『深く考えること、検索だけじゃわからないこと。』 LUMINEや資生堂などのコピーライトを手掛ける尾形真理子氏 × 実業家 福田淳の対談 | Talked.jp

『深く考えること、検索だけじゃわからないこと。』 LUMINEや資生堂などのコピーライトを手掛ける尾形真理子氏 × 実業家 福田淳の対談

対談 尾形真理子 × 福田淳

クライアントの言葉の先を考える

福田:たぶん、私たちのクライアントに対するアプローチには違いがあるんですけど、根底にあるものは同じだと思います。 まず違いというのは、博報堂さんの場合はクライントが多く、マーケティングやプロモーションの全体構成を考えられるポジションにいらっしゃると思うんです。一方ソーシャルマーケティングはまだ始まったばかりの分野なので、私の会社などは過去に全然お付き合いがないクライアントに対応させていただいている状況です。 しかしそうした土台の違いはあっても、クライアントを通じて消費者とコミュニケーションをしたいというのは同じで、適切なストーリーを私たちがどう提示するかさえ決まれば、尾形さんがおっしゃる通り言葉は何であれ、消費者にストーリーが伝わっていくものと思います。

尾形:そうですね。クライアントや消費者とのコミュニケーションという意味では、私は今年でコピーライターという肩書きになって14年目なんですけど、ようやく自分なりの思考の仕方や、クライアントやその先の広告を見る人との距離感を見つけた感じです。 たとえばクライアントのトップが「今回は長尺のムービーでいこうよ」みたいなことを言うと、私たち現場はすぐに「じゃあ企画はどうする」とか「キャストは誰に」とかいう動きになりますけど、それよりも「トップが長尺のムービーがいいと言った理由はなんなのかな」と、いちいち考えるクセみたいなものがつきました。オリエンシートも何度も読み返して、「なんでこう書いてあるんだ」と、そこに書かれている言葉の先を考えます。もしそれがちゃんと読み解ければ、たとえばテレビCMのオリエンで「いや、今回は全部SNSの施策で行きましょう」と言うこともできます。実際には広告会社の場合はメディアが絡んでくるのでなかなか言いづらいですけど、でも展開するメディアについてはけっこうシームレスに、ニュートラルに考えるようになりましたね。

福田:尾形さんの“いろいろ考え込みやすい性格”は昔からですか?(笑) それとも職業的にそういう思考でいらっしゃるのでしょうか?

尾形:たぶん元々そうなんだと思います。いろいろ考えてみる知りたがりで。すごく考えるのに、でも大体いつも間違っているんですよね(笑)。自分の中では計算が成り立っていたはずなのに、そもそもその計算機に電池が入ってなかったよ、みたいなことに気づくことが多かったりします。

福田:私も同じような性格なので嬉しいですね。私は今でも「ナゼナゼどうしてどうして少年」って呼ばれているんですけど(笑)、いつも「どうして? なんで?」って人に聞いているんです。それをずっと言っていたら、昔は先輩にすごく怒られたんですよ。「自分で考えないで質問ばかりしている」って。でも質問することで物事が因数分解されて、自分なりの真理と言ったら大げさですけど、そういうことがわかるんですよね。 逆に、最近「ソーシャルメディアで何かやりたい」って仰られるクライアントの中には、自分たちの方向性がはっきりしない企業が多いんです。「周りが何かそうことをやってるから」とか「ちょっとキャラクター作らなきゃダメかな」といった感じで、自分たちのサービスや商品の必要性からその活用を考えていない。私が若い頃、雑誌 「anan」や「BRUTUS」の流行記事に影響を受けて、代官山に憧れていたのと一緒です(笑)。

尾形:最近の代官山はママの街ですけどね(笑)。クライアントにも依りますけど、相手がいつまで経っても自分で考えてくれないような状況の時には、やはりクライアントが何をしたいのか探るようにしています。 先ほど福田さんが先輩に質問して怒られていたとおっしゃっていましたけど、私は後輩に怒られています(笑)。デザインや企画を決める立場になって、いろいろなデザインや企画を見ているんですけど、それが良いか悪いかを判断する前に、「なんでこれになったのか?」って聞いちゃうんですよ。「なんで? なんで? なんで?」って3回くらい聞いちゃって、後輩に「もう“何で”って聞かないで!」と言われるんです。でもやはりそこは聞きたいんですよね。