ブランディング戦略で成功した「メルカリ」
福田:起業して5年間後の生存率は15パーセント以下らしいですよね。そうやって考えると、スタートアップの会社が生き延びるために「ブランディングなんかやってられるかよ」っていう声があるのもわかります。そういう時は僕、いつもフランク・ミュラーの例を言うんですね。「フランク・ミュラーの創業がいつか知ってますか」って言うと、大体ロンジンと張り合うくらいのブランドだから、「200年くらいですか」って答えるんですけど、実際は1986年の創業なんですよね。フランク・ミュラーの時計って100万円くらいしますけど、ブランド価値が認められるのに5年かかってないんです。ブランディングっていうのは、凄い時間かけて作るものではないです。今の超情報化時代だったら数年でブランド確立可能でしょうね。
メルカリの山田進太郎さんは天才だなと思うのは、最初にメルカリをつくった段階からブランディングのことを考えていた点です。どんな人がお客さんでいてほしいかを、あれほど考えてやっている方はなかなかいないので、すごいなと思いました。
坂井:やっぱりメルカリは日本で初めてグローバルになるかもしれない企業ですよね。初めてというか、ソニーもずっとグローバルなんだけど、つい最近の話、あるいはネット系でいうと、グローバル企業になる可能性を持っているんですね。
福田:メルカリは、そういうイノベーターだと思うんです。そうでないと、ブランディングは時間もお金もかかると思い込んで、「もうちょっと業績が安定してから」っていう経営者が多いんです。でもそんなことはないんですよね。ブランディングは、100年単位で時間をかけるような話ではないんです。
坂井:まだシェアオフィスに3人ぐらいいた時、僕は進太郎に呼び出されて、「坂井さん、今度、こういうビジネスを始めるんですよ。言っちゃ駄目ですよ」って言って、見せてくれたんですよ。スマートフォンで全て完結するC to Cのモデルだって。僕もそその時はよく分かってなかったんだけど、今考えたらすごいことなんですね。
(注…坂井氏は2001年、メルカリ会長山田進太郎氏と、チームラボ代表猪子寿之氏と3人で、インターネットマーケティング会社の「ブランドデータバンク株式会社」を起ち上げた)
福田:すごいですよね。メルカリを創業した当時、「でもヤフオクがあるじゃないか」っていうふうに業界の人たちは言ってました。「いや、スマホはまた全然違う世界です」と彼は答えているんですね。だから、スマホに乗り遅れてビジネスチャンスを失ったPC主軸の会社っていっぱいありますよね。スマホ時代のマインドに乗り換えるのに、経営者が出遅れてしまった。そんな人が気付かないことに気づくのが、すでにブランディングの達人の要素でもあると思います。
坂井:いまだにスマホに最適化してないウェブサイト、いっぱいあるからね。