人を感動させるコンテンツを作るためには?
質疑⑤
クリエイティブをソーシャルメディアで伝播するためには、どのような手法で織り込んでいけばいいのでしょうか。具体的なところを伺いたい。モデルさんのようにきれいな方であれば、自撮りでいくんでしょうけれど、私はそうではないので……。
福田:デジタルマーケティングの会社というのは、大きく二つに分かれます。一つはアドテク。ウォール街の取引のように、機械とひたすらABテスト繰り返す。このクリエイティブは赤で、このクリエイティブは青とする。赤と青、どちらのクリック値が高かったか。赤ならば赤で、バリエーションを10個作ろうと。最近はAIも導入されていますけど、これがアドテクの最前線です。
一方、僕がやっているのはコンテンツマーケティングです。このコンテンツマーケティングというのは、コンテンツを通じて、人に潤いや感動を与えようというものです。フレームはデジタルですが、中身は映画会社とそんなに変わらないんですよ。感動するものを作れる人というのはそんなたくさんいるわけではなくて、限られています。それがプロで、一定以上のフィーを払い、クリエイティブをしていただかないと出来ないものです。
今のご質問を「どうやって人を感動させるようなコンテンツを作るのか」と解釈するならば、きちんと実績のある、テーマに則した一流のクリエイターを雇うことです。ほどんどの人はその経験がないのに、「俺がちょっと考えてやってみるか」的なレベルで捉えていることが少なくありません。でも、やはり「プロはプロ」なんです。僕も30年間、いろいろなクリエイターと付き合ってきましたが、彼らはいわゆる普通のサラリーマンではないですよね。たとえ生活できなくても、クリエイティブなことを考えて、絵を描くとか、デザインをするとか、好きなことをやっている。大学を出て、初任給をもらって、ボーナスもらって、課長になって…というような発想とは違うので、どうぞその道のプロを起用していただけたらと思います。
ただ、今の企業の広告宣伝費を「10」とすると、アドテクでデジタルの効果を出すために割いている予算が「7割」。で、僕らがやっている体験型の共鳴、共感のコンテンツマーケティングは、まだ「2?3割」なんですよ。クライアントにとっては確実なトラフィックの保証がないから、効果が読みにくいんですね。アドテクだと、必ず100万と言ったら100万人に届いちゃう。アドテクを頑張らなきゃいけない前提になっているのが、Googleという検索の世界の中でプレゼンスを上げることなんです。この20年間、これがデジタル世界の目的でした。だけど今一番はやっているソーシャルメディア、LINEとFacebookの投稿というのは、Googleで検索しても出てこない。もっといえば、ウェブ人口20億人と言いますが、世界には70億人いるので、検索に引っ掛からないことはいっぱいあるわけです。
企業が費やしている7割のお金が、Googleの中でリスティングにせよ、アドセンスにせよ、アフィリエーションにせよ、「不動産と検索したら上位に俺の会社が来る」「印刷と入れたら俺の会社が来る」となるために費やされていますけど、多分この効果は年々低くなってくると思います。今後はソーシャルマーケティングとバランスよく勉強していかないと。勉強といっても、枠を買うわけではないので、代理店には任せられません。影響力のある人と一緒に組むことによって販売していく。それは、一流クリエイターを雇うことと同義語かもしれません。
(後篇へ続く)