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ライフ・シフト鬱が急増する未来

~WASEDA NEOトークセッション第2回~ Talked.jp

柳瀬:次のトピックスとして、「ライフシフト」の話をしましょうか。

福田:そうですね。ライフシフトの話って、結局AIや働き方改革に結び付いていくんですけども。「AIに仕事が奪われる」とか言いますけど、よく考えてみたら、100年前にやっていた仕事って、自然に奪われているよね、と。別にAIじゃなくても奪われてきた職業はいっぱいありますよね。ただ、日本は変わらんぞとみんな思っている。だって銀行が日中開いて、年収1000万の人が対応してくれるとか、「FAXで送ってください」なんて話が普通にありますからね。
 ただ僕の予想では、近未来の人間の仕事は三つしかなくなると思っています。一つは”遊びが仕事になる”と思います。アートやクリエーティブなこと、人が豊かさを実感できるような仕事。これ、ひとくくりで一つの産業になると思うんです。なんせ余暇が多くなっていくわけですから。今でもゲーム会社が全然つぶれないっていうのは、よっぽどみんな暇だから。昔に比べて時間があるからなんですね。
 二つ目が人助け。人に良くする。人って、自分だけで幸せになれないじゃないですか。だからNPOもいっぱいありますよね。人を助けることで成り立つっていうことは、一つの産業としては大きいと思います。
 三つ目は、AIの会社がいっぱい出て流行っていますけど、例えば交通調査なんかも、もう車の車種をディープラーニングさせたらAIでできますよね。今あるものも、どんどんAIに置き換わっていくでしょう。それらAIにテーマを与えるのは人間ですよね。企業や人は、こういうニーズがある、こんなことができるという橋渡しをする。これを何て呼んだらいいんでしょうね。キュレーターあるいは、ストーリーテラー。これがほとんどの人間の将来の仕事になると僕は思うんです。つまりAIにテーマを与える仕事。

柳瀬:最後の仕事は、ほとんど1番と一緒ですね。

福田:話が行きつつ戻りつしますけど、入管法改正法案の決議では、野党も訳の分からない突っ込み方をするわけですよ。「パワハラで逃げた人の数も把握してない」とか、「過度に残業させる」とか。でもあれ全部、日本社会で起きていることなんですよね。別に、アジアから働きにきた外国人にだけにやってることじゃないんですよ。

柳瀬:日本でもやっているんですよね。

福田:つまり、そこが行き詰まっているわけです。行き詰まっているけど、今度来た30万人の人に同じことをやったら、それこそ世界から取り残されちゃうんで。そういう意味でいうと、ライフシフトが流行っていますけど、こんな長い間20世紀型の組織のまま残ってる企業社会が、ライフシフトブームになったからって、ちょっと会社辞めてみようかってならないですよね。まぁ、われわれは辞めてますけど(笑)

柳瀬:ライフシフトは、自分もやってみて分かったんですけど。僕は53歳で初めて会社を辞めて、今、大学の教員になって分かったのは、やっぱり大変だったこと。何が大変っていうと、50代で転職して全く新しい仕事に就くというのは、体力が追いつかない。決して体力がないほうではないんですが、追いつかない。二つの体力あって、フィジカルな体力と、知的体力ですね。新しいことを学ぼうというエネルギーは、恐らく30代前半ぐらいでピークアウトすると思います。そうしたときに、フィジカルに人間が70?100まで生きちゃうとどうなるか。恐らくこれから起きるのは、40、50代で、転職をしないといけない、せざるを得ない人たちが大量に出てきたときに、そのライフシフトの結果、鬱状態に陥る人が大量に出てくるだろうなと。僕は断言しますけど、間違いなくいっぱい出てくると思います。

福田:この間、デジタルメディア研究所の橘川さんと「そのためには方策を打つべきだ」っていう話をして、ある回答を得たんです。それは、僕らが新入社員として初めて社会に出たときに、先輩から「お前はいつまで学生気分が抜けないんだ」って怒られました。ところが40年近く働いて、めでたく……かどうか分かりませんけど、リタイアしましたといったときに、自分がもうを何やりたかったのか、さっぱり分かんなくなってる。なんで分かんなくなるかって言うと、会社の会議に出て、会社の3カ年計画の中の1コマでずっとテーマを与えられてきたんですよ。それを40年やった人がね、いきなり自分のテーマを発揮しろったって、無理ですよ。

柳瀬:そもそも、自分のテーマを探せないですね。

福田:橘川さんは、そういう人たちを集めて学校を開くんだって、その人たちに、開口一番「いつまで社会人気分が抜けないんだ!」って言うらしいです(笑)

柳瀬:面白い(笑)もっと青臭い学生に戻れと。

福田:戻れと。「私、何をやりたかったのか、もうさっぱり分かりません」っていう人に対しては、一つの質問で突破できる。それは小学校のときに何が得意だったか。写真なら写真を極めろっていう話ですよね。つまり、大学生になると進路や就職のことを考えて、いろんなことをチョイスするんですけど、小学生あたりでやりたかったことっていうのは「その人が”ピュアにやりたかったこと”じゃないかっていう話しですね。

柳瀬:なるほど。野球選手は、なかなか難しいそうですね。でも、野球選手にはもうなれなくても、地域の野球チームのマネジメントをやったりとか、やることはいっぱいありますよね。

福田:そうなんですけどね。僕らは割と社交的だとは思うんですけども、世の中はそう社交的な人ばかりじゃないですよね。奥さんのほうが社交的だから、熟年離婚とかあるじゃないですか。その橋渡しをしてあげなきゃいけないと思うんですよ。近所にこれだけNPOがありますとか、これだけワークショップがありますとか、で、どれをやりますかっていう。こういうこともAIと一緒で、人のインターフェースが要るんですね。だから人間の仕事って無限にあると僕は思います。

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