インタビュアー:吉井 勇
『月刊ニューメディア』編集長
関西弁の「けったいな人やなあ」というのが福田淳氏の印象だ。
映画配給の東北新社を経て、
1998年よりソニー・ピクチャーズ エンタテインメントでスカパー! 衛星放送「アニマックス」「AXN」をケーブルテレビ局に伝道
2004年に同社でデジタルネットワークス部門を設立。
2007年にソニーのベンチャーファンドで株式会社ソニー・デジタル エンタテインメント(SDE)を創業。ライセンスコンテンツ配信やキャラクター、コミックをはじめとするオリジナルコンテンツ制作、最近ではインバウンドメディアやバイラルムービー、企業のソーシャルマーケティングなどで独自の存在感を示す。その熱さで人を引き込み、その気にさせていく。デジタルコンテンツ業界で10年以上の経験から話題のコンテンツを連発する福田氏に、オールデジタルのコンテンツ論を聞いた。
(文:吉井 勇、イラスト:石津千恵子)
福田 淳 氏
実業家。ソニー・デジタル エンタテインメント 社長。
1965年生まれ、日本大学芸術学部卒。ソニー・ピクチャーズ エンタテインメントでアニメチャンネル「アニマックス」など多数のニューメディア立ち上げに関わる。
新「パブリックとパーソナル」メディア論(福田 淳 氏 インタビュー) | Talked.jp
「人の行く裏に道あり花の山」から「イケルイケル!」理論へ
── メディアのマーケットのとらえ方、経営リーダー論がいろいろと言われています。福田氏はそのあたりをどうお考えですか。
福田:「人をワクワクさせるものを考えよう」とか言いますが、そんなものはそう簡単にはありません。結果論だからです。特にリーダーシップのある方と接すると、その判断には理屈ではない何かを感じます。「これでいいのだ」ではありませんが、直感で決断できることがすごい。それをボク流に言えば「イケルイケル!」理論なのです。「イケル!」という 決断は経営リーダーであり、プロの領域です。アマチュアはいつまでたっても決められません。
── そう言って社員にハッパをかける!? のですか(笑)。
福田:弊社設立時に顧問をお願いした週刊少年マガジン3代目の編集長をされた内田勝氏がよく「人の行く裏に道あり花の山」と名もなき投資家の哲学を話されていました。脇道を楽しむ、大人の遊びにも通じる面白さを知りました。正面からイケる!ことと、同時に本筋からそれることも含めてボクは全方位から「イケルイケル」と考えるようスタッフに言い聞かせています。
「プラットフォーム事業を目指せ」この発想は大間違い
福田:LINE やFacebook、Twitter などのSNS やチャットのプラットフォームですが、最大の弱点は自分でコンテンツをあまり作っていないことです。プラットフォーム自体をビジネスモデルとして目指すことは、間違いではないですが、過去の歴史を見てもあまり長持ちしない。 私がねらうべきは、新しい器(メディア・プラットフォーム)に見合ったコンテンツを生み出すこと、「調理マーケティング」の発想です。 テレビはコンテンツを作っている業界ですが、「ライブ感」がなくなってきていると思っています。ライブラリーだけでビジネスしようとしたら、それは過去の遺産にすぎず、ライブ感覚を失っていくことになります。
── ライブ感と言えばSNS のリアルタイム性です。
福田:メディア感覚で言えば、「昼に何を食べた」とか、「イベントに行った」とかの情報アップは、その人にとってのライブ・コンテンツなんです。