トヨタに入って出世するよりも、トヨタ規模の起業でトップになろう
福田:「売上だけじゃないんだ! そのプロセスが大事なんだ!」とかいう精神論を言ってくる上司って、たまにいますよね(笑)。
小嶌:そうなんですよ。
福田:だって、これ営業法人だよね、野球じゃないですよねって言いたいですね。法人格って、利益追求が目的なのに、他に何の目的があるのかっていう。そんなこと言う上司なら、「では福利厚生はどうなっているんですか」とか、今だったら100くらいツッコめますね。
小嶌:(笑)。大学の研究室でも教授に叱られたし、会社でも上司に怒られっぱなしだったので、企業に就職する道は自分には難しいかもしれないと思いましたね。大学の教授、大学院の教授、会社の上司と全部叱られているので、それはもう僕側に理由がありますよね、絶対に(笑)。
福田:まぁ、ですねぇ(笑)。
小嶌:なので、これは自分側を変えるか、入る組織を変えるかしかないなと思いました。
福田:そこで、自分自身でいくか、ボスのいる自分でいくのか。その二つのオルタナティブがあったのが、小嶌さんの天才たる所以だと思いますね。普通だったら、「オレ、社会不適合かも」「もうちょっと素直に人の言うことを聞こう」って、小さい方とか無難な方を選ぶと思うんですよ。そこでもやっぱり、小嶌さんには大きい方の「プランB」があったことがすごいと思います。
小嶌:1番になることへの憧れが強かったから、普通に出世レースって面白そうだなとは思っていました。それである時、ノートに二つ、三角形を書いたんですよ。日本一の企業がトヨタだとすると、トヨタという企業で下から上がっていって、トップに行くのも楽しそうだと。ただ、それはそう簡単なことではない。でも、もしかして自分で会社をつくって、トヨタ規模の企業をつくることができたら、社会的にはその大きな三角が二つになるじゃないですか。自分がトップになっても、誰か他の人がトップになっても、三角の大きさは変わらないけども、もう一個、三角をつくることは、社会にとって大きな価値になりえるんじゃないかと思って。
福田:僕がそういうことに気が付いたのは、前社から独立した去年の12月ですよ(笑)。52歳で独立して起業して、トヨタのような企業をつくるって、それ今、思っているんです。先日、野中広務さんという自民党の元衆議院議員の方が92歳で亡くなったんですが、あの方が国会議員になられたのが52歳ですからね。瀬戸内寂聴さんが出家したのは51歳で、池上彰さんが独立したのは55歳だから、「50歳のポテンシャルってどんだけ高いんだ」って考え直した時に、「もうセミリタイアだから」なんて言っている場合じゃないなと思いまして。でも、若い小嶌さんは、社会に出る前に三角形を2つ書いて、トヨタでトップになるのではなく、自分がトヨタ規模の企業を作ることに価値を見出して、ピリカが誕生したんですね。
(後篇へ続く)