丸の内の週末を激変させた仕掛け人 都市活性化の名人に聞く、スマートシティ考(前編)

丸の内の週末を激変させた仕掛け人
都市活性化の名人に聞く、スマートシティ考
(前編)

編集・構成:井尾淳子
撮影:越間 有紀子
日程:2022年7月13日

水代 優(写真/左)

good mornings 株式会社 代表取締役。コミュニティプロデューサー。1978年生まれ。愛媛県出身。2002年より株式会社IDEEにて新規出店を手掛ける。2012年にgood mornings 株式会社を設立。東京・丸の内や日本橋をはじめ、全国各地で「場づくり」を行い、地域の課題解決や付加価値を高めるプロジェクトを数多く手掛ける。「食」や「カルチャー」を軸にしたクリエイティブな空間の企画運営やメディア制作を得意とし、様々なコンテンツを織り交ぜ街に賑わいをつくり、地域コミュニティの拠点を創出している。著書に『スモール・スタート あえて小さく始めよう』(KADOKAWA)がある。

福田 淳(写真/右)

連続起業家
1965年、大阪生まれ。日本大学芸術学部卒業。
ソニー・デジタルエンタテインメント創業者
横浜美術大学 客員教授、金沢工業大学大学院 客員教授。
女優”のん”などタレントエージェント、ロサンゼルスを拠点としたアートギャラリー運営、バケーションレンタル事業、沖縄でリゾートホテル運営、大規模ファーム展開、エストニア発のデジタルコンテンツ開発、スタートアップ投資など活動は多岐にわたる。 自社の所属アーティストとは、日本の芸能界にはなかった「米国型エージェント契約」を導入したことでも話題を呼んだ。
1998年、ソニー・ピクチャーズエンタテインメント社 バイス・プレジデントとして、衛星放送「アニマックス」「AXN」 などの立ち上げに関わる。
カルティエ「チェンジメーカー・オブ・ザ・イヤー」受賞 (2016年)
ワーナー・ブラザース「BEST MARKETER OF THE YEAR」3年連続受賞 (2012-14年)
日経ウェブ「21世紀をよむITキーパーソン51人の1人」選出 (2001年)
文化庁 「コンテンツ調査会」委員
経済産業省 「情報大航海時代考える研究会」委員
総務省 「メディア・ソフト研究会」委員
著書
『ストリート系都市2022』(高陵社書店)
『スイスイ生きるコロナ時代』(髙陵社書店) 共著 坂井直樹氏
『パラダイムシフトできてる?』(スピーディ出版)
『SNSで儲かるなんて思ってないですよね?』(小学館)
『これでいいのだ14歳。』(講談社)
『町の声はウソ』(サテマガ)

(株)スピーディ 代表取締役社長
Speedy Gallery Inc. (CA, U.S.) - President
Speedy Euro OU - President
NPO「アシャンテママ」 代表理事
NPO「ファザリング・ジャパン」監事

公式サイト:
http://AtsushiFukuda.com
YouTube対談動画
https://www.youtube.com/channel/UC3oCfveGQgT2Lpx27O9NDIw

コロナ禍で見つめた「場づくり」

福田:今日はよろしくお願いします。

水代:こちらこそ、よろしくお願いいたします。

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福田:水代さんと出会って、もう何年も経つと思うのですが、今日はお久しぶりに水代さんの本拠地・日本橋浜町にあるBook&Cafe「Hama House」からお届けしています。
この場所に伺うのは3~4回目くらいですけど、本当に、最高の場所ですよね。全面ガラス張りの窓の向こうには、その時々のテーマでセレクトされた本が並んで圧巻です。本を面陳でこれだけフューチャーしているのは、まるでアートですよね。オープンしてからどのくらいですか。

水代:ありがとうございます。今年の9月で、オープン5年目になります。

福田:そんなに短いですか。そんな感じがしないよね。このお城があれば、何でもできそうな気がする。

水代:そんなこともないですけどね(笑) 近況としましては、「日本橋浜町を盛り上げる会」から「一般社団法人日本橋浜町エリアマネジメント」というプロセスを経て、エリアマネジメント団体から「都市再生推進法人」となりました。

福田:エリアマネジメントというのは、どういうものなのでしょう?

水代:要は、行政に対しても「街のグランドデザインとしてこうするべきだ」という案を提案できる団体になった、ということです。東京でも他の地域の街づくり団体はみんな結構、(その団体に)なっているんですけど。大手デベロッパーさんなども容積率を緩和させたいという狙いがあって、「都市再生推進法人」の組織になることを目指すんですよね。例えば「三十メートルまでしかビルは建ててはダメ」という決まりの場所にも、もっとすごい高い商業施設やタワマンを建てたいからですね。その組織になれると、行政にもいろいろ言えるようになるので。

福田:なるほど。すごいな。

水代:僕らの場合は、「やみくもに再開発がしたい」というニーズからではなくて、歩いて100メートル以内に公園がないから道路を公園にしようとか、公園でももっとみんながDJとかライブとか、バスケ大会なんていうお祭りもできる場所にしようとか、そういったことが目的です。本来、道路だったはずなのに違法駐輪になっているから、そこを全部、公園にしようとか。街づくりって、本当はそういうことをするべきで、僕たちはようやくいま、そこに取り組んでいる感じですね。

福田:素晴らしい。そして、コロナ禍も続いていますしね。

水代:そうですね。僕の本業は街づくり、コミュニティづくりなので、「違う人同士を集めてなんぼ」というところからの脱却については、いろいろと考えることはありました。コロナ禍においては、そういうこともなかなかできないので。

福田:僕はというと、このコロナ禍の時期を通じて、『ストリート系新都市2022』というタイトルで、自分の新刊の原稿を書いていました。いろいろあるきっかけの一つは、1960年代にニューヨークで市民運動を起こしたジェイン・ジェイコブズというジャーナリストの女性のドキュメンタリー映画『ジェイン・ジェイコブズ ニューヨーク都市計画革命 』を観たことなんです。今でいうタワマン、高層ビル建設のような都市計画を反対運動で阻止した話なんですけども。1997年の建築基準法の改正により、容積率が緩和されたことで日本の都市ではタワマンが急増しました。でもタワマンの行く末はこの先どうなるのか。それは本当に、人々の暮らしにとって幸せな街づくりといえるのか、いまは誰も知らない状況ですよね。

水代:たしかに。そうですよね。

福田:「タワマンの未来は誰もわからない」ということを考えています。ミッドタウンでもヒルズでもそうなんですけど、「タワマンにだって公園や施設はいろいろある!」とはいうものの、地域にある公園とは明らかに違います。それはデベロッパーがルールを決めた公園であって、自由にお花見も花火もできないし、あまりくつろげないな、と。原稿を書きながらそんなことを考えているうちに、「そういえば、街づくりのプロの水代さんに、最近お会いしてないな」と思って今日お時間をいただいた、というわけです。

水代:なるほど。それは光栄です。

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