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クラウドファンディング総まとめ

社会的に前向きで、リスクが高くない事業?

福田:沼田さんは電通にいらっしゃって、そのまま定年までいればそんな苦労もなく楽しかったのに(笑)、なんでこんなイバラの道(ベンチャービジネス)を歩まれたのでしょうか。

沼田:そうですね(笑)。電通という会社の場合、売り物で言うと、大きく二つに分けられるのかなと思っています。一つはCMの流せる場所、いわゆる枠ですね。もう一つは協賛を取る。ざっくり言うと、オリンピックのスポンサー何社集めますとか、例えばキッザニアをつくるって決まったら、キッザニアスポンサー集めますとか、ある出版社がムック本を一冊制作する際に、そのスポンサーを探してくれとか。
 特に後者の仕事についてはインターネットの登場によってどんどん厳しくなっているなというふうに感じていました。今までは、映画とかスポーツの興行とか、たいてい代理店が入って、スポンサーからお金を引っ張ってきてということをやってきたわけなんですけど、じゃあスポーツチームに年間5000万円払っていたら、何がどうなったんだ、と、いわゆる費用対効果の証明を求められるようになってきているわけです。一方、インターネットの広告って幾ら払ったら幾ら効果があったみたいなレポートがキチッと出てくるんですよね。情緒的な価値を売りにしているコンテンツやプロジェクトって、レポートにしにくいですよね。実際にコンテンツに協賛した価値があるかないかということに関して言えば、僕も断言はできないです。ただ、上司に説明してオーケーをもらう、いわゆる稟議という仕組みが重視される日本の企業風土においては存続していくことはなかなか厳しいだろうなと思います。突き詰めると効果のあるなしの判断が個人の好みに寄っているということになってしまうので。で、話が戻りますが、そんな感じで電通時代に、スポンサーが取れないみたいな案件が増えていくなと確信が強まっていきました。一方で、AKBのファンのように1人で100万、アイドルに突っ込む人がバーッと出てきたりしてて、なんか僕ら土下座みたいなことして必死に10万円の協賛代を売り上げているのに、個人で軽くその値段を超えたスポンサー?をしてしまう人がたくさんいることにショックを受けました。1億円くらいのスポンサードができるかっていうとやはりパワーある企業しかできないと思います。でも1万円から100万円くらいのレンジのスポンサードって、インターネットが登場により、企業とか個人とかで差がなくなってくるだろうと予想していました。

福田:それはいつ頃の話ですか。

沼田:2006年とか07年ぐらいですかね。

福田:早いですね。

沼田:僕、サッカーが好きだったのですが、日本であるクライアントがスポーツチームを手放した際、ものすごい批判を受けて、そのときに企業が情緒的なコンテンツをスポンサードすることの限界を感じました。一方でバルセロナというチームがソシオというファンクラブの仕組みで相当の資金を集めていて、しかも結果としてチームが強いという話に興味があったんです。個人が支えるコンテンツは支援者をダイレクトに向いているし、支援者のコミットも深いから結果として無駄が少なくなってチームが強い、これって当たり前のことなのに実は見落とされているなと思いました。インターネットの普及、もっと言えばインターネットを通じたお金の決済が当たり前になることによって、スポンサードなど支援の主役も企業から個人へと変わっていくことを感じたのです。

福田:それで電通を飛び出されて。

沼田:当時まだソーシャルという言葉はなかったんですけど、なんか電通は2006年ぐらいにCSR(企業の社会的責任)とか言い出してですね。こういうこと言ってはいけないかもしれませんがいろいろな業界と切った貼ったでビジネスを創っていく、実は最もCSRと遠そうな会社なのに、社会の評判が良くない企業はこれからは収益が上げられない、そういうCSRマーケティングが大事とか理想論に近いことをお客さんに向かって言い始めたんです。一方で、2ちゃんねるでググるとご存知の通りのマイナスの評判しか出てこなくて。なんかこれは矛盾しているんじゃないかと思いました。だから、思い切ってフェアトレードのサッカーボールを売るというビジネスに飛び込んでみました。飛び込んでみて感じたのは先ほどもお伝えしたとおり、中小企業、特にものつくり企業の資金繰りの問題でした。勇気をもって立ち上がったベンチャーが社会貢献的な理念とビジネスを両立していくためにはこのキャッシュの問題をイノベーションしていかなければいけない、と考えるようになりました。

福田:なるほど。そういうときにクラウドファンディングと出会われたんですね。

沼田:はい。よくものの本では企業は「いい理念を持ってビジネスを行えば儲かる」って書いてありますよね。それって中長期的な真理であることは間違いなと思っているんですが、一方で短期的な結果で生き死にが決まるベンチャーにとっては難しい部分もあると感じています。特に立ち上がり期にビジネスにとってはお金というのは本当に大切です。銀行とかから借り入れするとか、ベンチャーキャピタルや投資家の方から投資してもらわないとしうまくやっていけないという現実も感じました。だから堀江さんが言う「在庫をしないビジネスがいい」という話もなるほどその通りだとは思ったんですね。でも、じゃあ逆に在庫リスクがあるからという理由だけで、信念に基づいたビジネスを諦めて、携帯サイトと出会い系とか情報弱者の射幸心を煽るようなビジネスだけを作ってチャリチャリ稼ぐとか、そういうことをするベンチャーばかりの社会になってしまうのはどうなのかなと。理想かもしれないですけど、社会的に価値があるビジネスやプロジェクトをリスクなく立ち上げることができる、そういう全く革新的な方法がインターネットの世界でどこかに残っているんじゃないか。そういう革新的な方法が普及したら、本当に人を喜ばせることができる映画が作りたいとかチャレンジをする人も出てくるんじゃないか、或いは「学販などの既得権益でイノベーションが起きていないサッカーボールのビジネスを変える」いうことを考えるような起業家がもっと増えるんじゃないか、と考えてクラウドファンディングにいきつきました。