「幼年童話」はブルーオーシャン?
幅:3割減です。でも一方で、絵本だけはなぜか104%くらいになっているんですよ。
福田:そうなんですか!
幅:絵本業界全体もすごく活性化していますね。絵本っていうのは基本、親が読んだものを子どもに読ませたいので、ずっと『ぐりとぐら』がロングセラー、みたいなことになるんですよね。ただ、これまでは新規参入がしづらい、若い作家が出て来づらいと言われていた絵本業界ですが、最近はヨシタケシンスケさんやミロコマチコさんなど、若い書き手の中にも力があって面白いものを作る人が出てきて。さらに大ベテランの『魔女の宅急便』『小さなおばけ』シリーズの角野栄子さん。彼女は去年、国際アンデルセン賞といって、児童文学における「小さなノーベル文学賞」と言われる賞を受賞されました。ベテランも元気だし若い方も元気で、絵本業界は本当に、書き手のマーケットがコンテンツとしては豊富ですね。子どもの本でいうと、実は絵本までは読むんですよ。絵本までは読むのに、児童文学に全然行かないので、小学校図書館の司書の方も悩んでいます。
福田:児童文学ですか。
幅:さらにいうと、絵本と児童文学の間に、「幼年童話」というジャンルがあります。松谷みよ子さんの『モモちゃんシリーズ』とか、『いやいやえん』とか『くまの子ウーフ』とか。挿絵はあるけれど、読むのが中心ですね。でもちゃんとルビが振ってある。要は子どもが自分で初めて読む本ですね。
福田:読んで想像できる部分がまだあるっていうことですね、言葉を使って。
幅:そうですね。読むと、頭の中で何かが動き始めるみたいな「幼年童話」こそ、実は児童文学と絵本の間の橋をかけるものだと僕は思っているんですけど。意外に幼年童話ジャンルで新しい書き手が、今はそんなに生まれていなくて。逆に、誰かが書くとしたら今はチャンスかなと。
福田:チャンス。ブルーオーシャンですね。僕の時代は、幼年童話なのかわからないですが、星新一にいく前の江戸川乱歩シリーズがありましたね。『怪人二十面相』とか、ポプラ社から出ている表紙だけ怖いやつ。
幅:そうそう、表紙がおどろおどろしい(笑)。今でもありますね、最高ですよね。