ブロックチェーン×アートで新時代のイノベーションを起こす(後編)
構成:高杉公秀、井尾淳子(Speedy,Inc)
撮影:越間有紀子
日程:2019年3月4日
施井 泰平(写真右)
スタートバーン株式会社代表取締役 最高経営責任者(CEO)。1977年東京都生まれ。幼少期はロサンゼルスで育つ。1994年から1年間フィラデルフィアに留学。2001年に多摩美術大学絵画科油画専攻を卒業。「インターネット時代のアート」をテーマに創作活動を開始する。美術館での展示と並行して、オンラインでも作品を発表。2006年、新しいアートのラインを築こうと、インターネットをアナログで表現する試みを始める。同時に、アート界のインフラ整備のアイデアも発表。構想8年を経て、2014年に「スタートバーン」を東大内にて立ち上げる。ブロックチェーン時代の実効性あるアイデアとして一躍注目を浴びる。
https://startbahn.jp
福田 淳(写真左)
ブランド コンサルタント。1965年、大阪生まれ。日本大学芸術学部卒業。 ソニー・デジタルエンタテインメント創業者。 横浜美術大学 客員教授、金沢工業大学院 客員教授。 1998年、ソニー・ピクチャーズエンタテインメント社 バイスプレジデントとして、衛星放送「アニマックス」「AXN」 などの立ち上げに関わる。 NPO法人「タイガーマスク基金」の発起人をはじめ、 文化庁、経済産 業省、総務省などの委員を歴任。 2017年、カルティエ提供「チェンジメーカー・ オブ・ザ・イヤー2016」を受賞(日経BP)。近著に『SNSで儲けようと思ってないですよね?世の中を動かすSNSのバズり方』(小学館)がある。
最適解であるために、 ブロックチェーンはプラットフォーム化しない
福田:たとえばある作品を分散型のプラットフォームで売ったとき、最初オリジナルでプラットフォームをやっておられるのに、そこには収入なくなっちゃうわけですか?
施井:あぁ、なるほど。そういう疑問は当然ありますよね。ブロックチェーンを使う部分は、ちょっと図解をお見せしたほうが、一目瞭然で分かりやすいですね。
福田:そういう課金プラットフォームではないんですね。
施井:そうですね。ブロックチェーン自体は、脱中心的なものなので、こんな感じで。ブロックチェーンネットワークの中にスタートバーンが一つ付いているというサービスで、今後世界中のサービスが繋がりますよ、という形です。
施井:ブロックチェーンを使っている「ブロックチェーンネットワーク」っていうのが、「スタートバーン」に付いているサービスで、今後、世界中のサービスがこれにつながっていきますよっていう感じですね。
福田:ということはこの「アート・ブロックチェーン・ネットワーク(ABN)」自体はオープンなわけですね。
施井:そうです。直近1~3年ぐらいはどうしても僕らが管理しないといけないんですけど、最終的には僕らがつぶれても、半永久的に残るしくみを目指します。
福田:そのためには、どうしたらいいんでしょうね。「このしくみを使ったら便利ですよ」「同じようなものを作る意味はないですよ」って啓蒙してかなきゃいけないですよね。
施井:そうですね。よく言われるのが、「ここに大手の人たちが入ってこないと意味ないよね」と。なので大手の人が入って来てもいいように、基本的に僕らのAPIを介さなくても、直につなげられるようにしておいて。勝手にビジネスができるようにはしようと思っています。実際、連携するところはもう決まっていて。
福田:すごいですね。大手会計事務所のデロイトもいるんですね。
施井:やってみると、皆さん意外にお声を掛けてくださって。デロイトさんってクリスティーズと19世紀とから一緒に成長した会社なんです。他にもいろんな会社と話を進めていますが、色んな会社と一緒にやったり、のちにはワードプレスとかのプラグインもできるようにしておいて、世の中全員が証明書を発行できるようなサービスにして、つなぐ。で、ここで登録して買ったものを、もう一回IDを読み込んで証明書を呼び出して、ここで二次販売できたり、融資のサービスとか、他のアート関連のサービスと繋げられるようにしたりする予定です。
福田:自分で考えついたプラットフォームをオープンにするっていうのは、スタートバーンに出資した人からするとどうなんだっていう、凡庸な質問も来ますか?
施井:そうなんですよね。でも僕、Facebook や Google のような時代の象徴的な会社は、技術の最適解をうまい具合に作ったところだと思っているんです。そういう意味ではブロックチェーンって脱中心なのに、そこで中央集権的なプラットフォーム化すると最適解ではなくなってしまって、広がりを持たないのではないかと思う。で、ここは頭からいくしかない。フリーミアムも結局、最初に突っ込んでいった人たちが成功しているので、ブロックチェーンもこの技術を信じてやっていけば、きっと何かあるだろうと。今、ブロックチェーンは技術者がほとんどいないので、共同開発で開発費をいただいたり。
福田:大きい企業はともかく、小さな企業では開発もできないでしょうし、売る力がないですもんね。アフィリエーションで増やす手法もあるけども、ちゃんとシステム開発で成り立つと面白いですね。