logo

日本はまやかしの豊かさで生きている

この10年が面白い! Z世代が日本を変える日  Talked.jp

福田:僕はいくつかのNPOの立ち上げにも関わっているんですけれど、年に一度の理事会などでファイナンス状況を見て、「理事長は年収2000万円くらいは受け取って、もっといい暮らしをして、それで人助けをしてほしいです」って言うと、ほとんどの人がポッカーンとするんです。で、「はい、貴重な意見ありがとうございます」って流されるという……。真面目なディスカッションとして、いつも言っているんですけどね。これは日本の「貧を良しとする」という我慢文化……というのかな。そういう価値観が根強くて、そうなっていると思うんです。だからお金を儲けてお金持ちになることも、なんだか悪いことのように言われますよね。コロナの政府の対応も、福島の汚染水の問題も、日本で、ミャンマーのような一揆が起きないのが不思議でしょうがない。

コミンズ:そうですよね。前回お話したことの中に、アニメの『進撃の巨人』を例に出しましたけど、あれが近いなと思いますよね。

福田:あぁ、『進撃の巨人』の話。面白かった! 読者のために、ぜひもう一度お願いします。

コミンズ:これは本で読んだ受け売りなので、あんまり格好つけて話すことでもないのですが(笑)。『進撃の巨人』の大ヒットの背景にあるのは、若者の心の描写をすべて表現していたから、ということ。現代日本人の感覚は、最初の1話で見る、あの街の中なんですよ。周りにでかい壁があって、安全で、自分が何ひとつ動かなかったとしても、贅沢はできなくても、飢えもしない。「ただ生きるためだけに生きる」みたいな状態。別にすごい不満があるわけじゃないけれど、じゃあ幸せかと言ったら、そういうわけでもないみたいな、宙ぶらりんの状態。この状態からいきなり、「絶対に越えられない」と言われていた壁を、その何倍もでかい巨人がいきなりぶっ壊してくるわけですよ。その頃日本ではちょうど3.11があって、メタファーになっているわけなんですよね。だから3.11が起きたあの時、若者が自発的に動いたじゃないですか。これまでは見たことないような数の若者がボランティアに行ったとか、寄付をしたとか。でも、それから10年経ち、世の中が変わったかと言うと、福田さんのおっしゃる通りです。過去の日本の高度経済成長で稼いだ貯金の残りと、未来からの借金だけで生きてきていて、まやかしの豊かさみたいなものが生まれている。

TOPへ