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突破口になるのは、熱量と斬新さ

誰よりも早く、世界の未来図を知る  Talked.jp

小林:昔何かで読んだ本に「リムランド」と「ハートランド」という表現があったんです。「リムランド」というのは「周縁」ですね。端っこのほう。一方の「ハートランド」は、「センター」的な意味合いです。で、カルチャーというのはリムランド(周縁)で起きたことが次第にハートランド(センター)に来る、という話。トレンドもそうだと思います。昔は貴族の遊びだったものが、やがて大衆化する。だから先述のベルリンのようなエッジシティが気になる。ブロックチェーンにおいても、アメリカではブルックリンとか非常に盛んですけど、つい最近までベルリンは「クリプトキャピタル(暗号の首都)」と呼ばれて、プロトコル開発をしている人たちが世界中から集まってきています。それで「打倒GAFA」みたいな地勢図もあり、そこにシリコンバレーやサンフランシスコから来ているエンジニアたちとも会いました。
自著でも触れましたが、フィンテックは日本だと銀行主導の印象が強い気がします。欧州では規制緩和によって、銀行が振込や送金の命令に応じなくてはならず、ユーザーにとって利便性のあるサービスが銀行以外のIT企業によって多く立ち上げられました。名称としては、チャレンジャーバンクと呼ばれるものがそうです。それらがどんどん出てきて、欧州で成功したら次は米国や他の国へと進出しています。でも日本はどうしても法律の壁もあるし、なかなか手出しできないイメージはありますよね。僕は、アン・ボーデンという、イギリスのモバイル銀行『スターリングバンク』を立ち上げたアイルランドの銀行に勤めていた女性創業者の話を聞いた時に、めちゃくちゃ感動したんですよ。4年前に銀行を立ち上げて、どんなに苦労したかっていう話なんですけども。

福田:へぇ~! 面白そうですね!

小林:「銀行って立ち上げられるんだ!」と思って、すごい衝撃で、チャレンジャーバンクについていろいろ調べました。PSD2(欧州の決済サービスを規制する欧州連合指令)という規制緩和があった話とか。そうすると、みんなトラディショナル銀行を倒そうとして、ユーザー体験(UX)やフロントエンド・デザイン、あるいはコミュニケーションを設計する企業にもチャンスがあるわけで、もう勝負しているポイントが違うわけです。
今までは全然門外漢で、そういったフィンテックの話には加われないと思っていたけれども、いやいやもう完全にUXが命綱であり、それをどうデザインするのか、あるいはブランディングの話にも収斂するし、その意味でマーケティングも重要になってくる。フィンテックって今やもう、そこを支えている基幹技術よりも、「ユーザーをどう動かすか」の話なんですよね。そこのレイヤーっていうのは僕らがやってきた仕事なので、「もう全然、話に加わっていいじゃん!」というように、考え方がすごく変わったんですね。

福田:面白いですね。「じゃあもう銀行やっちゃおう」とか、先日小林さんがおっしゃっていた「アプリで国を作ろうぜ」とかいう発想力の元を考えると、教育の話にどうしてもなっちゃうんですけど。この同族性の強い日本の文化の中では、それはなかなか実現しにくいですよね。要は、イノベーターが生まれにくい? 自分の目指す方向について、自分だけで決めきれない空気みたいなものがあるじゃないですか。だから失敗しても再チャレンジを許してくれないし、すごい閉塞感がありますよね。で、いつまで経っても僕らの年代がイノベーターで居続けなければいけない国なんですよ。だけど1970年前後にそういう地殻変動があったみたいに、どこかで切れ目のようなことは、ちょいちょい起きる気はしているんですよね。
僕が北京の起業家を見ていて思うのは、ICTをうまくベースにしたリアルを再発見している、ということ。不正会計で株価急落してしまいましたけど、中国でスタバを抜いた「ラッキン コーヒー(瑞幸珈琲)」だって、そうだと思うんですよね。なんか、それがまた日本にも逆輸入すればいいなと思って。
で、そのためには、日本人が「中国に出稼ぎに行く」というような気持ちを持つことが大事かなって。そう言うと「何で?」って言われちゃうんですけどね。だから、それくらい中国のスピードがすごいことについて、お隣の国なのに、みんな全然気づいてない。もしかすると、中国じゃなくて、「エストニアって進んでるよ」って言ったほうが、日本人は関心を向けるのかなと思うんですけど……。でも「ラティチュード(Latitude)」(エストニアが主導するスタートアップを目指すビジネスマンのカンファレンス)とかに行ったりすると、日本人あまりいないんですよね。今はコロナ禍なので状況違いますけど、通常はわりと簡単に行けるんですけどね。

小林:そうですね。僕も自分が行くカンファレンスには日本人がほとんどいなくて。ベルリンで2019年に開催されたテクノロジーイベント「Web3 Summit」(分散型Webの実現を目的に、有名なイーサリアムCTOのギャビン・ウッドたちが立ち上げた組織Web3 foundationが主催したカンファレンス)には、日本人は4~5人くらいしかいなかったですね。それでも、内容を鑑みたら日本語での情報はほぼないため、数としては多いほうです。だからそこにいた日本人はやっぱりすごいエッジーで、掘り下げている人たちだったので、そういう人がいたことがすごく嬉しかったですね。

福田:前提が1人だけと思っているところを見つけてしまえるというのが、またすごいですよね。

小林「日本人、きっと自分だけだろうなぁ」みたいなところに行くのが、好きなんですよね(笑)

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