沖縄離島「世捨て人」として生きた"じょうぐちはるお"の人生哲学。

沖縄離島「世捨て人」として生きた
"じょうぐちはるお"の人生哲学。

語り:福田淳
編集・構成:井尾淳子

「人生の捨て方」とは何か

沖縄の離島・宮城島で45年間たったひとりで暮らし、年金も、生活保護も受給せず、一切のお金を使わずに生きた男がいる。
「仙人」と呼ばれたその人は、じょうぐち はるおさんという。その存在を知り、彼を訪ねた人たちからは、「ジョージさん」の愛称で知られた(以下、敬称略)。
コロナ禍となった2020年春から、私は東京と沖縄の二拠点生活をスタート。リゾート開発と農業の事業に着手したためである。そこで、カヤックの仕事をしている沖縄の若い友人・ノーリーを通じて、私はジョージの存在を知ることとなった。
「ぜひ会いたい」と思った。しかし、それが叶うはずだった2020年夏、ジョージは75歳(推定)の生涯を閉じた。会う予定の3週間前の出来事だった。戸籍も何もないジョージは、生前から希望していた通り、宮城島で亡くなった。彼は砂となり、大地に戻ったのだ。

多くの人は、経済的な豊かさと安定を求め、リアルでもSNSでも承認欲求を渇望して日々を生きている。みんな、何かを「得る」ために生きていると思う。けれどジョージの人生はそれとは真逆だった。ある時を境に、すべてを「捨てる」ために彼は生きたのだ。目の前にある現実を、そして自分の運命を、ただそのまま受け止めて生き抜いた人は、今、どれほどいるのだろうか。

私たちは、世界中を強制終了させた新型コロナウイルスの猛威を体験して、これからの再起動を模索する只中にいる。みんな一度立ち止まり、「これから自分は、どう生きていこう」と、みずからの生き方を改めて考えたはずである。そんな私たちにとって、ジョージの潔い「人生の捨て方」には、必要な学びがたくさんあるように感じた。
そこで、数年前にジョージと出会い、意気投合し、何度も対話を重ねたという、前述の友人・ノーリーから聴いた貴重な話を、この機会にぜひ、みなさんにお届けしたいと思う。

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