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「あの世」の描き方

ゴリさんと映画談義!沖縄と死生観。ITで解決できる映画業界の未来(前編)   Talked.jp

照屋:舞台となった粟国島は火葬場がないので、法律的にも洗骨が許されているんです。今、与那国島でも風習が残っているところが少しある、と聞きました。あと、鹿児島の与論島も。

福田:ええ~! そうなんですか。

照屋:でも粟国島も今では、フェリーやヘリでご遺体を那覇に運んで、火葬にする方がほとんどです。昔の風習を大事にしている人は、「自分の親を燃やすなんて」と言って、洗骨にこだわる方もまだおられますけども。

福田:映画の中に、「こちらから先は、あの世」というシーンがありますが、あれは本当にそういう場所なんですか。

照屋:本当にあの場所です。粟国島の、実際の場所をロケ地に使いました。なんてことない、ふつうの道なんですよ。地元の人はいつも車で行き来しています。つまり平気で、1日何回も、あの世に行ったりこの世に戻ったりするんです。

福田:(笑)

照屋:劇中、「あの世」に入るのが怖い登場人物がいて、ずっと手を引っ張られながら「もうあの世入った?」……「まだまだ」……「もうあの世入った?」……「まだまだ」……「もう入った?」……「もう入った」……「え? もうあの世なの?」……「そうそう、あの世ってこんなもんなのよ」……っていうセリフがあるんですけど、それが書けたのも、粟国島の人たちが「あの世」と「この世」に、あまり差をつけていなかったからです。 「あの世」って、もうその先にあるもんだよっていうふうに、僕は感じたんですね。だからああいうセリフが出てきた。「あの世」というものが怖いと感じないから、平気で行ったり来たりするし、でも同時に、「ここから向こうはあの世」ってちゃんと信じてもいる。日が沈む西側は死者が眠るところだということで、西側に住居は一切ないんですね。一方、日が昇る場所が、生きる人が住むべき場所。だから東側にしか集落がない。そういう考え方もすごく好きでした。

福田:面白いですね。

照屋:実際に、1本だけ残っていた洗骨の動画があったんです。幸運にも、それを特別に見せてもらう機会がありました。

福田:へえー!

照屋:でも、普通はちょっと怖いじゃないですか。棺桶からご遺体を、何年後かに開けてミイラを見るわけなので。……でも、動画を観ても全く怖くないんです。4年以上寝かすと、きれいに朽ちるんですよね。本当に黒ずんだ骨だけになっていて、着物もボロボロになっている。それを一生懸命……母親なのか父親なのか分からないですけど、子どもたちがずっと、頭蓋骨に手を突っ込んで、泣きながらしゃべりかけているんですよね。 頭を撫でるように、優しく1本1本、骨を洗っていくんです。肩の骨だったら、肩をさするように洗っていく。その動画はとても美しくて、何にもおどろおどろしさはなくて……。改めて、「あなたのおかげで命のバトンが今、私たちにつながっています」という、感謝を込めるように洗っていくんです。僕としては、「ああ、この題材にしてよかったな」と思ったというか……。なぜかと言うと、じつはもともとは違う内容の映画を撮る予定だったんです。

福田:そうだったんですか! それは本当に、すごいタイミングで貴重な映像をご覧になられましたね!

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