SNSが変える印刷メディアの未来

SNSが変える印刷メディアの未来(後編)

主催者 : 東京都印刷工業組合の経営革新マーケティング委員会
日時 : 2017年9月13日
場所 : 日本印刷会館
構成:井尾 淳子

福田 淳氏

ブランド コンサルタント。1965年、大阪生まれ。日本大学芸術学部卒業。衛星放送「アニマックス」「AXN」 などの立ち上げに関わったのち、 2007年にソニー・デジタルエンタテインメント創業、 初代社長に就任 (現 顧問)。 2017年、ブランドコンサルタントとして独立。NPO法人「タイガーマスク基金」の発起人をはじめ、 文化庁、経済産 業省、総務省などの委員を歴任。 2017年、新しい世界を切り開 くリーダーとして、カルティエ提供「チェンジメーカー・ オブ・ザ・イヤー2016」を受賞(日経BP)。近著に『SNSで儲けようと思ってないですよね?: 世の中を動かすSNSのバズり方』(小学館)がある。

メディア側が上位下達で情報を伝える時代ではない

SNSが変える印刷メディアの未来 Talked.jp

今、僕らはインターネット革命のただ中にいます。Yahoo! JAPANが20周年。つまり、インターネットが出てきてから、約20年なんです。僕の父親は電通マンだったのですが、よく「いやあ、インターネットが出る前にリタイヤできてハッピーだった」なんて言っているんです(笑)。そう思いますよ。インターネットさえなければ、出版もテレビも広告代理店もハッピーだったのに、「なんだかよくわからないものが出てきちゃった、どうしよう」というのが、本日僕がお招きいただいた一つの要因にもなっていると思います。

インターネットの時代が来て、やはり消費は変わりました。若者がものを買わなくなりました。車は欲しくない。女の子と付き合っても、べつにセックスもしたくない。旅行も行きたくない。僕は大阪から大学進学で東京に来ましたが、自炊するのも大変だから、一番安い駅前の食堂によく行っていたんです。1980年代中盤で、しょうが焼き定食が650円でしたが、今は普通に250円で食べられますよね。食事代もデフレ化してしまっている。洋服もユニクロで精度の高いものが980円で買える時代です。

あるセレクトショップのアパレルブランドの社長から、次世代のブランディングについてご相談を受けた時に「その白いシャツはいくらですか」と聞くと、9800円なんですね。原宿で9800円の白いシャツを売る会社は200社ぐらいある。10万円の白いシャツというと、ハイブランドのエルメスくらいしかありませんが。でもユニクロの980円のシャツと、セレクトショップが9800円売っているシャツがそんなに変わらないとしたら、別に980円でいいわけです。年収300万円の時代といわれる通り、バブル世代が「がつがつ稼がないと叶わない」と思っていたいい暮らしが、ある程度のクオリティーで手に入るようになった。だから「みんなが欲しいもの=自分も欲しい」という図式には、もうなっていないんですね。

とはいえ、「希少価値があるものが欲しい」という人間の欲求は変わらない。なので3Dプリンティングでものを作っちゃうとか、クラウドファンディングでしか買えない時計を買っちゃう、という辺りに、ビジネスチャンスがあるのかなと感じています。一つ言えるのは、僕らメディア側が上位下達で情報を伝えるのではなく、お客さん側のほうが主張して、何か作らなければいけない。そこに、なんらかの仕事のヒントがある気はしてます。

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