logo

いいバラエティ番組はタイトルで決まる

テレビはオトナのたしなみ!という提案。 Talked.jp

角田:「名前をつける」と言えば、僕の場合は仕事柄、テレビ番組ってタイトルがとても大事なので、そこにはやっぱり命をかけますよね。僕がTBSでずっとプロデュースをしていた『オトナの!』っていうトークバラエティ番組がありまして。今は『オトナに!』(*現在はTOKYO MXでオンエア中)にタイトルが変わって、引き続き、いとうせいこうさんとユースケ・サンタマリアさんのホストで続いているんですけど。『オトナの!』っていうタイトルは、まずスポンサーがつきやすいんじゃないかなと思ったんですよ。

福田:大事ですね。それにいいタイトルです。

角田:内容も読んで字のごとく、大人の青春とか、そういうテーマカードでトークしていく番組なんですね。そうすると、出演していただくゲストの方にもわかりやすい。ゲスト側にも「そんな変な話はしなくてもいいんでしょ」と安心していただける。

福田:バラエティっぽい話を、無理にしなくてもいいと。

角田:はい。そして一番のポイントは、中の人のスタッフに向けて意味があるんですよね。「今度のゲストは誰にしようか」っていう会議の時に、「うちの番組は“オトナの!”だから、それに当てはまる人じゃないと呼んじゃ駄目だよね」って、結果的に暗示がかかっている。そういう暗示をうまい方向にかけて行くこともできるなと。

福田:なるほど。

角田:「アベノミクス」が良いか悪いか、成功したか失敗したかは置いといて、そういう名前をつけちゃうと、もう安倍さんしか見えなくなるんですね。官僚とか中の人たちが。それが一番、問題なんですよ。「安倍さんに気に入られるためにやろう」っていう暗示がかかっちゃうんですよ、知らぬ間に。

福田:あのネーミング考えた人、すごいですよね。

角田:そういう意味ではすごいですよね。だから僕は、自分でどう暗示をかけるかは、結構ポイントだなと思っています。たとえば、今一番人気の番組は『世界の果てまでイッテQ!』(日本テレビ)だと思うんですけど、あれ超いいタイトルだと思うんです。「世界の果て」って言うと、みんなキュンと来るわけですよ。で、世界の果てまで行って何やんのと言ったら、行ってQでクイズですよ。この落差(笑)。この落差が、タイトルだけでわかるという。

福田:今の角田さんの解説だけで、グッときましたよ。アーティスト・村上隆さんの『芸術闘争論』(幻冬舎)という著書に、「絵の見方」というのがあるんですよね。普通アーティストだったら、「意味なんて聞くな、感じろよ」って言ってそれでおしまいにするところを、「いえ違うんですよ、こういう構図がありましてね」と、ちゃんと解説するところが、あの人は真面目で面白いなと思うんですけど。

角田:わかります。解説もしてくれるし、制作過程とかも全部見せちゃうじゃないですか。あれ、やっぱり知ると楽しいですもんね。

福田:楽しいし、それを見て学ぶのは日本人っぽいですよね。「感じろ」なんていう教育、そもそも受けていないから。上野の美術館に行っても、必ず「はじめに」っていうところに人だかりができちゃう。あれは日本独特で、海外にはあんまりないですよ。

角田:僕もそう思いますよ。「はじめに」だけ一生懸命読んでるんです。あとは大体、みんな疲れて座ってたりして。

TOPへ