【ニューメディアが拓く面白人生!】8ミリ映画から衛星放送、iモード、スマホアプリまで。ニューメディアの可能性を広げるのが醍醐味。@慶應義塾大学 メディアコミュニケーション研究所【前編】

8.Appleは黒船。
日本に上陸したiPhoneには、それだけの破壊力があった

ところが、iモード時代は2011年の東日本大震災で「ガラケーが通じない」と騒がれたあたりから、急速に縮小してしまいます。その前年の2010年にiPhoneが出ていて、当時は「あんなでかい画面、売れない」とか散々な言われようだったのに、震災をきっかけに、2012年頃からiPhoneとかAndroidが爆発的に普及したんですよ。結果として、会社は大きな打撃を受けました。それまでのコンテンツマーケットは電話代と一緒に占い代とか着メロ代とか引き落とされる月額課金だったので、126のiモードサイトで毎月コンスタントに安定した収益を上げられていたんです。ところがスマホのApple StoreだとかAndroid Storeなどは1個ダウンロードしたら100円という個別課金なので、iモードで儲けていたコンテンツ会社が軒並み潰れてしまったんですね。

iモードの有料コンテンツってピーク時は年間8000億円ぐらいのマーケットだったんですよ。8000億円ってどれぐらいの数字か。僕がいた映画業界で説明すると、日本の興行収入の総額はこの10年間、毎年大体2000億円くらい、ジブリのアニメが公開される年で2300億円ぐらいですから、iモードはその4倍ものマーケットだったんです。映画のチケット代は1500円くらいしますが、iモードは1コンテンツが100円とか200円程度で、これだけの市場をつくっていたんです。それが現在では2000億円程度まで落ち込んでしまいました。まさにAppleは黒船だったんです。日本に上陸したiPhoneには、それだけの破壊力があったわけです。当然のことながら、当社もビジネスモデルの変更を余儀なくされまして、スマホ化に対応すべく舵を切ることになりました。

9.3年間で1億人のソーシャルフレンドを獲得 

LINEの無料のスタンプありますよね。P&Gとか不二家、ハウス食品、ユニクロなど世界規模で事業展開しているグローバルクライアントと契約させていただいています。企業とのタイアップの場合、ソニー・デジタルのクレジットは入りませんが、もしかしたら皆さんも1つくらいうちが手掛けたスタンプをお持ちかもしれません。

また、企業のブランディングスタンプだけじゃなく、有料配信の分野でも当社がトップです。1個ダウンロードで1カウントされるんですけども、この3年間で延べ1億人のお客さんを獲得しました。この数字はソーシャルメディアの友達獲得数でいえば、世界トップクラスです。うちのスタンプにはクスッと笑える面白いものが多いですね。『ゴルゴ13』とか、『おそ松くん』とか、最近だと『ぼのぼの』とか、『こびとづかん』とか、「ちょっとうざい三国志スタンプ」なんていうのもあります。5、6年前にMTVでヒットしたCGアニメ『GOLDEN EGGS』のスタンプもソニー・デジタルの作品です。ソニー・ピクチャーズにいた頃のハリウッド人脈も駆使し、国内外の組織に属さないフリーランスの面白いクリエイターとも組んでやっています。

10.奪われていい仕事は奪われる運命にある 

現在、スマホ人口はパソコン人口を抜いています。皆さん、授業などでまだパソコン使っていると思いますが、今後スマホがオールインワンになって何もかも全部1台で済んでしまうようになるかもしれません。実際、田舎から出て東京で一人暮らしする人が、テレビ買わなくなったと言われていますが、今パソコンを持っていない人も増えています。ソニーもVAIOっていうパソコンブランド、身売りしちゃましたね。新聞読むと、残った東芝だとか富士通も、みんなで一緒に作ろうよっていうところまできているようですね。それだけ、もうパソコンが売れないと。

またちょっと横道にそれますが、先日「サウス・バイ・サウスウエスト」(SXSW)というテキサスのイベントに行ったんですね。ある経済学者が、アメリカの1900年を分析していたのですが、当時の農業従事者は98パーセントもいたそうなんです。ところが100年後、つまり2000年には0.2パーセントしかいないんですって。100パーセント近く農業やってたのが、100年の間に1パーセントに満たなくなった。その一方で、農作物そのものは100年前よりも現在の方が何百倍も作られているんです。産業革命でオートメーション化が進んだ結果ですね。新聞などで「AIが発達したら人間の仕事が奪われるんじゃないの?」と懸念されていますが、その恐れは充分にあります。でも、アメリカの農業従事者の推移と同じように、機械に奪われていい仕事は奪われていいのかもしれません。

「売れない」ものは、「いらない」ということなんですよね。みんな、自分に必要なものが欲しいんです。その結果、ガラケーからスマホになったわけですね。この先、どうなるんでしょうかね。AI との関係も気になりますね。ドローンがずっと自分の上を飛んでいて、そこからいろいろ通信ができるようになったら、スマホも要らなくなるかもしれない。メディアの近未来については、こちらで専門的なことを学んでらっしゃる皆さんにお任せしますが、いろいろアイデア出して、社会をいい方向に変えていって欲しいと期待しています。

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【ニューメディアが拓く面白人生!】8ミリ映画から衛星放送、iモード、スマホアプリまで。ニューメディアの可能性を広げるのが醍醐味。@慶應義塾大学 メディアコミュニケーション研究所【中編】