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プライベートバンカーの役割

経営者の在り方ってなんだ!?ビジネスエリートを幸せにするコーチング

山﨑:そうですよね。仕事と家庭のバランスが取れている方って、なかなかいないです。では、そういった方は家庭が大事ではないのかというと、「そんなことはなくて、むしろ家族がいるから頑張っているんだ」とおっしゃるんですね。でも奥様や子どもさんにはそこまで伝わっていない。それはそうですよね。ビジネスでのスピード感で、ビジネス用語で話してしまうのです。奥様や子どもさんがちょっと愚痴を言ったり、今日あった出来事を共有していると、「1分でまとめろ」とか「結論から先に言え」といったことになるわけですよ。「いつまでぐちゃぐちゃ喋っているんだ」ってね。

福田:そりゃ嫌われますよね……。 もう亡くなられていますけど、お金儲けの神様と呼ばれた邱永漢さんは、アメリカに留学した息子さんに、1年分をまとめて仕送りしていたと言う逸話があります。
普通のサラリーマンだったら、毎月仕送りを送って、「これにいくら、あれにいくら」と内訳も伝えて、「そのお金の範囲で暮らしなさい」と言いますよね。でも邱永漢さんは、1年分のお金を送って、「それがお前の年間のバジェットだから、自分でコントロールして使え」と。バジェッティングを学ぶ素晴らしい機会を与えているわけだけれど、使い方に干渉しないというのは子どもにとってはすごく重い責任だし、非常に厳しい。

山﨑:そうですよね。おそらく、お父さんのその思いを説明してあげる人がとても必要になるわけです。家族の間にコミュニケーター(通訳)が1人いると、とても関係がスムーズになる。その役割を自分はやりたいと思いました。

福田:「奥さま、ご主人が言いたいのはこういうことなんですよ」と、言うわけですね。その役割は面白いですね。そういう役割を担っているうちに、ビジネスアドバイザーになっていくわけですね。

山﨑:私の場合、プライベートバンカーとしてやっていましたけれども、ファミリーオフィスのスタッフのような動き方が多かったですね。お金だけじゃないんです。生活諸々全部。個人秘書みたいな感じです。

福田:僕の専門のアートの話になりますが、世界的オークションハウスのクリスティーズには、美術品や宝飾品、アートなどのすごいスペシャリストたちがいますよね。その専門家たちの仕事というのはイメージと違って、もうめちゃくちゃ地味なんです。たとえば、アートコレクターのおじいさんがいると、そのお宅を毎日訪問をするわけです。お茶を飲みながら、「今の政治はダメですなあ」なんて世間話しをしたりしてね。そんなことを毎日続けている。そして、そのおじいさんが亡くなると、コレクションの扱いだけでなく、その家の遺産相続のすべての面倒をみることになるそうなんです。
彼らは、もうアートの専門家という立場を超えて、そのおじいさんの身内であり、“家族”になってしまっているんです。信頼されて、任されるってそういうことですよね。山﨑さんがおっしゃっていた「プライベートバンカーだけど、いつの間にかファミリービジネスのスタッフになっている」というお話と全く同じだなと思いました。

山﨑:その通りですね。

福田:お金をマネージメントするというのは、お金だけじゃなくて、その人の人生そのものに関わるということなんですね。お父様の「お金は根幹」って本当ですね。面白いな。

山﨑:父が入社の時に言った「お金が元で、いろいろな人、ものにつながる」とか、「お金の力は怖いものだ。それをきちんとコントロールできている人というのは、なかなかいないものだよ」という話も、その通りだなと実感しています。

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