アートが変える新元号の社会(後篇)
主催:学校法人トキワ松学園 横浜美術大学
日時:2019年3月18日
場所:横浜美術大学
構成:井尾 淳子
撮影:越間 有紀子
福田 淳氏
ブランド コンサルタント。1965年、大阪生まれ。日本大学芸術学部卒業。 ソニー・デジタルエンタテインメント創業者。 横浜美術大学 客員教授、金沢工業大学院 客員教授。 1998年、ソニー・ピクチャーズエンタテインメント社 バイスプレジデントとして、衛星放送「アニマックス」「AXN」 などの立ち上げに関わる。 NPO法人「タイガーマスク基金」の発起人をはじめ、 文化庁、経済産 業省、総務省などの委員を歴任。 2017年、カルティエ提供「チェンジメーカー・ オブ・ザ・イヤー2016」を受賞(日経BP)。近著に『SNSで儲けようと思ってないですよね?世の中を動かすSNSのバズり方』(小学館)がある。
イノベーションによって失われた仕事
これからさらにAIが進化すれば、人の仕事はすべて奪われるんじゃないかと不安を煽られがちですが、先ほどの農業従事者の現象も、多くは長い時間をかけてシフトしていきました。インターネットの時代だから、その頃よりは仕事がなくなるスピードももう少し早いかもしれませんが、急激には起きないわけで、まだ考える時間があります。
こちらの図は、過去にはあって、なくなった仕事の一部です。これはちょっと面白いですよ。
それぞれ何の職業か分かりますか? 工場に一段高い台があって、そこに人が座って何かを読み上げているんですけども、これは労働者が単純作業に飽きないように、その日のニュースを読んでるんです。当時はそういう職業があったんですね。
中央は、当時ヨーロッパですごく流行った職業だったらしいんですけども、ご存じですか。男の人が棒で高い窓をコンコン突いているんですけど。これは僕も今回の講演前に初めて知ったんですけどね。これは目覚まし時計が開発される前に、「朝、何時に起こしてくれ」っていうアラームサービスなんですよ。そう考えると、目覚まし時計というのは非常に大きなイノベーションだったことが読み取れますよね。
右は皆さんもよくご存知のとおり、電話交換手です。ハリウッド映画の初期の映画では憧れの商売で、僕らの時代でいうところの、スチュワーデスさんのような存在だったんですね。 こうして見ていくと、「AIが仕事奪う」と今はあちこちで言いますけども、「そいえば、あんな仕事あったよね」っていう仕事に、自分たちが従事している可能性は大いにありますからね。そういう視点で見ると、仕事っていうのはその時代時代、ライブで対応していかなきゃいけないなと思いませんか。
結局、人類の進化の中ではっきりといえることは、「余暇を作ってきた」ということなんです。『はじめ人間ギャートルズ』のときは、工場もインターネットも無くても生きていけたのかもしれません。でも、人間は楽をしたいんでしょうね。そしてもしもの時のために備えておきたい。原始時代に体調壊して寝込んだら、食べる物がないんですから。そういうことでいうと、人類の歴史は、「暇を作る」「余暇を作る」ということの繰り返しなのかもしれませんね。尊敬する先輩であるデジタルメディア研究所の橘川幸夫さんも、自著『暇つぶしの時代-さよなら競争社会』(平凡社)で書いておられます。