中国テックビジネスのスペシャリストに聞くAI+アナログの最適解とは?(後編)

中国テックビジネスのスペシャリストに聞くAI+アナログの最適解とは?(後編)

編集・構成:井尾淳子
撮影:越間 有紀子
日程:2023年7月7日 

成嶋 祐介(写真/右)

一般社団法人深セン市越境EC協会日本支部代表理事、一般社団法人深セン市越境EC協会日本支部代表理事。世界の最先端企業1800社とのネットワークを持つ中国テックビジネスのスペシャリスト。中央大学、茨城大学講師などを歴任。 慶應義塾大学法学部法律学科卒業。株式会社成島代表取締役。2019年から深セン市政府公認の深セン市越境EC協会日本支部の代表理事を勤める。全世界の中小企業をつなげることを目指し、情報テクノロジー、通販分野にて日本と中国の橋渡しを行い、世界規模のグローバルECの開発に向けて活動をしている。

福田 淳(写真/左)

連続起業家
1965年、大阪生まれ。日本大学芸術学部卒業。
ソニー・デジタルエンタテインメント創業者
横浜美術大学 客員教授、金沢工業大学大学院 客員教授。
女優”のん”などタレントエージェント、ロサンゼルスを拠点としたアートギャラリー運営、バケーションレンタル事業、沖縄でリゾートホテル運営、大規模ファーム展開、エストニア発のデジタルコンテンツ開発、スタートアップ投資など活動は多岐にわたる。 自社の所属アーティストとは、日本の芸能界にはなかった「米国型エージェント契約」を導入したことでも話題を呼んだ。
1998年、ソニー・ピクチャーズエンタテインメント社 バイス・プレジデントとして、衛星放送「アニマックス」「AXN」 などの立ち上げに関わる。
カルティエ「チェンジメーカー・オブ・ザ・イヤー」受賞 (2016年)
ワーナー・ブラザース「BEST MARKETER OF THE YEAR」3年連続受賞 (2012-14年)
日経ウェブ「21世紀をよむITキーパーソン51人の1人」選出 (2001年)
文化庁 「コンテンツ調査会」委員
経済産業省 「情報大航海時代考える研究会」委員
総務省 「メディア・ソフト研究会」委員
著書
『ストリート系都市2022』(高陵社書店)
『スイスイ生きるコロナ時代』(髙陵社書店) 共著 坂井直樹氏
『パラダイムシフトできてる?』(スピーディ出版)
『SNSで儲かるなんて思ってないですよね?』(小学館)
『これでいいのだ14歳。』(講談社)
『町の声はウソ』(サテマガ)

(株)スピーディ 代表取締役社長
Speedy Gallery Inc. (CA, U.S.) - President
Speedy Euro OU - President

NPO「アシャンテママ」 代表理事
NPO「ファザリング・ジャパン」監事
公式サイト:
http://AtsushiFukuda.com
YouTube対談動画
https://www.youtube.com/channel/UC3oCfveGQgT2Lpx27O9NDIw

アジアの「むき出し」の熱量に学ぶ

福田:人形を販売されていることと、eコマースが全く連続した話だということが、お話を聞いてわかってきました。 成嶋さんのお名刺だけ見ると、全部違う仕事に見えるけども、ご自身の中では全く連続した動きになっている。違和感ないでしょうね。何か政府の委員をされていたとしてもね。

成嶋:ああ、さすがです。結局、やっていることは個人的には同じことをやっていると思っていまして。

福田:それで各所からお声がかかるのが素晴らしいですよね。で、成嶋さんの、お人形屋さんの跡を継いだときから今現在までの、その合間のことをお聞きたいんですけども。節句人形専門店からはみ出るようなご活躍は、もうどれぐらいから始まっておられるんですか? 

成嶋:コロナぐらいからですね。その前からも、ちょこちょこはやっているんですけど……。

福田:最近じゃないですか。

成嶋:はい。コロナでいろいろなことが止まったので、「何をしようかな」と思って。まず、先述のビジネスパートナーと一緒に、2カ月後には漫画の『ONE PIECE』の主人公のルフィーをモチーフにしたマスクイヤーガードを小学館さんとCSRで作らせていただきました。無料配布ならいい、ということで。子ども向けで対象年齢が低いので、シリコンや着色ができないから3Dプリンターで出して。要は、子どもたちはマスクをつけるとひもが痛いから、つけたくないわけですよね。そこを少しでもつけたくなるようなものを作るとか、そういうのをどんどんローンチしていました。

福田:「人形屋ホンポ」では人形を作るとき、最初に3Dプリンターやレーザーカッターを使って試作品をつくると記事で拝見しました。でも、技術はともあれ、その『ONE PIECE』のマスクをつくるなんて、普通の人は思いついてもなかなかできないですよね。アニメの版権問題をクリアするのはなかなかハードルが高いし。そういうアイデアを実装し切るというのは、どういうお力なんでしょう?

成嶋:そうですね…。『ONE PIECE』のマスクは、「こういうのをやりたいね」となって、「うわー、いいね」となって仲間3人ぐらいからで集まって、4カ月ぐらいで実装して終わったんですよね。

福田:すごいな……。それ、なかなかできないですよ。

成嶋:なぜできないのか……。そうですね、例えばたぶん、今、みなさんは、あまり遊びに行っていないんですよね。

福田:それはそうですね。

成嶋:私なんかもう、脇道、脇道の最たるもので。「このレールがあって、このレールがあって、ここからは落ちても大丈夫だよ」というようなことを分かっていたほうがいいなと思っていて。……どこに裏道があるのか確かめておこうというか、私はちょっと、最初からおかしな見方をするんですよね。やはりそれは楽しいですし、わちゃわちゃしているし。東南アジアとか、ああいう国に行くと、なんだか分からないけどパワーがあるじゃないですか。 街は全然きれいじゃないし、なんかどうなるか分からないんだけど、めちゃくちゃ熱気がある。一方でヨーロッパとかに行くと、文化は素晴らしいのですが、なんだか静かで整然としていて、元気はあまりないかなというのがあって。

福田:アジアの混沌はすごいですよね。僕が深センに行ったのは2019年、コロナの数カ月前だったんです。夜中に着いて食事に行こうとなったとき、「オバマ大統領の弟がやっているバーベキュー屋があるから」って勧められたんですよ。(オバマに弟いたっけな……)とか、もうろうとした頭で連れて行かれて。そうしたらテーブルにQRがあって、2019年ぐらいでも珍しく感じたんですけど、お金の割り勘もWeChatアプリで全部できて、それでも結構新鮮だったんですよね。で、そのオバマの弟らしい人が看板になっているんですけど、もちろん店にはそんな人いないんですよね(笑)。なんでオバマの弟が深センで店やってなきゃいけないんだ?と。でも、そのむき出しの「どうだ!」という、悪びれていないあの感じが、ストリート系でいいなと熱量を感じましたね。

成嶋:分かります。で、「アイデアを実装しきるのはどうして」というご質問ですけども、そういうむき出しの中から、ちゃんとしたものが出てくると私は思うんですよ。最初は荒っぽいんですけど、そのわちゃわちゃして、ガチャガチャやっている中から、やはり夢中になっているものが現れて、数年するとそこが種になっておもしろいものが生まれてくるな、と。4~5年前に深セン行ったときも、ハーバードから帰ってきた25、26歳の青年がいて、そこで3人ぐらいが集まっていたんですね。で、彼らが「よし、会社やろう」となったんです。で、「5年後に上場だ」「明日から無休で、オレんちでやるぞ」「寝ないでやるぞ」ってシュプレヒコール上げて。それ見たときに「もうこれ勝てないな」と。しかも絶対楽しいじゃんと思って。

福田:いや、そうですよね。

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