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レンタルおじさんはラノベ作家

世界征服を考えると、ヒトはもっと生きやすくなる  Talked.jp

福田:今回対談をお願いしたいって思って、中田先生が「レンタルおじさん」に登録してみたという記事を発見したときに、ちょっと頭が混乱して。「どういう発想?」 って、もういろいろびっくりしました(笑)

中田:先ほども言いましたけど、3分後に自分は何を考えているかって分かんないわけですね。次の瞬間にも何を言うかって分かってない。つまり、考えているわけじゃなくて、頭に浮かぶわけですね。これは、全部が神の計らいだって言っていて、基本的にそういうことなんですね。だから、なんで「レンタルおじさん」かというのは、別に考えたわけじゃないんですね。

福田:なるほど。

中田: あるとき、何気なく見ていたドラマで「レンタルおじさん」というものを知って、なんか「あ、面白そうだ」と思って。「じゃあやってみようか」って思ったっていう。私は神学者なんで、これは神の啓示だということで(笑)

福田:(笑)

中田:ということで始めたんです。全く知らなかったんで、最初に見つけたサイトに登録してみたっていう。登録してみたら、ずいぶん怪しげなサイトだったんですけど(笑)。そして、そのことについてツイートした当日に、2人の編集者から「これ面白そうだからぜひ本にしたい」っていう話が来て。いや、面白くないって言ったんですけど。

福田:実際のおじさんをレンタルしたい依頼人よりも編集者のほうが反応しているっていうのが(笑)。業界向けのPRとしては完璧でしたね。

中田:そうなんですよ。全然分かんないんですけど、それで一応始めてみて。もともとTwitterでしか宣伝してないんで、知り合いの人間から何人かレンタルしたいとかいう話はありました。

福田:そうなんですか! レンタルされちゃう。

中田:そうなんです。ええ、レンタルされているんです。最初のレンタルは、最近イスラム教徒になった若いイスラム教徒で、イスラムの話を聞きたいっていうことでした。

福田:ああ、いいですね。

中田:でも私、普段はイスラムの話ってしないんですよね。嫌いなんです(笑)。そういえば、実は私、今の本業は「ラノベ作家」を名乗っているので。

福田:えっ! そうなんですか?

中田:俺の妹がカリフなわけがない!』(晶文社) 。これが私の主著なんです(笑)。私はラノベ作家なんで。で、これを読んだ女子高生から、「私もカリフ制*再興したいんですけど、どうしたらいいでしょう?」という相談が来ましてね(笑)。「うん、それはいい心がけだ」と言って。イスラムの話をするのは嫌だけれど、一応そういう指導はしてるんです。「今できることはあまりないから、とりあえず勉強しなさい」って言ってるんですけどね。

福田:へー!

中田:これが私の本来、若い人たちに向けて話すイスラムのメッセージなんです。本当に私は難しいことは分かんないんで、当たり前のことしか言ってないんですよ。ただ、やっぱり当たり前のことが見えなくなっているっていうか、見えなくさせるっていうか、そういうのが今の近代のイデオロギーなんで……というようなメッセージを伝えたいんです。それがイスラムの話になると、どうしても「なぜお酒を飲まないのか」とかそういう話ばかりになってしまうんで。イスラムの話をするのは嫌いだっていうのは、そういうことで大体イメージがみんな固まっちゃっているんで、それを壊さないと、その話で。

福田:いや、かなり壊れますよ。ラノベはね。

中田:そうなんです(笑)

福田:でも、レンタルおじさんで「イスラムのこと話しましょうよ」なんて若者が来ると、それはそれで面白いですよね?

中田:そうなんです。だから、レンタルおじさんの場でだけは一応、話はするってことにしています。

*預言者ムハンマドの死後におけるイスラム世界の指導者を意味し、中世のイスラム王朝から1914年のオスマントルコ帝国解体まで続いた伝統的政治制度。カリフ制再興とは、西欧が引いた国境を地球上から廃し、カリフを中心としてイスラーム法の支配の下に人やモノやお金の自由な移動が保証されるような、真にグローバルな世界を実現すること。

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