新しいハードウエアに対して新しいコンテンツサービスを作っていく
B-:アミューズメント施設と、先ほどおっしゃっていた不動産みたいな、ある程度お金が回るような業界からまずは入っていくイメージでしょうか。
福田:あとは観光関連(インバウンド)ですね。東京オリンピックに向けて日本もこれからますます観光立国になっていくと思うんですけど、じゃあ「三重県に来てください」「山形県に来てください」「鹿児島県に来てください」と言ったときに、名所のいい所がVRで体験できたらここ行ってみたいとなるかもしれません。だからVRチャンネルっていうのはそういうインバウンド的な使い方もあるんですよね。
B-:そうですよね。
福田:もちろんVRプロダクションもあるし、いろんな可能性秘めているんです。 みんなこれ読んだら真似するかな(笑)。真似しても業界が活性化するから、いいと思うんですよ。でも簡単に真似できないですよ。僕は人よりか1年早くこれ始めてますもんでね。「Tilt brush」のこと聞いて2カ月でこのギャラリー作りましたから、これくらいのスピードで判断できる企業が、もっとあればいいと本当にいいと思いますよね。ちょっと自慢でした(笑)
B-:じゃあ、このギャラリーを企画するまでが大体2カ月ぐらい。
福田:本当はもっと早くやりたかったんだよね。知ってから1ヶ月。施工が実質1カ月かな。いや、1カ月もない。20日ぐらいで。工事に入ってから、8月の1日に施工はいって23日オープンなので20日間ないですね。今のところ僕の美意識の結晶ではあるんですよ。
B-:この真っ白でコンクリート貼りでっていうのも狙ったところで作られたんですか。
福田:これはギャラリーだからホワイトキューブの内装にしました。施工2日です(笑)でも、もしこのギャラリーが流行らなかったら、ここをVRポルノシアターにしてひと稼ぎしようかなって(笑)。
B-:何カ月待ちみたいになっちゃったりして(笑)。
福田:だから例えば、「VRゲームができて対戦できます」ってやるだけでも、注目されると思いますよ。さっきのVRプロダクションにしてもノウハウがあれば、しばらくは引く手あまただと思います。でも、僕は新しいハードウエアに対して新しいコンテンツサービスを作っていくこと以外に関心がないんです。「VRプロダクションをいっぱいつくりましょう」って提案についても、確かにそれぐらいの規模の産業なると思いますよね。だって映像プロダクションの総マーケットから考えたら絶対ニーズありますよ。「ちょっとVRで撮ってください」みたいなオーダーは、今後ものすごくあると思うんですけど、僕はそれがVRらしいコンテンツ制作じゃないと関心がないですね。
VRそのもののディストリビューションをどうスムーズにできるか
B-:今後、VRによって体験をパブリッシングできる世界になると。それによって世の中がどう変わるのでしょうか。
福田:人の経験っていろんなアプリケーションがあると思います。「チャイルドフッドCHILDHOOD: Wearable Suit for Augmented Child Experience」(Jun Nishida)ってアート作品があります。それは大人の身長で、ヘッドセットを被ると、子どもの視線で世界が見えるんですよ。そうすると例えばスーパーマーケットのユーザーインターフェースが子どもにとって危ないと感じたら人の導線を直すとか。あとは体の不自由な方がこれをかけることによって自分が実現したいことを自己実現できるとか。ALSなんかもそうですけども、手足が自由に動かせなかったりするとペン字なんかを目の視点でやったりしますよね。そういうこともVRヘッドセットを作れば、より身近にできるようになります。町の設計から人の夢想まで他人の体験を味わえるっていうことは、多分僕が想像する以上にいろんな活用があるんじゃないかと思いますね。
そういうことを考えるキッカケが、このVRアートギャラリーなんです。VRそのものを体感しないと。人類にとって初めてのものなので、こういう見本になる場所を作ったんですよね。
B-:この他に何かVRに関してチャレンジしたいことはありますか。
福田:総合的なプラットフォームがあるといいですね。いまは、VR映像をネット上でディストリビューションするのに、データ容量が大きいので重きくてライブ配信など困難です。それを配信するとなると、インターネットの回線を100倍にしなきゃいけない。ただそれは今までの進化からいえば、絶対に実現しますよね。昔のネットワークもダイヤルアップだったものが「ADSL」から「光」の時代になってるわけですから、数年でクリアされると思います。恐らく?VRそのもののディストリビューションもコンテンツの品揃えとともに急激に進化するんじゃないかな。?パソコンの処理能力の向上も課題、だからVRプラットフォームができるとパソコン業界にもネットワーク業界にも全部いいんですよ。
コンテンツ作りは、たった一つの感動を届ける旅
B-:その他何か、これだけは他に何か言っておきたいっていうことは?
福田:シンギュラリティの後に人間がやるべきことは、人間にしかできないことをやるしかないんです。だからどんなテクノロジーが発達しても、人が必要とするものは、僕の専門分野でいうとエンターテインメントコンテンツなんだと思います。
そこで、自分らしいVRの活用方法がないか考えたら、人間が手描きしたものを コンピューターグラフィックスよりも精度が高い作品として残すことじゃないかというアイディアが浮かび、“VRアート”しかないだろうということで今回ギャラリーを始めました
B-:一人一人の心に刺さる作品を目指していくと。
福田:はい、そうですね。
B-:ありがとうございました。