サイバーセキュリティという仕事
福田:ではここで改めて。二宮さんの現在のお仕事、サイバーセキュリティというのはどういうものか、教えてください。
二宮:はい。企業の外からハッキングされるような攻撃って、今とても問題になっていますよね。それも昔と違って自分の能力を誇示したい愉快犯がやっているのではなくて、プロのサイバーテロ集団が従来の犯罪より低リスク高リターンで儲かるからやるというか。個人情報が流出して、欧米だと被害額が何百億円というような大きな事態になったりしています。いわゆるITというものが、いつの間にやら経営の危機管理の1つになっちゃっているんですよ。ただ、日本では今だに「どこに穴が空いいてる」とか「ウイルスに効くツール」のように局所的な技術的なHow Toの話しかしていません。それだと経営者にとってもどこまで企業に守る力があるのか分かりにくい。だから僕は、世界のサイバー犯罪がどのような人が何の目的(Why)の為に行っているかのリアルをお伝えしながら、それに対峙する為に企業が持つべき姿勢や対応のあり方を可能な限りビジネス目線で伝える仕事をしています。その一つの手段として、誰でもわかる人間ドックのような方法で、組織のセキュリティ状況を分かりやすくお伝えするのが僕の仕事ですね。
福田:ということは、企業のオンライン化したシステムの守護神じゃないけれど、分かりやすく翻訳するようなお仕事をされているんですね。
二宮:翻訳、ですね。そういうことです。
福田:でも、考えてみるとHR(人事)の分野も経営に属すると思うようになったのって、この10年かそこらじゃないですかね。もっと前は、人事は人事部でしかなかったですから。いまも「ITはIT部のものである」って思っている経営者って多いと思います。でも明らかにITって社長に属する部門ですよね。
二宮:そうです。この2年、3年ぐらいで、ようやく日経新聞などのトップにセキュリティインシデントの記事や情報が取り上げられるようになりましたね。で、「なんとなく必要だと気付いてはいたけど、正直具体的にはどうしたらいいか分からない」という経営者がほとんど。そこで僕は、ITの人目線じゃないところで経営者に分かりやすく伝えることを一生懸命頑張ったというわけです。