データ送信で新しい流通環境をつくる
福田:ShopBotというのは、製材の機械ですよね。
秋吉:世界で初めて低価格で販売された、木材加工専用のCNC(コンピュータ数値制御)ルーターです。指定された数値の座標に、XYZそれぞれの軸に搭載されたモーターが連動することで移動し、先端のドリルが高速回転することで切削します。大学院在学中に出会い、のめり込みました。 厳密にいうと、製材というのは木を板にする工程です。そこから加工してどうやって木を組むか、その形状を作っていくのか。結局、材料をどう加工するのかというところに真髄があるわけですが、その技術が本当に安く、使いやすくなってきたというところを、もっと促進させていこう、設計者を増やそうという取り組みですね。そういったことを基盤に、建築業界の変革を目指しています。
福田:建築データを3D化させてプリンターで加工して、組み立てる。で、それを家として作るということですね。どちらかというと僕は、「IT技術によって木の加工方法や使い方のアプリケーションが増えて、高価だった建築の民主化が行われた」という印象があるのですが、木材の使い方のアプリケーションとして考えられてきた側面もあるんですね?
秋吉:そうですね。機械はあっても、それがネットにつながるというのはまた別の次元の話で。要はこれまでは、各機械、あるいは各事業者が自社だけで知財やデータを囲い込んで製造していたところを、みんなが同じ機械を持っていれば、移動や流通なしに、ここにいながらにして海外にもデータ送信すれば、遠隔で同じ形状のものを作れるんじゃないか、ということです。僕らは先程の小型の機械ShopBotに関して、今まで日本全国に120台を販売してきました。言い換えれば、僕らがここで削っているものを120カ所にシェアできるということですね。例えば、もし一棟につき120日加工に時間かかる家を作っていたとしたら、120カ所にデータを送って、1日で加工してパーツだけ届けてもらう、ということも理論上可能になります。そういうプラットフォームと、実際にそのプラットフォームを使った住宅事業、流通環境自体を作ることもビジネスにしています。