今はメディアの過渡期なので、どうしてもゴシップ記事に引きずられてしまいますが、これだけニュースがたくさん出てくると、いくら検索しても出所がわからないものが混じってきたり、いろんな友達が一斉に同じものをシェアするのに食傷したりして、今後は自分の見解を持たざるを得なくなってくるのではないでしょうか。今はまだ進化の途中なんですね。従軍慰安婦の問題も「朝日新聞がそんなに長い間、嘘ついていたのか、ひどいな」と腹立たしいですが、ソーシャルメディアが全くなくて、大手新聞社の発信だけを信じている時代だったら、その報道が本当か嘘か疑う人すらいなかったとも思うんですね。今は、どんなニュースも疑えるようになった。ただいろんな人があらゆる方向から疑い、Twitterなどで発信するので、自分の元に届く頃にはもう手垢がついて鮮度がなくなっていることも多い。テレビ離れの次は、必ずTwiiter離れが起きます。
そもそもニューメディアの歴史の中で、長年定着しているプラットフォームって実はないんですよね。例えば、mixi。10年ぐらい前には「経営者だったらmixiくらいやっておかないと、会社としてイケてないよ」なんてよく言われていたのですが、今、コミュニティとしてのmixiって成り立っていないですよね。ゲーム会社としては生き残っていますが。6、7年前はGREEなどモバゲーのソーシャルゲームが全盛期だったのに、GREEなんかは、最近はずっと低調です。だから、TwitterもFacebookもLINEもいつかは廃れる。メディアの仕事するなら、プラットフォームかコンテンツ、どちらかに関わるしかないのですが、コンテンツの方は実は普遍なんですよ。人は、プラットフォームを通じてコンテンツに行き着く。もしメディア(プラットフォーム)を使って何かをデリバリーさせたいと思うのなら、人類の役に立つようなストーリーテリング(コンテンツ)をしていくことが大事なんです。そのためには他人の脳みそを経由したようなゴシップ情報に時間を費やすより、自分の見解を深めることに注力した方がいい。それがメディアリテラシーを高めることにもつながると思います。確かにニュースの価値は一旦は下がるかもしれませんが、受け取るわれわれのCPUが上がれば、今後、価値のあるニュースしか残らなくなる。実際、『週刊文春』がスクープを連発し過ぎた逆転現象なのか、みんな少し冷静になって、Twitterの使い方とか考えるようになった面もあると思います。
男性3:日本のポップカルチャーに興味があるので、「アニマックス」の立ち上げに関われたという話の詳細について知りたいです。
福田:1997年末にソニー・ピクチャーズに拾われて、「テレビ局、任せたぞ」と言われた時に、僕は視聴者が見たいチャンネルという視点で探しました。その答えがアニメチャンネルだったんです。早速調べてみたら、『トムジェリ』や『パワーパフガールズ』などで有名な「カートゥーンネットワーク」と、『テレタビーズ』などを放送した「キッズステーション」の2大巨頭がありました。ただ、「カートゥーン」は7−11歳が対象で、「キッズ」に至ってはもっと小さな子ども向け知育チャンネルだった。一方、当時は「クールジャパン」という表現こそありませんでしたが、大人が『ガンダム』とか『ドラゴンボール』などのアニメに夢中になる現象は始まっていて、僕も大人が見られるアニメチャンネルを作りたいと思っていたんです。なので、大人に人気の作品を持っていた東映アニメやサンライズを巻き込んで作ったのが「アニマックス」というわけです。
『ガンダム』ってヨーロッパの若者にも人気なんですよ。一方、アメリカは『ポケモン』なんです。ポップカルチャーがヨーロッパで発達し、アメリカでは遅れているのは、その辺りも関係ありそうですよね。もちろん、最初にエスタブリッシュメントされたのは日本です。大人が当たり前にアニメを見ていたので、これはビジネスになるんじゃないかと思って「アニマックス」を作ったところ、見事その狙いが成功したわけです。しかも、アニメなら子どもも楽しめる。幅広い年齢層に受けるものを見つけ出すのも大事なポイントだと思います。「アソビシステム」の“きゃりーぱみゅぱみゅ”なんかも、子どもにも大人にも人気ですよね。この辺りにも、今後を占うヒントがあるのではないでしょうか。