『21世紀は、リビング・イン・スモールコミュニティー』(対談 山口 揚平 氏 × 福田 淳 氏)

21世紀は、
リビング・イン・スモールコミュニティー

山口 揚平 氏

思想家・事業家。ブルーマーリンパートナーズ代表取締役/シェアーズ創業者。
1975年生まれ、早稲田大学政治経済学部卒。東京大学大学院。金融とデザインを融合させた新しい信用創造のしくみを構築中。

福田 淳 氏

実業家。ソニー・デジタル エンタテインメント 社長。
1965年生まれ、日本大学芸術学部卒。ソニー・ピクチャーズ エンタテインメントでアニメチャンネル「アニマックス」など多数のニューメディア立ち上げに関わる。

構成:福田千津子 撮影:越間有紀子

2014年10月2日(木)

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旅には予測変換が通用しない

山口:どこの大学や国に行っても、どこでもそうなんですけども、業界と業界の間に収益性があると思ってしまうんです。だから「業界」と言われるものには、僕はコミットしないんですよ。

福田:そうなんです! 今回山口さんにお会いしたいと思った理由は絶対そこなんですよ。僕がインターネットの会社を経営しているのに、アートのイベントをやるって言ったら、面白がって来てくれる人が割と3割、4割なんですよ。山口さんもそのお一人ですが、普段、全然仕事と関係ない人が来てくれると、やっぱうれしいですよね。そういう交流のためにやっているわけなんですけど、皆さん、聞かれることが同じ理由で、それは「なんであんたこんなリアルアートやってるの?」と。それはそうですよね。デジタルで発売すれば、パッと億になるのに、いろんな準備して、一生懸命3時間、「皆さん、どうぞ飲んでください、食べ物これですよ」とかイベントやったところで、売上はたった110万ですよ。もちろん、一晩で110万って十分大きいですよ。それは価値観の違いだけなんで、そういうなんか、山口さんが持っているマージナル(境界的)な感じに、今回一番僕、好奇心持ったのです。

山口:アナログにしか差別化の源泉はないですよね。

福田:あと業界人じゃないっていうふうに思ってらっしゃるっていうのは、きょう聞いてちょっとわかりましたよね。

山口:アートの業界人ではないですね。

福田:本当に失礼なんですけども、自分に近いものを感じますよ。例えば、僕が「いやいや、そんなにお金は要らない」なんて口にすると、「あんた、かっこいいこと言いながら、そんなおいしいもの食べて」って言い返されることがあるんですね。確かに、それはそうなんですよ。だけど、「すごくおいしいものばっかり食べたい」というところに価値観の基軸を置いてないっていうことをわかってほしいんですよね。もちろん、たまにはおいしいワインも飲むかもしれませんけども、別に500円のワインでもおいしいなと思うものもあるかもしれないし、やっぱり自分の持っている多様性みたいなことを自分が再発見するプロセスでしょ。それがないとやっぱり面白くないのに、「若くてかわいきゃいいや」とか、「金持ちでイケてればいいや」とかっていう価値観に二分化されていっちゃう。
例えば、恋愛だって、別に体とか若さとか美貌とか、権力とか経済力とかそういうところに魅かれたわけじゃないという愛が、存在することに気づくことが大事だと思う。そのためには、やはり、旅がキーワードになりますよね。 さっきのデート市場の話じゃないですけども、「どうやったらいろんな人と出会えますか?」とか「どうしたら、モテますか?」とか、いろんなそういう質問をされることもあるじゃないですか。やっぱり、町に出ることでしょうね。打率高めるって町に出ることですよね。

山口:最近、東浩紀さんっていう人が『弱いつながり』って本を出したのですが、一言でいうと、GoogleとFacebookからどうやって逃れるかっていうことだと・・。コンピュータが予測してこない世界に出るためには、どうするかっていうと、旅に出るしかないんですよ。だから、今年の夏は北海道行って、大分行って、実家帰って、7月から東京にいなかったです。その後、東ティモール行ってから、ヘルシンキ行ったのですけども、そのうちどんどん問題意識が出てくるのです。その問題意識の中で、Google先生が予測しないことを僕、検索せざるを得ないんですよ。東ティモールの歴史とかこの国のポテンシャルなんだろうとか、全然違うこと考えますよね。ヘルシンキはヘルシンキで、なんでこんなビビッドなカラーが基本基調になっているのだろうって検索しますし、会ったこともない人たちが何考えているのかとか、フィンランドのサウナは日本より全然いいんだけど、どう違うのかとか、つまりその、何ていうんですか、コンピュータから逃げるためには、自分の好奇心にもとづいて旅をしなければならない。

福田:考え方のフリーウエイト(マシンを使わず、ダンベルやバーベルで行う筋トレのこと)ですよね、だから。

山口:そうですね。それをやるためには、旅をせざるを得ないっていうふうに思いますよね。

福田:“検索にない人生”って言うんでしょうか。世界に70億人いて、その中に20億人くらいのネット人口があって、残りがみんなアフリカに住んでいるかっていったら、そんなことないわけで、特にネット環境いらない人もいます。でも一方でネットにしばられて生きている人たちもたくさんいます。予測変換の中でその行動を決められるってことはあるかもしれないですね。そうか、旅ってキーワードいいですね。そうかもしれない。

山口:旅とか越境はもう本当にサバイバル手段ですね、自分としては。