日本でウエディング会社を探して、マライヤ・キャリーラインのウエディングガウンを作ってもらい、MGを払えるようにしよう、と考えました。著名な高級美容チェーンのオーナーと話をして、先方もかなり前向きに交渉してくださいました。で、同じ土俵に上ったわけですよ。デザインのビジネスは、最終的には要求額が高すぎて成立しなかったんですけども、私がマライヤを介して、トミー・モットラーに、「こいつは稼ぐネタ、ビジネスチャンスをオレに持ってこれるやつだな」と思わせることが重要だったんです。それでトミーの懐に飛び込むことができました。おかげでそれ以降はセキュリティチェックもかなり軽くなりました(笑)

福田:そのストーリーが大事だったんですね。しかしすごい戦術ですし、あっちのアクの強さも半端ないですね!

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