大規模建設も、自律分散化へ
福田:話の方向性が少し変わりますが、2月にロシアがウクライナに侵攻しました。2022年3月1日の段階でAppleもNIKEも真っ先に「ロシアへの製品販売はやめます」と宣言しました。単なるポーズだけでなく、やはり自社の長期的な利益も考えて、そう判断したと思います。でも日本を代表するトヨタでもソニーでも、そういうソーシャルグッドを表現するアクションが全然できないというのは、世界を俯瞰して見る視野がないのではないと思います。グローバル感覚がまだまだ薄い。だから秋吉さんのお話を聞くと、その視座が驚異的にグローバルだなと思いますね。直近のお話は伺いましたが、もうちょっと長期視点でいうと、どういったことを考えておられますか。
秋吉:2軸あります。ひとつは水平自律分散型で、建築を民主化するという流通の部分。届きやすくするのが分かりやすくもあるし、今既にある住宅産業の中に入れていくこともそうです。一方で、そのプラットフォームの中でどこまでやれるのかという、今度は垂直展開の話があります。とくに今日、この工場で作っているのは、もはや住宅ではない、300平米規模の建築物です。そういう規模の物まで同じ仕組みの中で出来ますとなると、解放していく規模感も増えていくと思うので、それがこの先10年、どこまで行くのか。例えばドローンで建設するとか、ロボットアームで建設するなどは中国アメリカではもう普通に産業規模でやり始めているんですよね。それが、部品を作るところの延長として、大規模な建築まで出来ますという事例を作っていけば、それがどこかで合流して、自治体や行政、企業の力借りずとも、みんなが最低限必要な、みんなで集まれる共有部を、「自分たちでもやってみようよ」みたいなところがまた増えていくと思うので。建築家としては、そういう大規模なものと、それこそ街づくり的な、都市規模のものに対して、どれだけ踏み込んでいけるのかというところですね。
福田:家具を作るように、建築物や家を作ることができる時代が来ると。一方で、タワマンブームがあるじゃないですか。今、タワマンの功罪もいろいろ言われてきているのですが、タワマンのようなコミュニティ、街を破壊するような存在…。そういったトレンドに対しては、どう思われますか?
秋吉:そうですね。でも、コンパクト化していく部分は、地方の人たちには結構、効いていくのではないでしょうか。むしろ高齢者の方は、タワマンのようにある程度、ウェルネス、ヘルスケア的なところがしっかり集約された場所のほうが、自分で運転も難しくなるといいのかなという部分はありますね。自動運転で来てもらう、とかもありますけど。そういう「小さなコミュニティを作っていく」という意味で言うと、「垂直化してコンパクトに集める」という集約化は、適材適所で効くように思います。
別にタワマン否定はしないのですが、「タワマンもいいんだけど、週2~3回、1.5拠点のセカンドハウスでもう少し、自然とのつながりを作っていくような2コースがあるといい」というところに、少しずつシフトしている感じはありますね。僕もそんなに田舎暮らしが得意なわけでもないし、したいともそんなに思わないですけども、ライフスタイルのバランスをちゃんとチューニングできるほうがリベラルなので。それこそ僕はマンション好きなので、「マンションに住んでもう1カ所、平屋で田舎に1軒」という暮らし方は、今すぐにでもやりたいなと思いますね。