ニューメディアが拓く面白人生!
【中編】
日時:2016年6月15日(水)
場所:慶應義塾大学 メディアコミュニケーション研究所
福田 淳氏
ソニー・デジタル エンタテインメント 社長
1965年生まれ。日本大学芸術学部卒。アニメ専門チャンネル「アニマックス」など多数のニューメディア立ち上げに関わる。(株)ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント バイス・プレジデントを経て現職。
構成: 福田千鶴子 撮影:越間有紀子
>>前編はこちら
ニューメディアが拓く面白人生!【前編】
11.その商品やサービスは本当に世の中に必要?
うちの会社は社員には、「みんながアイデアマンである」のが理想だと常々言っています。 例えば、あるお店がオープンすることになり「なんかにぎやかしてください」という依頼が来たとします。古いタイプの広告代理店だったら、「あのタレント呼びましょう」とか、「こういう記念品を配りましょう」とかそのお店を舞台にした仕掛けを提案しますよね。でも、うちの場合は、にぎやかしの場所そのものを、LINEだとかInstagramだとかソーシャルメディア化させるんです。ネットでシェアされるうちに、一店舗だった「点」がバーチャル上「面」になる。その結果、費用対効果もよくなるし、話題もつくれるわけです。だから、アイデア、発想力が求められるんですね。
企業が新しい商品を出すとき、テレビスポット打って、売り場面積とれば、それだけで商品が売れたのは20世紀までの話なんです。もちろんまだテレビはメディアとして強いとは思うんですけど、今はネットメディアもあります。これをどう活用すれば商品が売れるのか?ということも考えていかなければいけない。そんなときに、「うちの会社はネットに詳しいんで、アイデア出しますよ」といろいろな提案をしています。大切にしているのは「その商品やサービスは本当に世の中に必要なのか」という観点で物事を見ることですね。
12.「ソーシャルデザインカンパニー」として
アイデアで社会を良くする
例えば、サンタモニカに大きいナイキショップがあるんですけど、ただシューズを売っているだけではないんです。朝8時頃行くと、複数のプロのランナーが待ち構えているんです。お客様は、好きなコーチのチームに入り、みんなで一緒にビーチ沿いを走ることができるんですね。つまりナイキはダイレクトに靴を売るのではなく、ランニングのコミュニティーを通じて商品を訴求している。コミュニティーを通してランナーを増やせば、その人も新しいシューズも買ってくれるだろう、という発想なんです。つまり、体験を売ってるんですね。
このような発想のことを「ソーシャルデザイン」といいます。ソーシャルデザインは、世の中を良くするにはどうしたら良いのか?という発想が前提となっているんですね。ソニー・デジタルは、この考え方で交通広告やイベントを多数手がけています。交通広告では、2015年9月のディズニーランドのハロウィーンイベントとか、二子玉川にある蔦屋家電の売り場でのデジタルアートなど任せていただきました。イベントだと、今年の4月に新宿にオープンしたBEAMS JAPANでスモールプロジェクションマッピングもやらせていただきました。大きなプロジェクションマッピングは、2、3年前に東京駅などでやって話題になりましたよね。でも、見慣れてくるとそんな驚きがないんですよ。だから、常に逆転の発想が求められると思います。