“泥船”の出版をどう変える? 元ベストセラー作家が目指す「印税率5割」革命とは(後編)

“泥船”の出版をどう変える? 
元ベストセラー作家が目指す
「印税率5割」革命とは(後編)

編集・構成:井尾淳子
撮影:越間 有紀子
日程:2022年7月12日

田中 泰延(写真/左)

1969年大阪生まれ。早稲田大学卒業後、 株式会社 電通でコピーライターとして24年間勤務ののち退職、 2017年から「青年失業家」を名乗り、ライターとして活動を始める。
2019年、初の著書『読みたいことを、書けばいい。』(ダイヤモンド社)を上梓。
Amazon和書総合ベストセラー1位を記録し、16万部突破のベストセラーとなる。
2021年、著作第二弾となる『会って、話すこと。』(ダイヤモンド社)を刊行。 2020年、「本を書く人が、生活できる社会へ。」を掲げる出版社 「ひろのぶと株式会社」を創業。
公式サイト:
https://hironobu.co
ツイッター
@hirononutnk

福田 淳(写真/右)

連続起業家
1965年、大阪生まれ。日本大学芸術学部卒業。
ソニー・デジタルエンタテインメント創業者
横浜美術大学 客員教授、金沢工業大学大学院 客員教授。
女優”のん”などタレントエージェント、ロサンゼルスを拠点としたアートギャラリー運営、バケーションレンタル事業、沖縄でリゾートホテル運営、大規模ファーム展開、エストニア発のデジタルコンテンツ開発、スタートアップ投資など活動は多岐にわたる。 自社の所属アーティストとは、日本の芸能界にはなかった「米国型エージェント契約」を導入したことでも話題を呼んだ。
1998年、ソニー・ピクチャーズエンタテインメント社 バイス・プレジデントとして、衛星放送「アニマックス」「AXN」 などの立ち上げに関わる。
カルティエ「チェンジメーカー・オブ・ザ・イヤー」受賞 (2016年)
ワーナー・ブラザース「BEST MARKETER OF THE YEAR」3年連続受賞 (2012-14年)
日経ウェブ「21世紀をよむITキーパーソン51人の1人」選出 (2001年)
文化庁 「コンテンツ調査会」委員
経済産業省 「情報大航海時代考える研究会」委員
総務省 「メディア・ソフト研究会」委員
著書
『ストリート系都市2022』(高陵社書店)
『スイスイ生きるコロナ時代』(髙陵社書店) 共著 坂井直樹氏
『パラダイムシフトできてる?』(スピーディ出版)
『SNSで儲かるなんて思ってないですよね?』(小学館)
『これでいいのだ14歳。』(講談社)
『町の声はウソ』(サテマガ)

(株)スピーディ 代表取締役社長
Speedy Gallery Inc. (CA, U.S.) - President
Speedy Euro OU - President

NPO「アシャンテママ」 代表理事
NPO「ファザリング・ジャパン」監事

公式サイト:
http://AtsushiFukuda.com
YouTube対談動画
https://www.youtube.com/channel/UC3oCfveGQgT2Lpx27O9NDIw

読みたいものを、書けばいい

福田:言ってみればEコマース屋だったベゾスが、ワシントンポストを買ったり、テスラのイーロン・マスクもツイッターを買うわけですよね。ツイッターも、出版の延長線じゃないですか。だからやはりみんな、出版のような「言葉を使ったコミュニケーションツール」のほうに、関心が向かっていますよね。だから出版社はもう出版社とは思わずに、「コミュニケーションメディア」と思って展開していくと、おそらく印税率も、ネット企業のやるプラットフォーム5050の取り分になるんじゃないでしょうか。 僕がなぜ出版を選んだかと言うと、21世紀の編集者の立場を変えたかった。著者も「先生」とか偉く無いです。むしろ編集者と著者は議論可能なお友達であるべきかなと思ったんです。それがうまくいったのが、たまたまYou Tubeであって、SNSであったのです。。だから新しい出版も、ネット時代に合わせた構造変革をするべきじゃないか。田中さんが始められたのは、おそらくそういうことだろうなと思っています。

田中:全く同感です。実は僕の最初の著書がまさしく、『読みたいことを、書けばいい。』というタイトルでした。「電通を辞めてこういうこと書くやつはなんなんだ?」 と言われましたけど、「読者が読みたいことを書けば儲かる」ということに対するアンチテーゼで、「自分が読みたいことを書けば、たまたま読みたい人が他にもいたら、それは生活になる」ということなんです。

福田:それはむちゃくちゃ、新しい視点だと思います。だってみんな、「他人の知りたいことを書いている」だけでしょ? だから視点が180度まるで違うんですよ。文春砲を見たって何したって、さっきの話の「標準化された皆んなの欲望」に答えているだけだから、ちっとも心の奥に深くは触れないんですよね。

田中:それは、僕が電通に24年もいた反動もあると思います。例えば会議で、「みんなはどんなビールが飲みたいか」とかってやるんですよ。でも「そんなん、みんなバラバラやろ!」って僕は言いたい(笑)

福田:ターゲットを決めたいからですよね(笑)

田中:そう、「セグメントはここです」みたいな。でもそれをやっていくと、みんなが好きなビールなんて実はないのに、「じゃあ女性のためのビールにしよう」「そして、夜のビールにしよう」「さらに風呂上がりのビールもいいね」ってなる。よく考えたら、女性の、夜の、風呂上がりの生ビールって、ものすごい狭くなってるじゃないですか(笑)

福田:そこは関西人としては、論破したくなる状況ですよね。

田中:そう、文句言いたくなるんですよ。だから、「いやいや、オレが飲みたいビールでええんちゃう」って。これがみんなにもウケたら売れるし、でも売れなくても、「オレが飲みたいビールができたらよかったな」っていう。そこですよね。

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