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何もないけど「全部ある」

沖縄離島「世捨て人」として生きた"じょうぐちはるお"の人生哲学。

「そういえば、ジョージさんと話しただけで、腰痛が治った」って言うおばあちゃんが一人いたんです」と聞いて、ノーリーと爆笑した。
「普通の人たちが、人生の中でいろいろと抱えてしまっているものを全く持っていない、ジョージさんみたいな人と出会って、話して、“あぁ、こういう生き方もあるんだ”って思った時に、たぶんふっと、何かが緩んだんだと思うんですよね。実際、オレにもそういう感覚がありました。今思えばジョージさんに会って、こころの中で何か開けたものが確かにあった。自分もいろいろと抱えていたんだなと思いました」

ノーリーがジョージに最後に会ったのは、2020年の4月だった。
「最後に会った時はもうずっと寝ていて。“一日の7割は、もうこんな感じだよ”って。外に出た時、木の実が落ちてきたらそれを食べるくらいで、食事を摂ることも、自分からは積極的にしない状態になっていました」
ただ、全世界に新型コロナウイルスが蔓延していることは知っていたという。
「おそらく、ジョージさんに会いに来た人が教えたんだと思います。オレには、 “川の水を飲みなさい”って言ってくれました。免疫力が上がるからって。今はみんな、消毒されきった水ばかりずっと飲んでいるから、身体に抵抗力がつかないんだ、と」 ノーリーは続ける。
「腰の痛みがとれたおばあちゃんの話をしましたけど、オレもジョージさんに会うと、“考え方の肩こり”みたいなものがなくなる、そんな感覚があったからわかるんです。オレはジョージさんに何を求めて会いに行っていたのかなと考えると、安心感みたいなものでした。ジョージさんが暮らす場所は、何もないのに、行くと安心するんですよ。ないけど、でも全部ある、という状態になるから。ビーチに寝そべって、波が自分の体にかかってきて。それだけでもう、とんでもない満足感なんです」

「何もないことが全部」。One is All(一つはすべて)というのは、まさに、禅の教えと一緒じゃないか。冒頭に書いたけれど、何かを得ようとして生きるから、みんな不安になって、失うことが怖くなる。けれど、小さなことでいいから、これからは「捨てていく」方向を意識すれば、失うことの怖さから抜け出せるのかもしれないと思った。

最後に、テレビ番組の取材を受けた際、「最終的にはどうなりたいのか?」と撮影クルーに尋ねられた時のジョージの言葉を引用して終わりたいと思う。

「どうにもならん。ただ人間が自然界と一体化して終わる。母親が生まれた島でうちは終わろう」

(了)

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