近藤健祐 × 福田淳 対談 意外と知らないキャラビジネス考【後編】

23.Instagramは単なるアルバムでしょ。スナップチャットはライブだから

福田:来年の今頃、代々木公園で『ポケモンGO』に熱中してる人は、多分10分の1になっていますよ。セルフィーについては自撮り自体はなくならず、進化系がいっぱい出るだろう。例えば、「Prisma」っていうアプリが徐々にきています。撮ったら自分がなんかロボットみたいになるんですけど、海外でこれやってる人が結構多いんで、やがて日本にも来るかなと。

近藤:Prisma?

福田:しばらくは写真加工アプリで、変身度合いのバリエーションがしばらく出てくると思うんですね。キーワードはライブラリじゃなくてライブ。

近藤:ライブ。

福田:アメリカのティーンに、「SNSは何を使ってますか」って調査したインタビューを読んだら、「Instagram? え、日本で流行ってるの? こっちでは、もうあまり使ってないよ」みたいなことを、ニューヨークの高校生が答えていたんです。「だってあれ、きれいに加工できるだけで、単なるライブラリーでしょ。その点、スナップチャットはライブだから」って。うん、なるほどねと。ニコ動がこんなに人気なのに、テレビ局のオンデマンドサービスが流行らない理由ってそこだと思うんですよ。今やテレビは全然すごくない。作りが雑でも、録画固定できないニコ生のほうをみんな見るんですよね。スナップチャットも同じですよね。

近藤:なるほど。すごい分かりやすい。

福田:さらに、アメリカの若い女の子はスナップチャットを変顔のほうじゃなくて、チャットでも使ってるんです。マスカレードやエッグは返信機能だけなんですよ。だから、待ち合わせも、何もかもスナップチャットなんですよ。1回読んで記憶しなきゃ消えるんで、年寄りは使えないですよね。恐らく、彼女たちは、分かんなくなったらもう1回聞くんでしょうけど。アメリカでLINEがはやらないのは、スナップチャットがコミュニケーションツールになったせいもあると思います。でも、LINEは分かってなくて、コミュニティじゃなくて、加工アプリを作っちゃったんですね。そうじゃないんです。スナップチャットが一人勝ちなのは、ライブのエンターテインメントのプラットフォームを作ったからなんですよね。

近藤:アメリカでは、スナップチャットなんですね。

福田:アジアであまり「スナップチャット」がヒットしていないのは、「SNOW」のせいかもしれない。実際、今のところ「SNOW」のほうが日本でのダウンロード、多いんですよね。

近藤:すごい「SNOW」きそうですよね。

福田:きます。というのも、「SNOW」はLINEで認証してサービス登録できるんです。親会社のネイバーが開発しているから。これで自然と友達増えちゃうんです。スナップチャットだといちいちそのURL聞かないと、IDに入れないんですよね。ただスナップチャットは有名人がやってるところが強みで、フォロワーはそれなりにいます。TwitterとLINEの間を狙ってるところが面白いんですが、やっぱり日本はLINEが強いから、LINEのアプリケーションである「SNOW」が勝つと思います。

24.成長というものを戦略に入れてなきゃダメ

福田:ただ「SNOW」の問題点は、クリエーションがちょっと中高生っぽいこと。2Dが多いんですよ。あれをもっと大人化したら長生きすると思う。実は、「MixChannel」が一時期より流行らなくなったのも同じような理由なんですよね。

近藤:もう駄目なんですか、ミクチャ。

福田:責任者の方に「ミクチャというサービスは『巨人の星』なのか『サザエさん』なのかどっち?」って聞いたんですよ。「それどういう意味ですか」って言うから、「『巨人の星』は成長して巨人軍入るまでやるけど、『サザエさん』はずっと歳とらない。あなたは中高生を待ち構えるのか、中高生とともにOLになるのかどっちなんだ」って言ったら、「僕は『サザエさん』です」って。「じゃあ今後の成長は難しいかも」って言ったんですよ。「なんでですか」って、「いずれ分かるよ」って言ったら、本当にそれ、当たったんですよ。
同じような兆候って、昔からあるんですよね。多分ご承知だと思うんですけど、「漫画カメラ」というアプリ。800万人もダウンロードしたのに、マネタイズ出来ないで終わりましたよね。

近藤:ありましたね。

福田:・・・あれもユーザーの成長というものを戦略に入れてなかったんで、そこで止まってるわけですね。だから絶対伸びない。学校の卒業とアプリの卒業のタイミングつておんなじなんです。

近藤:Amebaがそうですもんね、もはや。

福田:Amebaもそうですね。スマホ化自体にかなり失敗してるっていうことありますけど。

25.1曲に対する思いが希薄化して、みんなフェスに行くようになった

福田:でも、サイバーエージェントは今、Abemaが好調ですよね。動画テレビのほうが。

近藤:昨日、都知事選挙の候補者の討論会をやってましたね。多分ニコ生からの配信をAbemaで受けてたと思うんですけど、すごく面白かったです。なんかメディアの誘導だと、候補者が小池さん、鳥越さんの3人しかいないような感じになってるんですけど、それもおかしな話ですもんね。上杉さんとか、あと中川さんとか。鳥越さんだけ出てなかったんですけど。たまたまAmebaでブログ書いてたらピュッと番組の案内が出てきたんで見てたんですよ、ずっと。やっぱり見せ方は、先ほどおっしゃってた、地上波では絶対できないことだし・・・。

福田:ライブ感。

近藤:もうまさしくライブでしたよ。

福田:なんかAbemaのことを、僕ぐらいたちの年代の、メディアかじってる人に聞いたら、「あれ、流行らないよ」と。「だって録画できないし、見れないじゃん」、いや、そんな生き方してないんで、若者は。

近藤:そうですね。だってブログの更新中に同じページにパッと案内出ただけで見れちゃうわけですよね。このすごさ。

福田:「見逃し防止がさ」って、見逃し防止ってむちゃくちゃ年寄りの発想ですよね。全部見逃しても平気だし、若者がなんか、「紅白の絶対あれ見たい」って言ってた人が、それを見逃すんだけど、別に平気なんですよ。これ、僕、どういうことなのか、すごくよく考えたんですけど、コンテンツの希薄化が起きてると。それは音楽だと説明しやすいんです。僕が中学生のときに、「レッドツェッペリンのLP買いたい」って言ったら、輸入盤でも1800円ぐらいしたんですね。正規だと2500円ぐらいして、3カ月ぐらいお小遣い貯めたりしないと買えないんですよ。でもいざ手に入れたら17曲ぐらい入ってて、裏表(AB面)完璧に聞くので捨て曲なしですよ。でも、それから進化して、MDが出たときに初めてランダム再生ができるようになり、好きなやつをライブラリで楽しめるんだって驚いたんですね。メーカーもそこに価値があると思ったんですよ。ところがネット時代になってケータイ「着うた」が出た。そうなると、流行曲を15秒ぐらい聞かせりゃいいや、ってなったんですよ。今定額制で、何にもしなくても定額制だから、新しいもの消えちゃうんで、よっぽどテイラー・スウィフトの新曲じゃない限り、個別課金ないじゃないですか。だから1曲、1曲に対する思いが希薄化して、みんなフェスに行くようになったんですよ、ULTRAfesとか。

近藤:確かに。

福田:つまり体験重視になったんですね。ライブラリじゃなくてライブになったんですよ。全部がつながってるんですよ。スナップチャットっていうのはライブ体験なんです。

近藤:それ、キャラクターも全く同じで、みんな、キャラクターショップとかでキャラクターグッズ買わなくなってるんですよ。それもライブが影響しているんですよね。

福田:かもしれませんね。

近藤:フェスに行くような感じで、展示イベントや物販催事に行くみたいな。男性はライブに参加するというより、限定商品を手に入れるのが目的なのですが、女性は、ああいう所で交換をしたりとか、コミュニケーション取るのが楽しいみたいです。

福田:もしかしたら『ポケモンGO』もフェスなのかもしれませんね。みんなで町に参加して、そこにコミュニティができて、っていうね。

近藤:確かに。