元ジャパネットたかた人気MCが語る配信時代に問われる「伝えて、売る」技術(後編)
編集・構成:井尾淳子
撮影:越間 有紀子
日程:2023年9月12日
馬場 雄二(写真/右)
1966年鹿児島県生まれ。1989年九州大学法学部卒業と同時に(株)鹿児島放送入社。報道部に配属され、夕方のニュース番組『KKBスーパーJチャンネル』キャスターや報道デスクを歴任。
その間、テレビ朝日系列『テレメンタリー』を担当し全国ネットのドキュメンタリーでディレクターも数多く手掛けた。
2013年大手通販会社(株)ジャパネットたかたに転職。テレビショッピングMCとして6年間、高田明・前社長の直接指導を受け、その後ラジオショッピングMCとして4年間販売の第一線を経験した。その経験を元に2023年独立。自前のライブコマースチャンネルを立ち上げ全国の魅力的な商品を発掘し販売する活動をスタート。
福田 淳(写真/左)
連続起業家
株式会社スピーディ 代表取締役社長
Speedy Gallery, Inc. CEO(カリフォルニア州)
Speedy Euro OU - President (ヨーロッパ)
株式会社オッドナンバー 社外取締役
横浜美術大学 客員教授/金沢工業大学コンテンツ&テクノロジー融合研究所客員教授
多岐にわたる企業の経営を行う。任されてきた企業を全てにおいて黒字化
出版事業・タレントエージェント・ロサンゼルスアートギャラリー運営・カリフォルニ
ア全域と沖縄でリゾート施設展開・無農薬農場開発・スタートアップ投資など
2018年3月 株式会社スピーディ 代表取締役社長
2007年4月 株式会社ソニー・デジタルエンタテインメント 代表取締役社長
2001年1月 株式会社ソニー・ピクチャーズエンタテインメント バイスプレジデント
受賞歴:
カルティエ「チェンジメーカー・オブ・ザ・イヤー」受賞 (2016年)
ワーナー・ブラザース「BEST MARKETER OF THE YEAR」3年連続受賞 (2012-14年)
日経ウェブ「21世紀をよむITキーパーソン51人の1人」選出 (2001年)
文化庁 「コンテンツ調査会」委員
経済産業省 「情報大航海時代考える研究会」委員
著書
『ストリート系都市2022』(高陵社書店)
『スイスイ生きるコロナ時代』(髙陵社書店) 共著 坂井直樹氏
『パラダイムシフトできてる?』(スピーディ出版)
『SNSで儲かるなんて思ってないですよね?』(小学館)
『これでいいのだ14歳。』(講談社)
『町の声はウソ』(サテマガ)
公式サイト:
http://AtsushiFukuda.com
YouTube対談動画
https://www.youtube.com/channel/UC3oCfveGQgT2Lpx27O9NDIw
自身のライブコマース「Babanet Channel」始動
福田:馬場さんらしいですよね。「仕事だからやってよ」っていうことではなく、「ああ、これはちゃんとおいしいマンゴーだ」とか、「こうやって育てられているからなんだ」っていうところを理解したうえでやらないと、粗悪品をセールスの力だけで売るということになってしまう、ということですね。難しいなあ。
馬場:なので、この夏にジャパネットたかたを正式に退社いたしまして、現在はフリーランスで頑張っております。自分で立ち上げたBabanet ChannelというYouTubeのチャンネルと、そこで紹介した商品を購入するECサイトの運営を行っています。You Tubeではライブで、「今日ご紹介するこのカレー、実は食べるのは初めてです」と、正直に言うんですよ。で、「おいしくなかったら、概要欄から購入サイトに飛べますが、皆さん、買わないでください」とお伝えしました。「まず食べておいしいかどうかの判定をここで行います。私が本当においしいと思って、その反応を見ていただいて、食べたいと思われたら買ってくださいね」と。
福田:面白い。それはテレビショッピングでは、なかなかできなかったことですよね?
馬場:できなかったことです。テレビショッピングの場合はやはりバイヤーその他、何人もの人が関わって仕入れている商品なので、口が裂けても、「まずい」とは言えないわけです。でも私は今、個人でやっていますので。自分が食べてまずいと思ったものは「買わなくていいです」という姿勢です。 それで、たまたま食べたカレーが本当においしかったんですよ! スタジオにきてくださったゲストの方も食べて、「レトルトでこのクオリティはないね!」となって、そのカレー、バカ売れしました。鹿児島市の 焼酎居酒屋「和総」というお店のオリジナル商品で、牛すじを芋焼酎で炊いて、「さつま芋黒ビール」で煮込んだレトルトカレーです。Amazonにも、楽天にも売っていなくて、買えるのは「和総」の通販サイトとBabanet Channelのみです。じつはあまりにも売れたので、製造が追いついていないんですけども。
福田:えーと、あれですよね。編集的にはここにテロップが入るところですね(笑)読者のみなさん、チャンネル登録してくださーい。
馬場:よろしくお願いしまーす(笑)
福田:もうエキサイティングなことしかないですね。今はYouTubeだけですか?
馬場:今はYouTubeとFacebookなどですが、これから徐々にInstagramとかLINE、TikTokなど徐々に上げていきたいと思っています。
福田:我々のバブル世代はこれまでたくさん働いて、たくさん遊んできたわけなんですけど、やっぱり老いとの戦いみたいなものも多少感じる年代じゃないですか。僕はたまたま仕事上、インターネットやデジタルの分野をずっとやり続けてきたので「最先端感」みたいなものは持っていると自負しています。同級生にも「遅れてんなあ。Instagram使ってないじゃん!」なんて言いながらこの21世紀を過ごしてきたんですけど。そういう中で例えば深夜に通販番組を見て、「誰が今さらこの掃除機を買うんだろう?」なんて思っていても、3千億近い売り上げがあるような会社が出ているということは、「最先端だけが生きる道じゃないのかな」とも感じたり。一方で、馬場さんが大手を辞めて独立されたということは、やはり狙いは若い人も取り込んでいこう、というのはあるんでしょうか。
馬場:なぜ私が新しいライブコマースの分野にいこうと思ったかと言いますと、じつはジャパネットたかたでも、ライブコマースをやっていたんです。私のほか、タレントさん3人と。一時期、ライブコマースに真剣に取り組んだ時期があったんですよ。ところがジャパネットたかたは、「ライブコマースからはもう手を引く」と判断したんです。
福田:えー! それもすごいですね。
馬場:今までのテレビショッピング、ラジオショッピング、カタログショッピング、インターネット。この4つの分野で頑張ると。最近はBSという新しいチャンネルもできましたけど、それで頑張っていくというふうに言われたので「え、未来あるライブコマースをやらないんですか!?」と。じゃあ、自分がやろうかなと思ったのが2年前の話です。