ビジネスはロック。だから「バンドやろうぜ!」

ビジネスはロック。だから「バンドやろうぜ!」(前編)

構成:井尾 淳子
撮影:越間 有紀子
日程:2018年2月9日

橘川幸夫氏(写真右)

株式会社デジタルメディア研究所所長。1950年、東京新宿生まれ。’72年、大学生の頃、浪人生だった渋谷陽一らと音楽投稿雑誌「ロッキング・オン」創刊。’78年、全面投稿雑誌「ポンプ」を創刊。その後、さまざまなメディアを開発する。'83年、定性調査を定量的に処理する「気分調査法」を開発。商品開発、市場調査などのマーケティング調査活動を行う。80年代後半より草の根BBSを主催、ニフティの「FMEDIA」のシスオペを勤める。'96年、株式会社デジタルメディア研究所を創業。インターネット・メディア開発、企業コンサルテーションなどを行う。'04年、小規模コンテンツ流通システムとしてのオンデマンド出版社「オンブック」を創業。'06年、文部科学省の「新教育システム開発プログラム」に「ODECO」が採択され、開発・運用。原稿執筆、講演など多数。

福田 淳氏(写真左)

ブランド コンサルタント。1965年、大阪生まれ。日本大学芸術学部卒業。衛星放送「アニマックス」「AXN」 などの立ち上げに関わったのち、 2007年にソニー・デジタルエンタテインメント創業、 初代社長に就任 (現 顧問)。 2017年、ブランドコンサルタントとして独立。NPO法人「タイガーマスク基金」の発起人をはじめ、 文化庁、経済産 業省、総務省などの委員を歴任。 2017年、新しい世界を切り開 くリーダーとして、カルティエ提供「チェンジメーカー・ オブ・ザ・イヤー2016」を受賞(日経BP)。近著に『SNSで儲けようと思ってないですよね?: 世の中を動かすSNSのバズり方』(小学館)がある。

一億総「暇つぶしの時代」がやってきた!

福田:橘川さんとの最初の出会いは、講談社の名編集者だった内田勝さん(故人)がきっかけでしたね。

橘川:もう、20年近く前ですね。

福田:内田さんというとても面白かった方が、「面白い人がいる」と。それで実際に橘川さんにお目にかかったら、本当に面白かった。お話ももちろんですが、橘川さんの著書『暇つぶしの時代?さよなら競争社会』(平凡社)が衝撃的でした。http://amzn.asia/d6KJ456
この本は楳図かずお先生の著書『14歳』と並んで、僕の生涯ベスト10です。
何がすごいかって、人類の歴史というのは「暇をつくる、余暇をつくる」ということの繰り返しであると、橘川さんの著書からインスパイアされまして。あれはいつ発行されたのですか。

橘川:2003年かな。それぐらいですね。今はKindleで読めますけども。

福田:Kindleで読める。それはぜひ宣伝しましょう。あの名作はぜひ、多くの人に読んでほしい。

橘川:日本の社会が豊かになって、その結果何が生まれたかというと、暇が生まれたと。産業社会によって、暇が生まれたんですよ。すべて機械にやらせた結果ね。その暇を、ブルジョアジーが最初に使ったわけですね。今のアートとか恋愛みたいなものも、全部そう。戦後の産業革命で暇ができたから、恋愛ができたんですよね。それまでは、動物的な生殖しかなかったわけです。芥川龍之介の言葉にも、『恋愛で一番必要なのは暇だ』っていうのがありますね。

福田:なるほど。暇じゃないと恋愛しないですね。だから、中学生や高校生が悩むわけですね。

橘川:その暇が、文化を生んだんですよ。近代文化をね。これまでは「暇をつぶす」というのはブルジョアジーとか、特別な才能のある人の特権だったのが、庶民にも『暇つぶしの時代』がやってきた。

福田:極端に言うと「引きこもり」というのもそうかもしれませんけど、ファミコンだとかプレステを作ったら、みんなゲーセンに行かなくなるし、VHSやDVDがあれば映画館に行かなくなるし、ホームエンターテインメントの時代は余暇も増える上に、外へも行かなくなる。『暇つぶしの時代』の中に、「高速道路ができて飛行機ができて、オートモービル化したことによる産業革命で、A地点からB地点に行けるようになったことで、途中の風景なくなった」という記述がありますよね。それが非常に強く印象に残っています。結局、インターネットができて「世界中を知ることができるようになった」と言いながらも、点と点の間の風景がどんどんなくなっていっちゃった、ということもあると思うんですよね。「時間や距離の途中の情緒がみんな失われてしまう」ということを予見していた本だと思うんですけども。

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