ソーシャルデザイン入門
~「自分のため」から「社会のため」へ。多様化する価値観にどう伝えていくか~(後編)
主催:日本ファンドレイジング協会
構成:福田千津子
日程:2017年3月18日
並河 進氏(写真左)
1973年生まれ。電通ソーシャル・デザイン・エンジン代表。社会貢献と企業をつなぐソーシャル・プロジェクトを数多く手掛ける。ワールドシフト・ネットワーク・ジャパン・クリエーティブディレクター。東京工芸大学非常勤講師。受賞歴に、ACCシルバー、TCC新人賞、読売広告大賞など。著書に『下駄箱のラブレター』(ポプラ社)『しろくまくんどうして?』(朝日新聞出版)『ハッピーバースデイ 3.11』(飛鳥新社)『Social Design 社会をちょっとよくするプロジェクトのつくりかた』(木楽舎)ほか著書多数。
福田 淳氏(写真右)
ソニー・デジタル エンタテインメント 社長
1965年生まれ。日本大学芸術学部卒。アニメ専門チャンネル「アニマックス」など多数のニューメディア立ち上げに関わる。(株)ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント バイス・プレジデントを経て現職。
スマホが人生のリモコンになったことで起きるイノベーション
河内山: 今から対談をしていただこうと思います。お二人から伺ったのは、「概念を変え、寄付したくなるものをつくるため、新しい仕組みをデザインする」みたいな話だったわけですけど、iモードの時からITもすごく進んできているなかで、寄付したくなる仕組み、これからのソーシャルデザインはどうなっていくのでしょうか。
並河: ホームドアさんのアプリの話、すごい面白いですよね。というのも、広告会社でいろんな企業と「デジタルを使ってできること」みたいな話をすると、以前って、例えばダイレクトレスポンスみたいに、売り上げに直結するような提案がけっこう多かったんですが、最近少し変わってきていて、実はデジタルって、例えば、社会的な活動に共鳴する人が企業と一緒に何かすることに向いているんじゃないかという可能性を感じているんですけど、どうですかね、福田さん。
福田: 去年、Yahoo! ジャパン20周年でしたよね。インターネットが始まって20年ということで、何が変わったのか考えてみたんですけど、トラフィックでいきますと、圧倒的にPCからスマホになって、サーチ(検索)からシェア(共有)に流れが変わっていますよね。日本はiモードが発達したので、スマホが出たときも、「iモードの進化系」ととらえがちだったんですけど、世界的に見てみると、モバイルインターネットがこんな早く普及したのって、日本だけだったんですよ。震災を機に、スマホ化が進みましたが、欧米的にいうと、スマホって「パソコンを町に持ち出した」って位置づけじゃないかなと思います。で、それにより、インターネットが暮らしにすごい身近になったと思うんですよ。それがインフラ面での一番大きい変化で、悪い事例を挙げると、男の子がながらスマホして線路から落ちました、っていうのは、PCしかなかったときにはありえないわけですよね。それくらいもうバーチャルとリアルの世界が混在しちゃってる。いい例でいうと、さっきご紹介したように、おにぎり食べているところを写真撮って送るって行為は、世界中の人がスマホというカメラを持った状態で日々暮らしているということから起きるイノベーションなんです。インターネット革命は、ライフスタイルの中で、スマホが一つの道標というか、人生のリモコンというか、そういう存在になったから、いろんなアイデアをのせやすくなったんじゃないかと思います。
並河: 先日、あるクライアントと話している時に、例えば社会のためのこういうプロジェクトに興味ある人が、日本だけだとそこまで大きなパイじゃなくても、世界全体で見たら10万人いるとしたら、それは結構大きな市場にもなるかもしれない、という話になって。これまではその人たちをなかなかつなぐことできなかったけれど、今は簡単にできる。そこはすごく変わってきているなと思います。
福田: こないだ北欧のデザイン学校の生徒が同じようなことを言っていて、70年代ヒッピーもそうなんですけど、昔はその地域だけムーブメントで終わっていたのが、今はICTによってスモールコミュニティーがつながっていって、一つの大きなうねりをつくりグローバルネットワークにすることができる。これはやっぱり大きいですよね。
並河: そうですね。