福田:YouTubeがお客さんに押しつけないで考える余地を与えると言っても、実際の情報量は爆発的に増えているわけで。「いいもの置いときゃ客が来るんだよ」っていうサービスでは、誰も見つけてくれません。実は、企業も消費者とのコミュニケーションに悩んでいて、コカ・コーラさんが「2年以内にプレスリリースをやめて、全てのプレスリリースをバイラルムービーにする」と宣言して業界を驚かせました。これは、どうやってお客さんにコミュニケーションしたらベストなのか? と考えている故なんですね。新しいメディアは、その器に見合った盛りつけとマーケティングをしていかない限り、若者に支持されないわけです。
僕も映画会社にましたが、あの業界は旧態依然たる産業ですよね。リュミエールが映像を発明してからほぼ100年、マーケティングスタイルは一緒。タイアップとってきたり、ポスター張ったり。それも必要でしょうが、もう、みんな映画館に行かなくなってる。ここ何年間も映画産業って伸びてないんですよ。DVDも売れなくなっていることを考えると、映画会社もソーシャルメディアをもっと活用しないといけないですね。
西:映画の映画館での収入って大体、年間2,200億円。これは紅しょうがの市場商圏と同じらしいです。よく映画業界で「俺らってさ、紅しょうがよりちっちゃいんだよ」とか言ってます。(笑)
ライブラリーよりライブ感?
西:今、自分の映画の宣伝もやるんですが、Vineに注目しています。6秒の映像がループするけれど、1回見て「あ、宣伝なのね」と分かっちゃったら、何度も見ないですよね。「何だろう、これ」って何度も見せなきゃいけない。それで、6秒映像を作って映画館の人に見せたんです。そしたら、「これ、映画館でかけたい」となった。クオリティーが高いからとか、面白いからっていうのもありますけど、6秒ならあらゆる映画にかけることができるからなんです。
福田:なるほど。
西:YouTubeにあげる映像も、たとえば、僕が福田さんに、「こういう映像知っていますか」ってメールで送る。でも、この人はいつ見るか分からない。それなら、一緒にいるときに「これ見てください」って言う。そうすると、1分30秒は長いんです。だから、Twitterとかで動画を出すときも、朝の忙しい時間帯なら、6秒のを出しておこうと。23時を過ぎると、みんな暇だから、1分ぐらいの映像でもいいんじゃないかとか。自分であげている映像は、全部エクセルで管理して、回転数とかチェックしてます。
福田:マーケターですからね、西さんは。
西:やってみると明らに24時過ぎが一番回るんです。高校生とかに刺さるには21時ぐらいかなと勝手に思っていたんですが、そうじゃなかった。24時過ぎぐらいにあげる画像とか映像のリツイート数がものすごい。だから、絶対に見てほしいと思う1分20秒ぐらいの動画を午前中にあげても誰も見てくれません。せいぜい主婦の人くらい。ただ、世界各国に向けてなら別です。Facebookとか、世界のことの反応がすごく大きいので、午前中でも大丈夫でしょうね。
福田:結局、テレビの時代だろうが、SNSの時代だろうが、ライブ感がやっぱり大事だと思います。ニコ生の爆発的ヒットを見てもわかりますよね。そのニコ生の杉本社長に、「今のテレビ局を改革するとしたらあなたどうしますか」って聞きましたら、コマーシャル含めて、全部、生放送にしますと。ライブラリーが命だと思っているテレビ局が間違っていると。実際、テレビ局は膨大なライブラリーをオンデマンドで配信してまったく儲かってない。昔のものをお金を出してまで見ないし、著作権的に問題はありますけど、YouTubeで触りだけ見たら、もういいんですよ。
今、アメリカで、定額制のネットサイト「Hulu」が流行っていますが、それも、三大ネットワークのテレビドラマの5分以内の映像を友達に見せられるっていう機能がヒットしたからなんです。昔、「あのドラマの最終回見た」とか、「志村けんの面白いギャグ見た」って言われたときに、見ていなければ、その話はそれでおしまいでした。今は、その瞬間を見せられるし、シェアできる。そういうシェアモデルが、バイラルムービーの流行る背景にあるのかなとも思いましたね。
ばんば:今の話にもう一つ付け加えさせていただくと、「おもてなしの気持ち」じゃないですかね。西さんのように配信の時間に細かく気を配るというのは、旅館のおかみと一緒ですよ。お客さんがいつ動くからこの時間に何を出しましょうっていう。やっぱり作り手、送り手は、先ほど「ウケ狙い」という言葉も使いましたが、見る人が喜んでくれそうなことを一生懸命考えて作らないと。「俺はクリエーターだ」とか、「俺たちが作ったコンテンツを見せてやるんだ」、みたいな考えがつくり手にあったら、立ち行かなくなるでしょうね。
福田:今、アメリカでは「Snap chat」っていう、新しいSNSがあって、メッセージや写真を見たら、6秒、7秒くらいで消えちゃうんです。なぜそれがいいかと言うと、Facebookは親や兄弟がつながっているんで、自分のログが残ると恥ずかしいし、うっとうしい。でも、Snap chatだったら、恋人とやりとりして、変な画像やちょっと恥ずかしいメッセージを送っても消えるから残らない。そこがいいんだと。 最近、LINEのタイムラインって企業の宣伝ばかりなんです。僕ぐらいの中年はLINEのタイムラインなんて誰も書かない。けれど、若い世代ではFacebook以上に活性化しています。なぜなら、大人が来ないからなんです。大人がいないところを探している、というのもまた、一つの時代背景なのかな。
福田:最後はかなり脱線してしまいましたが、「バイラルムービーとはなんだ」っていう結論はまだ出ないというのが正直なところです。これからどう展開していくのか、どう変化していくのか、僕たちも、見守りたいと思っています。
― 参考動画 ―