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新元号「令和」到来。 アートにもイノベーションが起こる?

デザイン経営時代のブランディング ブロックチェーン×アートで新時代のイノベーションを起こす

福田:それで施井さんは、ご自身がアーティストになる、というところでとどまらず、会社をつくろうとか、他のアーティストをプロデュースしよう、伸ばそうという発想にいかれたわけですね。

施井:そうですね。必ずしも若手アーティストの救済が最初にあったわけではないんですけど、アート全体を盛り上げるというか。それこそルネサンスのようなアートの勃興が起きてもおかしくない時代だと思っていたので……。インターネットのダイナミズムが、アートにはないんですよね。だから、ああいうダイナミズムみたいなものがどかっと来るようにしたいっていうのが漠然とありました。

福田:全体的な話になりますけれども、アートに限らず日本って、何もイノベーションが起きていないですよね。

施井:そうなんですよ。

福田:海外に行くと説明に困るのが、日本を代表する会社ってどこだろうということ。昔だとトヨタでもソニーとか挙げられましたが、いまは何だろうと。チームラボと言ってもいいけど、あるいはメルカリとか。

施井:たしかに、日本の企業全体が微妙……と言ったら失礼ですけども。

福田:それってなぜだろうと考えたんですけど、僕は日本人のベースが西暦ではなくて、元号だからなんじゃないかと思っているんです。ミレニアムでは、日本人のモチベーションのスイッチは変わらなかった。日本人にとっては、2000年も平成の延長ですから。つまり日本人の文化が西暦だったら、諸外国のようにミレニアムでスイッチが替わったんですよ。でも西暦じゃなかったから、日本人にはまだ21世紀が来ていなかったんです。だから令和がスタートする5月1日にパシッと切り替わるって思うんですよ。

施井:なるほど。それは本当にそうかもしれないですよね。

福田:その根拠は、去年10月のハロウィンなんです。ハロウィンのとき、渋谷に15万人が集まって、トラック横倒しになったりして、大騒動が起きました。それ自体は良くないんですけど。これは東京工業大学の柳瀬博一教授から聞いた話ですが、じつは渋谷とは別に、川崎市もずっと、「カワサキ ハロウィン」といって町おこし事業イベントをやっているんですね。特殊メイクの専門学校生たちがピカソなどの名画になって、フレームをもったコスプレがTwitterで話題になったそうです。でも、話題のレベルが渋谷のほうが半端ないんですよ。その違いは至ってシンプルで、渋谷のほうは「ええじゃないか」。民衆から自然発生した中心がない渦だったんです。一方の「カワサキ ハロウィン」は、川崎市という、あくまでも行政の仕掛けなので。だから渋谷の長谷部区長が「渋谷は来年から、代理店を使ってきっちりとハロウィーンを仕切ります」って言うから、多分、そんなことすると面白くなくなりますね。仕掛けられて起こることじゃなくて、「ええじゃないか」が起こることがすごいのであって。

施井:そうですね。

福田:最近話題になった『FACTFULNESS(ファクトフルネス)10の思い込みを乗り越え、データを基に世界を正しく見る習慣』(日経BP社)
という本がありますけれども、「景気悪いな」という実感があったとしても、景気指標はデータが嘘をついていない限り、本当は悪くない。というのはファクトフルネスですよね。人間の実感って、感覚じゃないじゃないですか。だから話を戻すと、日本人には21世紀がまだ来ていないんですよ。平成のままずっと来ていたから、イノベーションが起きるとしたら、これからじゃないかと僕は見ています。

施井:なるほど。

福田:今、 株式会社nobiという、花火の企画をしている会社のコンサルをやらせていただいているんですよ。「花火を近代化させたい」と、畠山晋さんという方が代表をされています。ユニバーサルスタジオに勤めて、ディズニーランドにも勤めて、花火会社に勤めて、それで独立された方。聞くと、花火ってどんどん衰退しているそうなんですね。花火職人はいっぱいいるけども、マーケティングができない。江戸時代から変わらない。花火大会って、ひと晩2000万円くらいかかるんです。企業が花火会社に依頼すると、花火屋さんは「はい、任せといて」で終わり。つまり職人の世界なんです。これじゃ地元の花火大会は良くてもイベント利用では成り立たない。そこで前述のnobiでは、コンピューターシミュレーションして、「こういうふうにやります」とパースでプレゼンできる。スペインでも、パリのエッフェル塔の花火でも、ドバイでも、最近はそういうプロの会社が日本以外でいっぱいできてるんです。花火自体は日本人が開発した意匠なのに。

施井:花火は日本人が開発したんですか?

福田:花火の仕組み自体はオランダ人なんですけど、ああいう円で広がる形の花火を開発したのは日本人なんです。花火ってすごく、人間の直感をくすぐるじゃないですか。だから「プロジェクションマッピングですごいのやります!」っていうのもすごいですけど、リアル花火に比べたらすごくないじゃないですか。だから僕はデジタル表現も、輝度と彩度の違いってあるとは思うんですけど、自然の色の発色には負けますよね。デジタルがアナログを超えるとかっていうんじゃなくて、もっとアナログ感が大事な時代なのかなと思ってます。

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