logo

ソーシャルメディア時代の今こそ、 フラクタルな生き方は強い

ソーシャルメディア時代だからこそ、「極め人」より「フラクタル」 Talked.jp

福田:「Satellite Young」は歌謡エレクトロユニットで、そのコンセプトは80年代であると。

草野:はい。80年代を再現したい一心で、楽譜も読めないところからいきなりスタートしました。80年代アイドルの歌謡サウンドに、SNS時代の違和感をのせて現代社会を歌う、という。私は作詞とボーカルを担当していて、アートワークや衣装をセルフプロデュースして。あとはミュージックビデオを作ったり、アニメを作ったり、グッズを作ったり。そういうのが今、楽しくて。一つのジャンルにおける「極め人」にはまったくなれないんですけど、常にあるモチベーションは、「面白い人と一緒に何かを作りたい」ということなんです。1人で作るものには、私はあまり興味がないというか。

福田:今、おいくつでしたっけ。

草野:27歳です。自分が20代後半になって思うのは、自分が興味のあることを実現している人や自分に近い人にアドバイスを求めるのはいいとしても、それ以外の人の声は気にしなくていい、ということですね。例えば音楽をやっていない人に、「メジャーデビューなんてしても意味ないよ」って言われてもあまり意味はないし。私もいろんな人にアドバイスはいただくしありがたいとは思うものの、最終的には自分の道を信じるしかないから。

福田:まったくもってそう思うよ。自分は若い頃はとくにばかだったのかもしれないけど、その境地には最初から至っていた。もう、誰の言うことも聞く気がなかったよ。今もそうだけど(笑)。

草野:でも、それは才能だと思いますよ。

福田:アドバイスを受ける時も、心の中で(ネガティブなこと言ったらぶっ飛ばす!)って思ってたりして(笑)。

草野:かっこいい。そこがいいですよ。

福田:大人になった今も、たとえば何かのプロジェクトでスタッフをキャスティングする際に、「あの人、この面ではどうなの」とか、いろいろ言われるとするでしょ。昔だったら聞く気もなかったんだけど、今は「アドバイスありがとう、そこは分かっているよ」と。一応承って、咀嚼はするんですけどね(笑)。やっぱり自分だって完璧じゃないし、人も完璧じゃないし。いろんな人と仕事して失敗もたくさんしているけど、その人の中のいいところを見ようと思うようになったよね。これまで自分が会社経営して、一緒に働いてきた中で辞めていった人もたくさんいるし、そして辞めて成功している人もいっぱいいる。つまり「生きている」っていうこと自体が”ライブ価値”なんだよね。だから、その人の過去の価値で、他人が未来を類推するのは、ちょっと失礼だなと思っている。

草野:そうですね。他人の尺度で測るなという。

福田:だから、人のアドバイスに振り回されない。自分がやりたければやる。それだけ。

草野:的はずれなアドバイスなのに、それを真面目に受け止めて、心折られている若者は結構多くて、それはもったいないなって思っているんです。確かに、ひとかどの人であったり、なにかの第一人者だったり、プロなのかもしれないけれど、「自分の生き方とは関係ない」って、とどこかで線引きすることも必要だなと思います。

福田:大人になるほど、偉い人にたくさん会えるじゃない。でも偉いって言われている人の中にも、ダサい人もいっぱいいるからね。「オレは石の上にも100年の勢いで、ずっと同じことやってきた!」みたいなことを自慢したりね。もちろん、同じことをやり続ける人も必要で、両方あっていいと思うんだけど、本当に素晴らしい人はそんな自慢しないから。

草野:そう思います。

福田:フラクタルもいて、極め人もいて、両方必要。でもあまりにも、前者のフラクタルな人、いろんなことに関心が向く多動性的な人が評価されない時代が長すぎたんじゃないかと思う。ソーシャルメディア時代の今こそ、ミュータント…昔の言葉でいうと、マルチクリエーター的な? もとい、フラクタルな生き方が求められていると僕は思いますね。

草野:ホリエモンさんも「多動力」とおっしゃっていますけども。その多動力を発揮するにも、やっぱり何か一つのところでは突き抜けているように見えた方が、可能性は広がるんじゃないかなという気はしています。

福田:そうだね。他人から見た時に「理解されやすい旗」を掲げていた方が、多動力があって、フラクタルであったとしても、たしかにいいよね。

草野:ですよね。私も、いろいろなことをやっているけど、その軸の中に音楽があると思っています。もしかすると音楽じゃなくて、レトロとか、過去のマス文化に対しての憧れなのかもしれない。そこに最新のテクノロジー要素をミックスすることにSFを感じていて。そういう「これだけは負けない」っていうのはあるんですよね。そういう軸を持ちながらいろんなことをやって、いろんな人とコラボレーションして、作品を作っていくというやり方が自分に合っているのかなと。 肩書をひとつにした方が仕事は来やすいだろうなとわかってはいるんですが、自分よりも長けている、得意な人がいればその人に任せてコラボレーションして、自己表現をしたいなと思っているので。

福田:たしかに、この前の「Art Hack Day」の作品では、絵美ちゃんがコンセプトメイキングを担当して、プログラミングは現代美術家・会田誠さんのご子息の会田寅次郎くんが担当していたよね。「生命の宿ったカラオケマシン」というテーマで。

草野:はい。メディアアートもそうだし、「Satellite Young」も自分の頭の中でイメージしているものをディレクションシートにして、それを映像作家の人にオーダーするという手法が楽しいんですよね。

TOPへ