logo

AIに先を越されないためには、いかに「無駄なこと」をやるか

テレビはオトナのたしなみ!という提案。 Talked.jp

角田:それが本質的に変わったのが、東日本大震災です。

福田:それ、ありますね。

角田:あの日で変わったんですよね。比喩で言うと、それまでは文化の波に波乗りしいてたのが楽しかったんですよ。わーってカルチャーの波に。そしたらもう、波乗りできない津波が襲ってきた時に、「波乗りしてる場合か」って、ちょっと思っちゃった。実際に自分が手がけていたバラエティのロケが翌々日の3月13日に予定されていたんですけど、「ロケは中止!」とお達しが来て。「放送に間に合わないですよ」って言ったら、「そんなことをやってる場合じゃないんだよ」「そんなくだらないことをやってる場合じゃない」って言われて。

福田:なるほど。

角田:それまでは、僕はくだらないものを、「戦争になったらいらねえ」と言われるものを仕事にしたいと思って、20代からくだらないものを作ってきたんですよ。でも震災の時に「本当にくだらないからいらない」と。戦争ではなくて地震だったんですけども。

それでいいのかって思って、だったらこれまで「テレビ」という「フレーム」で作っていたもの、そのフレームを外して「フリとオチ」というのを作ってみようかなと思ったんです。今、僕が「バラエティプロデューサー」と名乗っているのは、そういうことなんです。テレビのバラエティではなくて。

福田:不思議なことに、産業構造の背景と僕らは無縁ではないんですよね。20世紀の社会では、大量消費で、同じものを売って、みんながアルマーニを着たいという時代では、大きな組織でなければたくさんのものは作れないし、安全も保てないから良かったんでしょうけど。人類の歴史って、余暇を作る歴史だったから。テクノロジーが進化すればするほど、ゲームセンターに行ってたのがうちでファミコンできるようになったとか、映画館に行ってたのがVHSで録画できるようになったとか、どんどん便利になってきたわけじゃないですか。そうすると、人間ってムダなことをして余暇を潰すということでしか、生きる目的がないっていうふうに、今後ますますそうなっていきますよ。

角田:ムダじゃないこと、合理的なことは全部、AIがやりますからね。

福田:だから僕らはいかにAIに読まれないような無駄なことをやるか、作り出すかっていうこと以外、たぶん人間の仕事はなくなる。ICOのテクニックによっていろんなことが効率化されたり、バリューチェーンができたり、流通革命が出てきたり、どんどんものはできてくるわけですけど、圧倒的に時短になっている。だから「働き方改革」とか言ってますけど、100年たったらこの問題はなくなっていると思いますよ。

角田:100年と言わず、10年20年なんじゃないかという気もしますね。シンギュラリティ前ぐらいで、もうむしろ解決してるんじゃないかなと。

福田:少なくとも、パラリンピックがオリンピックを抜くのも時間の問題ですよね。人間の足よりも、義肢のほうが速くなるのは、間違いないです。もうオリンピックレベルまで来ますから。

角田:そこまでいっちゃうと、僕の今の悩みも解決すると思います。今は過渡期だから、僕はその「銀座の女」をまだやり続けなきゃいけないんだなっていう。もう全部、排除したいですよ。でも排除したら食っていけないですから。

(後篇へ続く)

TOPへ