5.関わった仕事が世界的に広がっていくのが、メディア事業の醍醐味
33になったときに、ハリウッドのメジャースタジオであるソニー・ピクチャーズエンタテインメントが、私を必要といって拾ってくれたんですね。ソフトバンクの孫正義さんとNEWSコーポレーションのルパード・マードックが「JスカイB」と企画会社を立ち上げ、「多チャンネル衛星放送を始めるぞ」と宣言したり、何かと騒がしかったんです。ソニー・ピクチャーズも7チャンネル衛星放送を始めようとしていました。で、東北新社でいろんな衛星放送の立ち上げに関わった僕の経歴を買ってくれたわけです。ホッとしました。何せ給料振り込まれますからね(笑)。
このときに関わったのが、「アニマックス」とか「AXN」(海外ドラマチャンネル)。1998年には「スカイムービーズ」(のちに「スターチャンネルと合併」)もやらせていただきました。皆さんの中で、「アニマックス」ご覧になってる方いますか? けっこう人気あるんですよ。世界60カ国で見ることができて、アフリカでも1日3時間ぐらい放送してますから。自分が関わった仕事が世界的に広がっていくのはやっぱり嬉しいことですよね。メディア事業の醍醐味です。
6.ネット部門を任されるようになり、新会社設立に繋がっていく
ここから先はちょっとはしょりますが、衛星放送の仕事は順調に進み、3年ぐらいで軌道にのるんです。僕は新規事業の担当役員だったので、「次何やろう」と考えました。で、「ネットだろう」と思いつくわけです。2002年頃ですね。当時のネット状況ってADSLが中心で、回線がすごく弱かった。だから、映画を丸々ネットで配信するって、そんな簡単じゃなかったんですよ。今だったら、HuluとかNetflixとかいろいろありますけれど。
そこで、NTT DoCoMoがやってたモバイルインターネットの「iモード」に目をつけました。まずは、「iモード」で日本のアニメとかキャラクターを前面に出していこうと、明治製菓の有名なお菓子「きのこの山」とタイアップする形で「きの山さん」というキャラクターを作ったんですよ。これが当たりました。いまだに「たけのこブラザーズ」と一緒に活躍してくれています。これがきっかけでネット部門を任されるようになり、それが今のソニー・デジタルエンタテインメントという会社に繋がっていくわけです。
7.逆転の発想で、デジタル発の作品を全部で14冊も書籍化した
iモードでは、待ち受けや着メロなど126サイト手がけました。また、『ゲゲゲの鬼太郎』や『銀河鉄道999』『天才バカボン』など、いろんな巨匠のデジタルコミックを109万ページ分保有していたので、2004年12月には電子書籍の提供も開始。今も新作のマンガを月産5000ページぐらい作って、デジタルコミックの業界でも当社はナンバーワンのプロダクションとしてやっています。
2006年からは「魔法のiらんど」というティーン向けのポータルサイトが『Deep Love』という ケータイ小説を大ヒットさせました。高校生がガラケーで作品を発表するんですよ。ラストは交通事故か癌で死んじゃうお話ばかりなんですけど。人気あるものは、配信後に書籍化して、コンビニでも売られていました。高校生が印税1000万円とかもらえ、かなり話題になったんです。そこで、ケータイ小説から本格的な作家が出ることを期待して、「ケータイ文学賞」を始めました。何本か映画化された作品もありましたね。それまではデジタルってヒットしたテレビドラマや映画の再利用や、昔からある小説の電子書籍化など、二次利用のメディアにすぎなかったんです。それを逆転の発想で、デジタル発の作品を全部で14冊、書籍化したんです。そのうちの一つは写真集「浅田家」(著者:浅田政志)で、木村伊兵衛賞という、写真業界の芥川賞を受賞しました。ニューメディアって常に地位が低いので、それを覆すような成果が得られるよう頑張ってきたんです。そけだけに嬉しかったですねぇ。