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質疑応答②
インサイトはどのようにデザインされるのか?

~WASEDA NEOトークセッション第1回~ Talked.jp

質問者- デザインというのは非常に右脳的で、ユーザーに媚びないイメージがあります。例えば、デザイナーのエゴみたいなのが逆に功を奏する…みたいな。インサイトとデザインの関係性というのは、どういうものなんでしょうか。

坂井:インサイトをどう形にするのかっていうご質問ですよね。

質問者- はい。

坂井:例えば、さっきのルイ・ヴィトンの話のように。だから、インサイトが伝わらないデザインは良くない。「めちゃくちゃかっこいいもの」と思われるデザインやデザイナーっていうのは、じつはほんの一部の世界なんですが、そこは誤解されていますね。
つまり、人間が作ったものは全部、デザインされているんですよ。皆さんの眼の前のデスクもそうだし、この空間もそうだし、この天井もそうだし、誰かがデザインしたわけですね。でも富士山はいくら美しくても人工物ではないから、デザインやアートっていう言葉にはならない。非常にありふれた靴や服、ジャケットも、全部デザインされています。ところが「ブランド」っていうと、=ラグジュアリーブランドだと思いこむ方が多いんですよね。でも歯ブラシ1本、歯磨き粉でも、なんだってブランドでしょ。でも、そっちにはいきなり行かないですよね。
だから、デザインってちょっと偏ったバイアスの入った情報が多いのでそう見えているだけで、実は最適化なんです。パフォーマンスでもあり、最適化でもある。いかにそれらしいかっていうことだから。なのでAIによってデザインは、おそらくデザイナーも、いなくなりますよ、最適化だから。でもアートは、いくらAIが出てきても、なくならない。

質問者- ということは、例えばiPhoneを作るにしても、まずインサイトが最初に来て、そこからデザインをしていくという順番ですか。

坂井:そうだと思いますね。iPhoneは、「インターネットをポケットに入れよう」っていうことでしたよね。そういう意味でいうと、われわれを初めて24時間、インターネットに触れることができるようにしたのがiPhoneですよね。しかも直感的なインターフェースがあるということだから、あれはやっぱり、ユーザーエクスペリエンスの開発なんですよね。

福田:ソニーのウォークマン開発秘話で有名なのは、創業者の盛田昭夫氏がラジカセを売っていた時代、息子さんがそのラジカセを肩に背負って公園に行ったのを見た時に、「歩きながら音楽を聞けたらいいな」と思ったと。社員に「マーケティングリサーチをするな」って言ったのは、それがきっかけなんですよね。

坂井:本当にそうですよね。要するに、屋外で音楽を聞くっていう行為が、ウォークマンの前にやれなかったですよね。それを勉強してiPodが生まれたんだけど。

福田:僕は今のインサイトとデザインっていう関係だけでいうと、オリンピックの新国立競技場。あれは、ザハ・ハディドさんのデザインが何が悪かったのか。今、徹底的に議論したいんですよね。良かったですよ、あのデザイン。

坂井:僕もそう思うんですよ。

福田:今の建築デザインも、失礼ながらザハ氏のものとそんなに変わらないですよね。あれのインサイトは何かっていうと、「日本人が造っていない」っていうことだったと思うんです。
そういう日本人のインサイトに理解されないものがザハさんに象徴されちゃって。ザハさんのデザインとは関係ないところで、新国立競技場のデザインは否定されたんじゃないかなと思うんです。
デザインとインサイトの関係っていうのは、案外そういう感覚のものじゃないかなというふうに思います。

坂井:デザインは「色」「形」「設計」という、三つぐらいのキーワードで語ると簡単で。設計っていうのは、実はアメリカ英語と中国の言葉で、デザインの中に「意匠と設計」っていう二つの概念がちゃんと入っているんだよね。日本語はその英語を翻訳する時に、色や形に非常に傾いてしまって、設計っていう概念を切り離してしまった。だから僕らがデザインを分かりにくくした。
そして、あえて4つめでいうと「問題解決」ですよね。一番簡単な事例でいうと、皆さんが紙を束ねるクリップ。あれ、針金を2回巻いているだけなんですね。でも完璧なデザインなんです、15枚ぐらいの紙を束ねるのにね。だからそういう意味でいくと合理的なんですよね。しかもデザインっていうのは、全て数値化できる。3次元関数で出せますからね。この数式さえ送れば、クリエートフィルターでどこの国でも全く同じものが作れる。

福田:だから逆に、デザインはアートとは対立の概念なのに、そこがごっちゃになっているんですよね。

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