とことん研ぎ澄ますことの大切さ
福田:「向源」とは別に青江さんが力をいれていらっしゃるのが、食との関わりです。
今度は、食の話しをお聞きしたいと思います。
先日あるウェブの記事を読みました。
土岐山協子さんって田舎で高校教師をやっていた42歳の方の記事です。
生徒があいさつもできなきゃ、何もかもなってなかったと。なので、自分が部活のコーチになって礼儀作法だけずっと守らせているうちに、割とそのチームがよくなったっていうんです。それから、よく子供たちを観察していたら、駄目な子どもていうのは、二つの要因しかないと。一つはお母さんがだらしない。お父さんは正直どっちでもいいんですって、そもそもの接触時間が短すぎるので。
もう一つは、ちゃんとした料理を食べてるかどうかだと。ほとんど食べ物で人間は構成されてるんで、それが子供の人間性に非常に重大に影響を与えていることに気付いた。
それでその方、最終的に出汁の研究家になったんですよ(笑)
青江さんの本の中の帯に「丁寧に作り、丁寧に頂く生活で、心と体を整える。」と書いてあります。これ本当に大事ですよね。
青江:聞いた話でなんですど、禅宗の修行道場っていうのは一切音を立ててはいけないんです、食事中。だから食べるときにはモグモグって音を出すのはもちろん、私語もしてはいけません。器も、両手で扱って丁寧に扱えば音が立たなくなる。そうやって考えていくと、どんどん物事を丁寧に扱って真剣に食べていくことになる。すると、一般の人からは、「そんなことをして美味しいんですか」って言われてしまうのですが。でもそのぐらい研ぎ澄ましていくと、美味しいんだそうです。なぜならば、全部を丁寧に扱うと、もう両手で扱わざるを得なくなる。両手で扱うっていうことは、お茶碗を持ったまま箸を置くとか、お箸で何かをとりながら湯のみを寄せるとか、そういうことができなくなるんですね。そうすると料理だけに集中するので、この料理はこうなんだっていうのが、じかに味わいとして出てくると。毎日同じように炊いてるご飯でも、きょうのご飯はこういう感じだ、きょうのご飯は昨日よりやわらかい、香りがいいとかっていうのが分かるようになってくる。
福田:面白いですね。ハンバーガー片手に歩いて食ってるようじゃ駄目ですね(笑)
青江:やっぱり、情報は少なければ少ないほど、じかにインプットされるんですよね。さっきお寺入ったときに、福田さんが「余計な物が何もない」っておっしゃったんですけど、情報が少ないが故に、もしゴミ1個あったら気が付くんですよ。でも散らかった部屋だったら、例えば今、ここにゴミじゃなくて本が1冊増えても気付かないかもしれないですよね。情報がミニマムな状態であれば、1冊増えただけでも気が付く。今はこれを読むんだって分かるんです。
福田:プレゼンテーション能力は、マーケッターとして本当に大事ですよね。
食に関してもそうなんだっていうのがよく分かりました。確かに、片手でやっていろいろやりながらだと美味しいものもおいしくいただけない、そういうのが丁寧に食べるっていうことなんですね。面白いですね。