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髙田明の「売る技術」はどこで培われたのか

元ジャパネットたかた人気MCが語る 配信時代に問われる「伝えて、売る」技術(前編)   Talked.jp

福田:それは、カメラに向かって指示していらっしゃった?

馬場:指示といいますか、生放送中にいきなり、自分から3カメのほうを向いてワンショットで。 だからもう、サブにいるスタッフはスイッチングも大変だと思うんですよ。商品を撮っていたのに、いきなり高田明の顔を撮らないといけないわけですから。でも高田明はそんなことなりふりかまわず、お茶の間のお客さんに向かって語り続けるんです。「皆さん、これいいでしょう? お父さんのお肌が毎日つるつるできれいだったらどうです? 職場でお父さんの株も上がりますよね」……さらにそれを誰に向かってしゃべっているかというと、奥さんなんです。シェーバーだから、普通は男性に売ると思うじゃないですか。でも高田明は、奥さんに向かって売っていたんです。

福田:はあ~! 面白い! 大変なノウハウですね。

馬場:世の中のお父さん方は、1万円のシェーバーを買える決済権を持っていない人が大多数なわけですよ。

福田:そりゃそうだ……。まずは大蔵大臣である奥さんにお伺いを立てる、と。

馬場:「これ買っていい?」と。だからその大蔵大臣である奥さんをまず説得するのが高田明流です。「シェーバーって、女性に売るものなんだな」と。完コピによって、目からうろこのポイントがいっぱい見つかりました。

福田:素晴らしい! 本当ですね。

馬場:髙田明は、お客さんと会話もしているんですよ。MCの途中で、「はい、ここまでいいですか?」と、途中途中でお客さんが考える間を与えるんです。私はというと、一方的にどんどんしゃべり続けていただけ。言葉はスムースに出てきているように聞こえますけど、お客さんはというと、右の耳から入って左の耳から抜けていたんです。ここが一番、大きな違いでした。髙田明は一個一個の訴求ポイントを、「ここまでいいですか? じゃあ次いきますよ」「ここまでいいですか? 分かりました? すごいでしょう?」……そして次に行く。この“間”が、全然違ったんです。

福田:完コピというよりも、写経じゃないですけど、そこにあるエッセンスを真似たわけですね。

馬場:そうなんです。そこから私もようやく「20本売れる」世界になっていきました。得意な商品、不得意な商品ありましたけれども、腕時計に関してはどのMCよりも一番売りましたね。そういう「この分野だったら誰にも負けないぞ」っていう商品を見つけて、作り出して、ジャパネットの中で存在価値を少しでも作っていこうと頑張りました。

福田:今のお話を聞いて、思い出しました。僕の娘が広告代理店に就職した時に、選べるわけではないけども、一応希望部署を出せと言われたそうなんですね。「クリエイティブな業務推進と営業と、どっちがいい?」という選択肢があって、私は「間違いなく営業」とアドバイスしましたね。広告代理店に入ったら、クリエイティブでちょっとカッコいいほうに行きたいとは思うじゃないですか。でも営業職というのは、その知識さえ掴めば、どの会社にいようが生きていける。だからそういう意味では、テレビ局でしゃべりのプロでいらっしゃったけれども、おそらく高田さんがやっておられた、しゃべるだけではなくて、「伝えて売る」という新しいコミュニケーションに対して、馬場さんはスイッチが入ったのでしょうね。

馬場:おっしゃるとおりです。高田明のしゃべりの基礎は、もともと経営していた佐世保の小さなカメラ店だったんです。夜の宴会場に行って、お客さんの写真をたくさん撮って、それを翌朝の朝食会場で売る。そういう商売をずっとやってこられたんですね。だから、写真を撮る時もお客さんの笑顔を撮らないと買っていただけないので、会話をして笑顔を作って、撮るときも笑顔で会話をして、という。

福田:そのビジネスモデル、その魂を、高田社長はその後のマスメディアにそのまま使っていかれたわけですね。

馬場:そうなんです。だから、お客さんと対話する技術は本当にピカ一なんですよね。それをテレビショッピングに持ってきたというところが、カリスマと言われる由縁です。

福田:そんなカリスマ創業社長が突如として65歳で引退されたわけですよね。世間も「髙田明がいないなんて、もうだめだ」とか「大丈夫なのか?」となったでしょうけども、実際、何ともないどころかさらに規模を拡大していますよね。

馬場:ジャパネットたかたはお陰さまで、その後も業績を落とすことなく、右肩上がりです。商品のレパートリーも増えて、今では家電製品だけではなく、クルージングとか、旅行も売っています。あと、富士山の天然水も売っていますし、グルメ定期便として、「毎月、おいしいものを皆さんの食卓にお届けします」という新たな分野までどんどん開発していますね。

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