オーナーシップメントをもつ経営者が必要
福田:今回はもう、クリエイティブ、とくに映像関係の人にはとっては必見の内容になりました。 北谷先生のようなグローバルな経験が豊富におありになって、日本のメディアでのキャリアもお持ちですと、橋渡し的な、伝道師のような存在として求められます。そういう方がテレビ局のエグゼクティブに会うとき、世界の今を知ってどういう反応を示されるのでしょうか。やっぱり、「それは面白いね!ぜひやってみよう」とはなかなかならないものですか。
北谷:「面白いね」は、みなさん言われますね。でも「やってみよう」とはならない。なぜかと言うと、やはりすでに日本のテレビは1話完結スタイルで、インフラも整っているから、わざわざサプライチェーンを改めて、自分が改革しよう!なんて、そんな勇気のある人はいないです。それはやはり、日本のテレビ局や映画会社がサラリーマンの集まりだからではないかと、私自身は思うんです。昔のように、それぞれのスタジオにオーナー然とした人がいて、自分がそうだと思ったらすぐに行動に移せる……という英断を下せるようには、今はなっていないですよね。
福田:やはり東映の岡田茂さんや徳間書店の徳間康快さんなどの時代を思い出すと。迫力がありましたね。
北谷:ええ。徳間さんは自分にはお金がなくても、いろんな商社に声をかけて、「そんなこと言うんだったら、東京タイムスかアサヒ芸能でこのネタ書くよ」って言うかもしれないけど(笑) そういうことをしてでもお金を集めてきて、あの時代に『敦煌』(1988年の日本・中国合作映画)なんていう、日本の常識的な製作費で作れるはずもなかった映画を作ったわけですよね。人民解放軍に自分で交渉に行って、協力も取り付けてきて。
福田:すごい話ですよね。
北谷:砂漠で映画を作る。そんなキャラクターの経営者は今、日本にはいないです。アメリカやヨーロッパのスタジオヘッドや放送局の会長は、ビジネスマンではありながらも、やはりクリエイティブのセンスも持っているし、技術のことがちゃんと分かっています。技術のことが分からない人がエンターテインメント産業のトップに君臨している、なんてことは、株主も許さないですから。
福田:やはりオーナーシップメントを持った経営者、もしくはものすごいプロが経営をやらないと。新入社員からずっと同じ会社にいて、出世して社長になるというスタイルを根本的に見直さないと、エンタメ産業の場合はとくにダメですね。
北谷:失敗することもあるけれど、明らかに高い評価を得ている海外の人材を躊躇なく連れてきて、やらせてみる。そういうダイナミックさが求められていると思います。