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アート売買の可能性は、 ブロックチェーンでもっと広がる

デザイン経営時代のブランディング ブロックチェーン×アートで新時代のイノベーションを起こす

福田:スタートバーンのサイトを拝見させていただきました。ヨーロッパだと作った人が末代までロイヤルティーをもらえるような仕組みが、著作権法上(Pursuit Right- 追及権と訳される)あるじゃないですか。でも日本もアメリカも、そういうのはないですよね。そういうものをブロックチェーンで確立するのが、施井さんの目指すところでしょうか。

施井:基本的にはそうですね。前述の、2006年に考えた柱のもう一つが「インターネットでインフラを作ろう」というものだったんですが、アートワールドってピラミッドの本当の一部、上の部分だけがマーケットを成立させているみたいなところがあって。それより下の部分はほとんど取引されていないし、評価もされていなくて売買もされていない。ここを評価の対象にするっていうのが、一番ダイナミズムが起きるかなと思ったんですよね。いろんなインフラのことを考えたんですけども、特に売買のことを考えたときに、ピラミッドの頂点以外の人は価値が決まっていないので、普通売買が成立しないはずですけれども、安くしたくないという。みんなプライドがあるから安くしたくないんですね。
 だから、結局うまく売れないっていう悪循環を、「ここを安くしても、二次販売のときに戻ってくる」ようにすれば改善できるんじゃないかなと。初期価格は最初に回収できなくても、後から回収できるしくみを2006年に考えついて、それでウェブサービスを2015年に作ったんですよ。買ったものをサービス内で転売もできて、その度にアーティストに還元されることにしました。「ここで買ったものをヤフオクで売ったらどうなるんですか?」みたいなことも死ぬほど言われましたけれども、「いや、それは仕方ないですね、規約を守って下さい」と言い続けていたときにブロックチェーンが出てきて。ブロックチェーンがあれば、いろんなサービスを横断して、来歴がちゃんと残っていって、還元金のやりとりもできると思って、調査を始めたら、結構いろんなことができるなとわかったんです。

福田:そのいろんなことっていうのは、実際どういうサービスなんでしょうか。

施井:本格的に開始する時期は未定ですが近々、サービス横断で来歴が残る「アート・ブロックチェーン・ネットワーク」という仕組みが始まります。今後いろいろ実装されていくんですけども、還元金には結構、賛否両論ありまして。転売のとき、「一次流通の流動性は上がるけど、二次流通の流動性が下がるんじゃないか」という指摘もあるんですよね。

福田:転売で手数料が増えると。

施井:はい。でもそれで二次流通を疎外してしまったら意味がないので、売買する人にいろいろオプションがあるような状態にすればいいかなと思っています。アート・ブロックチェーン・ネットワーク上では、作品を登録する時に、その作品の証明書がブロックチェーン上に登録されます。世界中の、例えば5万以上のプラットフォームのみんなに参加してほしいのですが、それぞれのプラットフォーム側にもブロックチェーン上にルールをカスタマイズして登録できるようになっていて、それを証明書のルールと照らし合わせて、照合できたら取引にゴーサインが出て、来歴が残って、照合できないと拒否して「規約違反なので取引できません」となるようになっています。還元金は、証明書の中に、「還元金が発生するところにしか売ってはダメ」っていう規約を入れられて、還元金が発生する販売所で売った場合に限り、還元金が送金される。そんな仕組みなんです。

(後篇へ続く)

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